Q1. 2025年に挑戦したこと・変化があったことは何ですか?
私はメーカーで十数年エンジニアとして働き、今は経営企画に籍を置きながら、副業として企業向けのコンサルティングを行っています。「現場と経営をつないで、仕事に価値を」をモットーに中小企業様の支援にも関わっています。
その中で関心を持っているテーマが「プロダクトアウト(技術の事業化)」です。自ら大企業でプロジェクトマネージャーとして、巨額の開発投資の失敗や新規事業に取り組む中で幾度となく壁にぶつかり、挫折してきた経験がその原点にあります。
現在、複数の大学でスタートアップのインキュベーション活動を行っています。具体的には、大学の先生方の持つ「唯一無二の研究」をどう社会実装し事業化につなげるかについて、ビジネスモデルから事業構想づくりや知人友人を頼ったり、売り込んだり売り込まれたり、あの手この手で奔走しています。
また、先日「プロダクトアウトの実践知」と題した大型ウェビナーの講師の機会をいただきました。大手企業の研究開発者やマネージャーの数百名の方々に向けて、新規開発について「両利きの経営」という経営視点と現場研究者の開発手法の視点から事例も交えてお話をさせていただきました。
Q2. その経験を通じて得た学びや、印象に残った気づきはありますか?
ウェビナーはおおむね好評でした。一方で、質疑応答では「経営者から押し付けられている新規開発をどう回避するか」「あと腐れのない研究開発の辞め時はどこか」といったネガティブな質問が挙がりました。
新規事業の進め方ではなく「どう逃げるか」「どこでやめるか」に悩む声を聞き、そこには新規開発への期待ではなく疲労と諦めが滲んでいました。経営側は「両利きの経営」の名のもとに、企業存続の観点から「もっとイノベーションを」と現場に求め、一方、その「イノベーション」を押し付けられた研究者はしらけて、いかにうまいこと立ち回ろうか計算している…名だたる大企業の研究開発の実態の一部を垣間見た気がします。
とある経営勉強会でも「短期投資回収要求」「過剰な合意形成」「割に合わない人事評価」の中では、日本企業からのイノベーションは難しいという嘆きが語られていました。そんな中、私の支援する大学発スタートアップの先生方はそういった悩みとは無縁です。ただ、こだわりが強く、自分の信念と合わないとVCの出資を断る人や補助金の最終ピッチ中に「やっぱり、これはやりたいことじゃない」といって途中であきらめた先生もいました。
彼らには儲ける近道より大切な信念や意思があり、事業化とは社会に自分の生きざまや存在証明を示す手段に過ぎません。にも関わらず、私を含め協力者が途絶えることがないのです。彼らはイノベーションなどと言ったことは一度もないですが、その姿勢はイノベーションに最も近い人間なんだろうとまで思わせます。
これまでイノベーションを起こしてきた人は、当時イノベーションを起こそうと思って行動していなかったと言われています。イノベーションを追い続けることは、青い鳥を探して彷徨うようなもので、ただ、こだわりを貫き通せるかではないかと感じています。イノベーションに疲れてしまった方がいらっしゃれば、今回の私の気づきがお役に立てればと思います。
Q3. 2026年に向けて、どのような構想や挑戦を思い描いていますか?
2026年に向けては、大学発スタートアップの活動をさらに進め、特に新たなマーケティングの型をつくることに挑戦したいと考えています。現在関わっている案件はいずれもBtoB領域ですが、どのプロジェクトでも共通して見えてくるのが「営業力の不足」です。そもそも営業を経験したことのない研究者・技術者が多く、「良い技術はあるのに、誰にも届かない」状態が日本中で繰り返されているように感じています。
そこで来年はAIO/LLMOなど生成AIをフル活用した新しいモデルを確立することに本腰を入れたいと思っています。今や企業のBtoBユーザは検索エンジンより、生成AIに尋ねるのが当たり前になりつつあります。大学発の情報はもともと高い権威性があり、引用されやすいはずです。大学発スタートアップの情報がAIに発見・推薦されれば、営業リソース不足でも一気に勝負できる絵図が描けるのではないかと考えています。
これが実現できれば、私が関わっている案件にとどまらず、日本中のスタートアップが抱える「営業できない問題」を構造的に変えられるかもしれません。そんなことが実現可能で、ご興味を持ってくださる方がいらっしゃればと期待を込めながら、構想を温めているところです。



