Q. キャリアにおける最大の転機、最も悩んだことは?大きな転機は何度かありました。最初は、西友からファミリーマートに移ったとき。関連企業への異動でしたが、直営のスーパーとフランチャイズのコンビニでは、扱い商品の共通性は高くとも、商圏・買物動機・客層・運営システム等が大きく異なり、特にフランチャイズシステムではオーナーはお客様であって、社員のような指示命令の対象ではありません。一見似たようなビジネスでも、実は培った知識・経験・仲間の繋がり等の多くが活かせなくなり、新しく築かなくてはならない知見が大量にあって、西友から移ってきた社員には適応しきれない人も多く、私も適応するには一年くらい要しました(それでも私は適応力がとても高いと評価を受けたことがあり、最短で適応した一人だったと思います)。一方、日産自動車のヘッドハントに応じたときは、「100円200円の品を売っていた人に数百万の売り方がわかるはずがない」などと官僚的な大企業にありがちな陰口もありましたが、実は自動車ディーラーの商圏は西友などの大型スーパーの商圏とほぼ同じ広がり(コミュニティ商圏)で、容易に商圏分析することができましたし、店作りはスーパーやコンビニのほうが技術的に進んでいた分野が数多くあり、店作りの革新を行う際にかなり流用でき、新店の売上を引き上げるなど店作り成功の原動力になりました。昔、応用化学の技術者だった父に、「一つのことを10年やれば、狭い領域に絞れば世界のトップクラスになれる」と言われましたが、実際、商圏分析や立地判断や売上予測の領域では特許も持っていますし、日経に第一人者と書かれたこともあり、自分の専門性を確立できたのかなと思います。そうした専門性は、業種業態の垣根を越えて応用できる共通性がありますので、自分の知見に自信をもって転機に挑戦してみてください。Q. 転機を乗り越えるために取った行動は何か?西友からファミリーマートに移ったとき、会社は急成長を始めていて(だからこそ開発企画のスタッフが足りなくて業務が火を噴いていました)、出店数の急増に開発員は中途社員で埋めたものの、管理する開発企画のスタッフは足りずに事務の女性社員はしょっちゅうパニックを起こしていましたし、放置すれば大量の不振店を開けかねない状態でした。そこで、まずCRMを自力で開発し(私はセゾングループのPCクラブの会長をしていたのでソフトが扱えました)、3万件の商店訪問履歴を進捗度別に管理して、毎週訪問指示リストを打ち出し、その週に訪問しない場合は督促状を出して、訪問管理に抜け漏れの起きない仕組みを作り、また物件情報を週内に確認して不動産業者に必ず返事をする仕組みを徹底させ、十数名のアルバイトでシステムを回しました。それから、ベテランの開発員から開発手順とコツを聞き出し、訪問手順、提出書類管理、訪問マナー、話法技術の各編にまとめ、「100回通うための商談手順」としてフランチャイズ開発マニュアルにまとめ上げました。こうして、システムで訪問行動を確認し、マニュアルと研修で訪問時の商談手順を標準化し、寄せ集められた開発員の戦力アップと標準化を進めました。また、出店の実績分析で、狙うべきマーケットや立地をパターン化して、国道16号の中側に多くの開発員を集中させ、競合の3倍の頻度で訪問する体制を構築し、その成功しやすいパターンを織り込んだ立地採点表を作成して、成功しやすい立地のパターンに開発を誘導しました。こうして、火を噴いて混乱していた開発企画を、CRM開発によるシステム化とベテラン知見に基づく商談マニュアル化で乗り切り、それから数年間は首都圏では競合よりも数多くの出店をこなすようになり、500店から1000店へ達する時間が大手3社の中で一番短く、しかも不振店の山を築くことなく駆け抜けることができました。Q. 転機の決断をする際、何を考えたか?ファミリーマートで海外進出を任され、台湾を成功させ、タイの市場調査と初期のパートナー選定を終えたとき、急遽韓国の話が浮上し韓国に赴任することになりました。そして韓国の初期店舗を成功させ、国内に戻って営業現場の所長になり好業績を上げていましたが、タイの不振で海外部門に呼び戻され、再建を担当することになりました。そして再出発の出店をいずれも成功させ、脆弱だった物流やコンピューターシステムを整え、事業を軌道に乗せました。さて、ここから転機がやってきます。現地が出店したいと希望した出店を、海外部門を統括する常務が反対。私は個々の出店判断は土地勘のない日本側で判断するのではなく、現地側が行うべきと思い、現地には常務の反対の意は伝えましたが、自分たちで判断するようにと出店を黙認しました。そして、その出店は大成功します。ところが私がいると自分の思うようにならないと思った常務は私を外しにかかり、後任の外から来た常務にもそう申し送りをしたので、私はすっかり干されてしまいました。西友からファミリーマートに移ったとき、それまで蓄えた知見や人的つながりなど多くのものを捨てざるを得ない経験をしましたので、辞めて会社から外に出るときにどれだけのものを捨てざるを得ないかを考えると辞めることを躊躇しましたが、仕事で活躍の場を与えられないのであれば残る意味もありません。一年近くは踏みとどまっていましたが、結局ヘッドハントの誘いに乗って転職することにしました。新しい職場で自分の役割を得て、周囲の信頼を勝ち取り足場を固めるのは容易ではありませんが、仕事が存分にできる環境を得ることはより重要です。また、転職先に自分を理解してくれそうな上司やうまくやっていけそうな同僚がいることも、自分の居場所を作るためにはとても重要です。そうした職場環境にも目を向けて判断できるとよいですね。Q. 実際に決断してみて、キャリアや人生観にどんな変化があったか?転職するときには、今までの知見や人間関係など多くのものを捨てることになります。一方で、自分の役割が十分に与えられずに行き詰まるのでは、仕事へのモチベーションが失われてしまいます。従って、それらをはかりにかけて、新しい活躍の場が得られるのであればと転職を行いましたが、実は職種としては店舗の商圏や立地や店作りの企画の仕事は変わっていませんし、転職を重ねるごとに常に新しい知見を得てそれを刺激として仕事を楽しみ、そのエキスパートとしての知見の幅や深みが増していったように思います。そして、日産自動車在職中から会社公認のダブルジョブで、商圏分析アドバイザーとして地図情報システムの会社の顧問も務め、退職後も常に複数の会社の顧問を続けて、小売業やサービス業など様々な業種業態の延べ二十社ほどの会社の顧問をしてきました。幸いなことに社会人になって以来50年以上仕事は一日も途切れたことがありません。それだけエキスパートとしての自分の専門領域を固めることができ、それが認知されてきたものと思います。結局、行き詰まるたびに面白い仕事を求めてフィールドを移しながら知見を成長させてきたことになります。Q. 過去の自分や同じ悩みを持つ人にアドバイスを送るなら?会社を移らずに干されても我慢していたら上司も変わっていきますし、また好きな仕事をする機会がきたかもしれません。また収入面でも、ヘッドハントでの転職時に一時的に増えますが、ファミリーマートの給与水準や待遇も悪くはなかったので、長い目で見ると大きな差にはならなかったかもしれません。なにより、外に出れば積み上げた知見や信頼関係、人の繋がり等無形の資産の半分以上を捨てることになりますから、そのダメージも意外と大きいものです。一方で、新しい挑戦で得られる新しい知見で成長を実感できますし、新しい人の繋がりも生まれます。結局、私は常に面白い仕事ができることを求めて何回かフィールドを変えましたが、個人の価値観やマインドの持ち方でも結果は変わるものと思います。その転機での決断が、逃げの判断ではなく攻めの判断であることを祈ります。「キャリア」関連記事はこちら【 #副業で失敗しないために 】副業を始めた理由、選んだ理由、継続する理由 - 鈴木誠一郎https://newspicks.expert/media/post/career2503-1【 #キャリアの幅を広げるか専門性を極めるか 】未来を見据えたキャリア選択と逆算思考 - 長谷部寿大https://newspicks.expert/media/post/career2503-2「幅を広げつつニッチを極める」やりたいことの飽くなき探究 - 立花浩司https://newspicks.expert/media/post/career2503-31つの企業ではあなたの望んだ能力は手に入らない - 溝口洋輔https://newspicks.expert/media/post/career2503-4【 #キャリアの転機で迷ったら知ってほしいこと 】どこに行っても自分なりの何かの軸をもつこと - 山本圭介https://newspicks.expert/media/post/career2503-5価値感とパラダイムチェンジが重要と考える理由 - 田口恵一https://newspicks.expert/media/post/career2503-61年で転職は早すぎる?悩んだ私の決断の軸 - 太田勝久https://newspicks.expert/media/post/career2503-7ホンダからサムスンへの移籍 - 佐藤登https://newspicks.expert/media/post/career2503-8「転職」はキャリアの転機にはなるが「天職」になるとは限らない! - 池田浩孝https://newspicks.expert/media/post/career2503-9面白い仕事を求め、専門性を磨いてきたらエキスパートになりました - 藍野弘一https://newspicks.expert/media/post/career2503-10【 #AI時代に仕事を奪われないために私が実践する学び方 】AI時代のサバイバル:私が実践する学びの未来図 - 木村泰三 https://newspicks.expert/media/post/career2503-11相手の挙動への関心と引き出しの継続的な蓄積 - 権藤祐司https://newspicks.expert/media/post/career2503-12キャリアアップにつながる副業「NewsPicks Expert」とはNewsPicks Expertは、「個人の知見」を「企業の意思決定」につなぐエキスパートプラットフォームです。クライアント企業から様々な相談を受け、これまでの経験や知見を活かした見解やアドバイスを伝えることで報酬を得ることができます。現役会社員が登録者の7割以上を占めており、所属企業でのお仕事を続けながら、30分〜1時間程度のスキマ時間を有効的に活用して挑戦しています。仕事で培ってきたスキル・経験・知見が、所属企業以外で活きるかを確かめてみることから始めませんか?