食品業界で、独自の強みを持った経営コンサルタントになるー現在会社を立ち上げ、食品分野の経営コンサルタントとしてご活動されています。そのようなキャリアに至った背景を教えてください。経営コンサルタントを志すようになったのは、新卒2年目の頃に読んだ大前研一氏の書籍がきっかけでした。もともと尊敬をしていた方で、当時は国内版のみならず、海外で刊行された英語版のものも含め、ほぼ全ての著作を読み込みました。その中で、経営コンサルタントとしての物事の捉え方や分析の仕方、課題解決の方法等に関心を持ち、「経営コンサルタントになるためにはどうすれば良いのだろう?」と、漠然と考えるようになりました。そうは言っても、新卒で入った会社では人事・労務部門に配属になったこともあり、書籍で学んだ内容を実務で活かすような場面はありませんでした。しかし、後に事業部門に異動し、立上げ後間もない新規事業に関わることとなりました。そこで、事業を成長させ軌道に乗せていく中で、実践経験を得ることができました。ー新卒当時から、経営コンサルタントになることを志望されていたのですね。食品業界を選ばれたきっかけは何だったのでしょうか?はじめから食品業界を目指していたわけでは全くありませんでした。1回目の転職時、漠然と外資系の経営コンサルティング会社に行きたかったのですが、当時はまだ英語力も乏しく、また人事部門出身で事業や財務等の実務経験もなかったこともあり、経営コンサルタントへのキャリアチェンジは非現実的でした。そんな状況下で、何らかの専門分野を持つべきではないかと考え始めていた時、たまたま味の素株式会社が一期生の通年採用を行っていたのを見つけ、応募しました。食品業界であれば、普段の生活にも密着しているので、関心を持ちやすいだろうと思ったからです。そして無事内定を得て入社することになったのが、食品業界でキャリアを積むスタートでした。仮にそれが消費財を使う別業界の企業だったら、今はその領域で仕事をしていたかもしれません。後に「これからは食品業界でキャリアを歩んでいこう」と決意するに至ったので、結果として、味の素株式会社に入社したことがキャリアの中で大きな転機の一つだったとも言えます。ー食品業界でキャリアを歩もうと決められた理由は何だったのですか?主な理由としては2つあります。まずは、「食品業界での専門性を多角的に極めていけば、独自性をもった経営コンサルタントになれるのではないか」という仮説が自分の中で生まれたことです。通常、経営コンサルタントとなれば、コンサルティング会社で経験を積み、キャリアアップしていくケースが考えられると思います。しかし、それとは異なり、食品業界に身をおいてサプライチェーンを包括的に経験し、それぞれの専門性を強化することによって、独自性を出せるのではないかと考えたのです。それが、その後のキャリアパスの大きな方針となりました。2つ目の理由としては、「食品業界はグローバルでの成長と拡大が期待できる業界である」と感じたことです。2006年頃から中国事業に携わることとなり、企業派遣留学として中国語を習得、その後海外向けの商品開発にも関わりました。出張で中国国内の様々な都市や企業を訪れる機会も増え、100都市以上は訪れたのではいかと思います。そのような経験の中で、中国のスケールの大きさや日本とは異なる価値観などに触れ、「世界に出て仕事をするのは面白い」と感じるようになりました。また、食は人類共通で皆が関わるものであり、アジアの食文化や食習慣を世界に広められる可能性も感じていました。そういったことを背景に、食品業界のサプライチェーンにおけるあらゆる領域の経験を積んでいくことこそが、自分の目指す経営コンサルタントへのステップになるだろうと確信しました。「自分に足りないピース」を埋めていくためのキャリアパスーそんな中、3社目には食品商社に転職されていますよね。具体的にはどういった狙いがあったのですか?10年以上大手企業に勤めていると、その間にも様々な挑戦や成長の機会を与えていただくことができ、あらゆる職種や専門領域を経験しました。とは言え、一社のみにい続けるだけでは、サプライチェーンにおける川上から川下まで、全ての領域に携わることは難しく、とりわけ味の素株式会社のような事業会社においては、物流や調達分野の経験はなかなかできないです。 食品業界をマスターしようと思えば、自分に足りないピースを埋めにいく作業が必要であると考え、「次は川上とサプライチェーンに関わることができる商社業に行こう」と決めました。また、食の2大マーケットといえば「中国」と「アメリカ」です。味の素株式会社在籍時には、中国での経験を積めましたが、「次はアメリカを知らないとグローバルビジネスをやっていけない」と考えていました。そんな時、3社目の食品商社は大規模な販路を持つ米国法人を持っていたことや、アメリカ駐在が確約されたこともあり、転職を決めました。ー味の素株式会社を退職する時には、上司や同僚からはどのような反応がありましたか?やっぱりいろんな人から引き止められましたね。大手企業なので環境にも恵まれていますし、会社が嫌いになったわけでもなかったので、そう言っていただけることは大変ありがたかったです。しかし、中国事業に携わっていた時代、日本の他の中小企業たちも中国に営業に来られており、彼らと接する中で「こんな恵まれすぎた環境の中だけで仕事を続けていて良いのか?」と疑問が生まれてきました。自分はすでに出来上がった組織や仕組みの中で仕事をしているのに比べ、彼らは仕組みのない中でもっと必死になって仕事に打ち込んでいるように見えました。このまま仕事を続けるだけでは面白くないですし、「日々厳しい環境の中でチャンレンジされている企業や人々を、自らの経験を活かして支援するような仕事をしたい」と思うようにもなっていました。だからこそ、思い切って大手企業の安定は捨て、次のチャレンジを選びました。ーアメリカ生活で得られたことを教えてください。実は、転職活動の段階から「アメリカに行くならばMBAを取ろう」と考えていました。幸い、ロサンゼルス近郊の自宅から車で10分の場所に大学院を見つけることができたこともあり、平日夕方と土日でそのビジネススクールに通うことにしました。そこで得られた一番の収穫は、自分の価値を高めるためのビジネススキルと、将来求められる知識を身につけられたことだと思います。MBA取得という一つの大きな目標を達成できたことはすごく自信になりました。また、資格の話だけではなく、ものの考え方や個人のスタンスにおいて学ぶことも多くありました。周りの同級生は、「空気を読む」「行間を読む」みたいなことはなく、「思ったことは発言する」「誰か困っていたならば助ける」という、明確な行動基準のようなものがありました。割とそこは感覚的に影響を受けて変わった部分で、日本に戻ってきた今でも意識していることですね。アメリカや以前の中国での経験が、自身のグローバル基準での物事の捉え方や、固定観念に縛られないスタンスを形成してくれているので、良い経験が得られたと実感しています。ーその後の転職でも、自分に足りないピースを埋めるための選択をされたのでしょうか?そうですね。食品商社の後には、まだ水産系の食品を取り扱った経験がなかったこともあり、外資系の水産加工会社に転職、その後も複数社を経験しました。改めて振り返ってみると、大中小・外資・ベンチャー企業等、色んな企業を経験しましたし、農産物・水産物・肉・加工品等、様々な一次産品や製品を取り扱いました。職種においてもメーカーでは商品開発やマーケティング・販売、食品商社では卸や流通、輸出入の経験を積み、自分が想定していた食品業界のあらゆるレイヤーに携わることができました。「もうこれ以上はないな」ということで、2018年頃から個人で経営コンサルタントとして独立し、今に至ります。お互いに「感謝」しあえるコンサル支援を続けていきたいーこれまでの一つひとつの選択が積み上がり、今のキャリアに繋がっているのですね。現在のコンサル業務を通じて、やりがいやクライアントの成果を感じられるのはどういった時ですか?これまで、食品事業の参入に携わったプロジェクトがいくつかありました。新規の参入なので、ゼロから立ち上げていくことになりますが、まさに会社の仕組みができ、実際に商品やお店が世の中に出て、売上がつくられていく。そうして、クライアントが描いたことが形となって実現した時には、それがまさに成果だと思いますし、そこへ導くことができて本当に良かったと感じます。また、経営指南のみならず、人材育成領域の仕事を相談されたこともあります。企業の一社員となれば、その組織の目標を実現するためにある意味受動的になってしまうことは想像がつくかと思いますが、その社員を自発的に動ける人材に変えていきたいというクライアントからの依頼でした。その話を受けた当初は、正直不安になりました。明確に「絶対変えられます」と断言できることでもなく、過去に似たような事例があったとしても、企業が異なればその通りにはいきません。しかし、それでも半年ほど経つと、クライアントの社員たちが主体的に考え動けるようになっていきました。「本当に変わることができるんだ」と安堵とともに嬉しくなりました。そういう時は、プロジェクトの最後で双方が感謝しあい、ハッピーエンドで終わることができますね。そのような経験が、まさに仕事のモチベーションです。ーその原動力は、一体何なのでしょうか?まず自分自身のベースにあるのは、「食に関わる企業や人々を自らの経験を活かして支援したい」という思いです。そのためにこれまでも食品業界を軸に専門領域を広めてきたわけなので、それを色んな形で提供できれば嬉しいと考えています。ですので、機会があれば積極的に関わっていきたいというスタンスでいます。回答を作成するプロセスやクライアントの視点から、自分の学びにもなるエキスパート体験ーNewsPicks Expertもその手段の一つとして、活用いただいているのでしょうか?そうですね。私なりにこれまで経験してきたことをお伝えすることができますし、それだけではなくて自分自身も学ぶことが多いので、続けられています。ー具体的にどういう学びが得られるのですか?テキスト案件では、回答作成の過程で情報を調べることがあります。自分の意見を事実ベースで正しく伝えることを意識しているためです。また、質問内容が単純に興味深くて、「これはどうなっているんだろう?」と気になり調べることもあります。自分が経験して理解していることはコメントできますが、時に経験や知見が曖昧でぼやっとしていることもあります。それらを調べて自分なりに整理することで、クリアにすることができます。「知見を提供しているように見えるけれど、それによって自分も勉強になっている」。双方メリットがあり、重要な機会だと感じています。ー複数の企業にお勤めされていた経験も踏まえ、エキスパート活動が本業に与える影響について、どのように思われますか?基本的に、エキスパートとして知見を提供するという立場ではあるのですが、様々なクライアントが様々な考えを持っていて、その発想や着眼点が参考になるというのは大いにあると感じます。例えば、IT系のクライアントから食品業界のことを相談された時も、「そういうアプローチがあるのか!」と、新たなアイデアが得られたことがありました。そのような経験をすると、本業に戻った際に「あの仕組みが使えるかもしれない」と思い出して活かすこともできますよね。それは、本業にとってプラスの影響ではないでしょうか。ーNewsPicks Expertの活動は続けていきたいと思われますか?はい、そう思います。小さな疑問点でも、お役に立てるならば依頼に応えたいと思いますし、生業としているコンサルティング支援の一部と捉えています。ですので、これからも継続していきたいと考えています。やりたいことがあれば愚直に向き合い、後悔しない選択をー最後に、ご自身の人生を通じて大切にしていることがあれば教えてください。「やりたいことは、周りに公言して実際に行動する」ということですね。ある意味で自分を追い込むわけですが、「遠慮なんてしなくていい」「思ったことはやる」。まさに、海外経験を通じて得たことです。これからもやりたいことはまだまだいっぱいあるんです。その時やりたいと思ったことをやっていれば、いつ死んでも後悔しない生き方ができます。「あの時やりたかったのにな」という後悔だけは残さないようにしたい、ただそれだけですね。ー気になっていることはとりあえずやってみることで、先にある課題も前向きに捉えられる。そんなふうに感じられました。貴重なお話をありがとうございました。