世の中は知らないことばかり。自分で道を作る歯科医の専門性の磨き方 / #インプットの流儀

公開日: 2026-06-29

「#インプットの流儀」とは、各業界の第一線で活躍するNewsPicks Expertのエキスパートが、専門領域の情報をどう選び、取り込み、アウトプットできる状態にしているかを語る寄稿企画です。

情報が溢れ、AIが瞬時に答えを返す時代に、「何を読むか」だけでなく「どう読み、どう消化し、どう自分の思考につなげるか」というプロセスにこそ、専門家それぞれの個性と知的な流儀があります。

本記事では、情報源の選び方から、取り込む習慣、整理・消化の方法、そして専門外から得ているインプットまで、米山南歯科診療室の野口裕史氏の情報処理の全体像を描きます。

「優秀な人はどんなふうに情報と向き合っているのか」——その問いへの一つの答えが、ここにあります。

EXPERT

専門領域の情報収集において、特に大事にしている情報源

世の中の数限りない玉石混交の情報から、現在の自分にとって有用である可能性の高い情報を取捨選択していく、そのためには自分の専門外の知識の整理も非常に重要である。

自分は歯周病専門医なので大学病院での研修中は、成書やその分野の専門医から教えを受けたが、それだけでは対応しきれないことも多い。材料に関しては理工系の専門家、歯軋り・顎周りの違和感については、整形外科、鍼灸、カイロプラクターなどその分野造詣の深い方々から知識を得ることも重要である。直接的にアクセスできない情報に関しては、YouTube等SNSの情報も参考にする。SNSの情報は不確かで参考にならないと言われることも多いが、専門家がいつも正しいとは限らない。とにかくどんなところからの情報でも頭に入れ、自分のフィルターで取捨選択することが大切だ。

どんな有益な情報に触れても自分のフィルターがポンコツでは話にならないので、有益な情報はもちろんのこと、不用な情報・誤情報も含め触れていくことが情報収集において肝要である。

専門領域の情報を自分の中に取り込み、使える状態にするために工夫していること

情報は自分にとって有益であるかどうかの判断は簡単ではないことが多いので、少しでも自分のアンテナに引っかかった場合はもう一度深く考えられるよう、一部でも頭に刷り込むように心がけている。

方法はケースバイケースになるのだが、参考情報・周辺情報をネットで検索すること、時には学生時代から今までに目を通したことがある成書をあさってみたりすることもある。もちろんその分野に通じていそうな人に尋ねることもあるが、新しい内容についてだと芯を食ったような情報を得ることは稀だと思う。

時には、その情報が同じ畑の同期・後輩に聞いてみて、その意見、反応を確認してみることもある。独りよがりになりがちな個人開業医なので自分の頭の中があまりにも極端にならないかの確認してみることも重要となる場合がある。

専門外の分野で、自分の仕事や思考に意外な形で効いている情報源や習慣

顎関節症・噛み合わせに関することで言うと、まずは古典と言われるような大昔に書かれた成書の内容が土台となる。その上に、今までの異端とされた先生の内容、現在大学の卒前・卒後で覚えさせられることを乗せる。

しかし、それでは全く対応できないことばかりだったため、鍼灸師さん・カイロプラクター(DC)からの情報は非常に役に立っている。元々は自分の不調を治療してもらうために顔見知りになった先生なのだが、顎関節周囲に関することを質問したり、自分が受けた施術を参考に患者さんに施術したり、さらにはそちらの分野の専門書(初歩的なものではあるが)を読んだりと、歯科的な情報源からは得られない種々の情報を得てきた。

そこから、20年以上解決できずにいた問題の一部が解決できてきている。(顎関節ロックの解除、硬直性偏頭痛の軽減等)

私の「インプットの流儀」を言葉にすると

あくまでも個人で開業している臨床家なので、患者のためになることを目的として情報を取り入れることとなる。世の中ではAIを使った情報収集が花盛りであるが、患者を見たことがないGeminiさんや僕とは全く異なる思考回路のチャッピーさんの意見を聞いてみようとは思わない。

大学病院在籍中に世話になった恩師の言葉で、「成書に書いてあることが全てではない。新しい治療法を考えてそれを世の中に広めて行くような気持ちが大事なんだよ。」という気持ちで、自分がレベルアップしていくように情報を取り入れている。治療方法や治療目的は個人差が大きいが、自分が行なっている治療に関してはそれなりのレベルを保っていくことがベースとなり、それを進化発展させて恩師の言葉が多少なりとも実現できるようにと地味に努力を続けることだ。


本記事は、NewsPicks Expertに登録する各業界のエキスパートが、自身の経験から「専門領域の情報をどう選び、取り込み、仕事に活かしているか」を言語化する寄稿企画「#インプットの流儀」の一編です。

情報源の選び方、取り込む習慣、整理・消化の方法、専門外からのインプットといった多様な視点からの寄稿は、以下の一覧ページよりご覧いただけます。

https://newspicks.expert/media/category/input-style

「インプットしているのに、うまく仕事につながらない」——そんな感覚は、多くのビジネスパーソンに共通するものです。本記事で描かれた情報の選び方・取り込み方・活かし方が、ご自身の型を見直し、次の一歩を踏み出すきっかけとなることを願っています。

一人のエキスパートが培ってきた情報との向き合い方は、言語化され共有されることで、業界や職種を越えて応用できる知見になります。こうした知見がどのような現場で生まれているのか、続けてお届けしていきます。

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