専門領域の情報収集において、特に大事にしている情報源私が最も重視している情報源は、AIエージェントそのものと、『開発者・研究者が直接発信するSNS(特にX/旧Twitter)』である。AIコンサルタントという仕事の性質上、情報の鮮度が命になる。大手メディアやニュースサイトが記事にする頃には、現場では既に"次の話題"に移っていることが多い。だからこそ、OpenAIやAnthropicといった主要プレイヤーの公式発表や、エンジニア・研究者が日々投稿するXのポストを、フィルタリングされた状態で追うことを習慣にしている。彼らの"つぶやき"の中に、まだ言語化されていない業界の空気感が漂っているからである。次に重視しているのが、顧客との対話そのものである。顧客が何に悩み、何に期待し、何に不安を感じているかは、どんな調査レポートよりも鋭い一次情報になる。毎回の商談を「インプットの場」として捉え、顧客の言葉の端々に耳を傾けることを意識している。一方で、あえて見ないようにしている情報もある。それは、過度に煽りがちなAI関連のバズコンテンツである。「AIで仕事がなくなる」「これで全て自動化できる」といった極端な論調は、顧客の判断を歪めるノイズになりかねない。情報を選ぶ目を持つことも、AIコンサルとしての重要な仕事だと考えている。専門領域の情報を自分の中に取り込み、使える状態にするために工夫していること私が情報を取り込む際に最も大切にしているのが、AIエージェントとの"壁打ち"を通じた言語化である。気になる情報や新しいコンセプトに触れたとき、まずAIエージェントに向かって「これは自分のクライアントにどう当てはまるか」「この技術の限界はどこか」と問いかける。AIの回答を受け取りながら、自分の考えとのズレや共鳴出来る部分を確かめていく。このやり取りが、情報を"知識軸"から"判断軸"へと昇華させる最短ルートになっている。整理の段階では、「顧客ごとのシナリオ」に紐づけることを意識している。抽象的な情報をそのまま保存するのではなく、「A社の課題にはこの考え方が使える」、「B社の担当者はこの文脈で刺さるはずだ」という形で、具体的な顧客像に落とし込んでメモしておく。これにより、商談の場で情報が自然に口から出てくるようになる。実際の例を挙げると、あるAIエージェントの新機能についての情報を得た際、すぐに「これを使えば、以前Cさんが悩んでいた業務フローの問題が解決できる」と結びつけることができた。次の商談でその話題を出したとき、顧客から「私たちのことをよく理解してくれている」という言葉をいただいた。情報の取り込みとは、結局のところ相手への解像度を高める行為だと実感した瞬間であった。専門外の分野で、自分の仕事や思考に意外な形で効いている情報源や習慣AIコンサルタントという仕事は、突き詰めると「人が何を求めているかを理解し、それに応える」仕事だ。それに気づいてから、心理学や行動経済学に関する書籍などを意識的に取り入れるようになった。特に、人が意思決定をする際の「感情バイアス」や「損失回避の心理」についての知見は、顧客との対話において驚くほど実用的に機能している。どれほど優れたAIソリューションを提案しても、顧客が「変化への恐れ」を抱えている限り、話は前に進まない。その恐れの正体を理解し、言葉を選ぶ際の指針にできるのは、心理学的な素養があってこそだと感じている。また、意外に効いているのが、『日常会話や雑談の中で拾う"生活者の感覚"』である。家族や友人がAIについて話す言葉、街中で耳にする会話、そういった"専門家ではない人の視点"が、顧客の本音に近い感覚を教えてくれる。AIの専門知識が深まるほど、一般生活者との感覚のズレが生まれやすい。だからこそ、意識的に"素人目線"に触れる機会を作ることが、顧客の琴線を探る上での大切なキャリブレーションになっている。私の「インプットの流儀」を言葉にすると私のインプットの流儀を一言で表すなら、「情報は、人に届けるために取り込む」ということになる。この考え方に至ったのは、AIコンサルタントとして最初の数ヶ月で経験した、ある失敗がきっかけだった。最新のAI動向を徹底的に調べ、論理的に整理された提案書を持参した商談で、顧客の反応は冷ややかであった。情報の質は高かった。しかし、顧客が本当に聞きたかったのは「自分たちの会社が、この変化の中でどう生き残るか」という、もっと切実な問いへの答えであったのだ。それ以来、情報を取り込む際には必ず「これは誰の、どんな問いに答えられるか」を自問するようにしている。情報収集とは、知識の蓄積ではなく、相手への想像力を鍛える行為だと捉え直した。日々の実践としては、AIエージェントとの壁打ちを通じて情報を自分の言葉に翻訳し、顧客ごとのシナリオに紐づけて整理することを続けている。そして、専門外の読書や日常の会話から"人間(素人)の感覚"を補充することも、欠かさないようにしている。情報のインプットに悩んでいる方へ、一つだけお伝えするとすれば、「誰か(顧客)の顔を思い浮かべながら情報を取り込んでみてください」ということである。 届けたい相手が明確になった瞬間、情報の取捨選択は驚くほど簡単になる。そして取り込んだ情報は、頭の中でただ眠るのではなく、いつか誰かの役に立つ言葉として、自然と口から出てくるようになるはずだから、である。本記事は、NewsPicks Expertに登録する各業界のエキスパートが、自身の経験から「専門領域の情報をどう選び、取り込み、仕事に活かしているか」を言語化する寄稿企画「#インプットの流儀」の一編です。情報源の選び方、取り込む習慣、整理・消化の方法、専門外からのインプットといった多様な視点からの寄稿は、以下の一覧ページよりご覧いただけます。https://newspicks.expert/media/category/input-style「インプットしているのに、うまく仕事につながらない」——そんな感覚は、多くのビジネスパーソンに共通するものです。本記事で描かれた情報の選び方・取り込み方・活かし方が、ご自身の型を見直し、次の一歩を踏み出すきっかけとなることを願っています。一人のエキスパートが培ってきた情報との向き合い方は、言語化され共有されることで、業界や職種を越えて応用できる知見になります。こうした知見がどのような現場で生まれているのか、続けてお届けしていきます。