専門領域の情報収集において、特に大事にしている情報源 私は、情報源を「一次情報・解説・壁打ち」の3層で組み立てています。最も比重を置くのは一つ目の一次情報です。元の数字、元の文書、元の発言に、できるだけ直接当たるようにしています。たとえば、要約を読んで分かった気になっていた話でも、元の資料に当たり直すと、要約では落とされていた前提に気づくことがあります。その一行が、結論をまるごと変えることもあります。要約やまとめは便利ですが、誰かの解釈を一度通った情報です。 仕組みを正しく知りたければ、一次情報に戻るしかありません。二つ目の層は、書籍や論文といった「他の人がどう整理したか」が分かる情報です。ここでは事実そのものより、整理の仕方を学びます。一次情報の事実と、二次情報の解釈は、必ず切り分けて扱います。三つ目は、AIを使った壁打ちです。私はAIを「答えを聞く相手」ではなく、「自分の考えを整理する相手」として使っています。情報が足りない時代ではなく、情報を整理しきれない時代だからです。専門領域の情報を自分の中に取り込み、使える状態にするために工夫していること私は、情報を「問い→整理→因果→示唆」という四つの段階で処理します。第一に、読む前に問いを立てます。「ここから何を持ち帰りたいか」を決めないと、読書は流し読みに終わります。第二に、論点を分解し、見える形に整理します。頭の中だけで考えていると、整理した気になるだけだからです。第三に、「なぜそれが起きたのか」を一段深掘りします。理由まで降りない情報は、知識として残りません。第四に、自分の仕事にどう効くかを書き出します。そして、取り込んだ情報は、最後に必ず自分の言葉で書き出すようにしています。たとえば、ある内容を人に説明しようとして、途中で詰まることがあります。それは、自分がまだ理解できていないという合図です。書けないということは、分かっていないということです。情報発信のツールとして、SNSを活用していますが、最近は特にnoteに記事として書くことを意識しています。これまでに170本以上書いてきました。私にとってnoteは、発信媒体である以前に、思考を消化する装置です。現在は、その中から約30本を選び、書籍化を進めています。書籍化は、四つの段階の最終工程に位置づけています。専門外の分野で、自分の仕事や思考に意外な形で効いている情報源や習慣専門の外で役立っているのは、技術の変化、社会の変化、歴史、そして音楽です。自分の専門だけを見ていると、考え方は固定化します。だから、あえて違う分野に触れるようにしています。一見、仕事と関係なさそうな分野ほど、後から効いてくることが多いからです。理由は、分野が違っても、人や組織が動く仕組みには共通点があるからだと考えています。専門の外で得た知識を一つ重ねるだけで、それまで別々に見えていた問題が、同じ根を持っていると分かる瞬間があります。専門領域の情報だけを見ていたら、その見立てには至りません。意外性が強いのは音楽です。メロディやアレンジ、歌詞には、その時代の人が言葉にできなかった不安や違和感が、結晶のように残っていることがあります。組織の問題も、突き詰めれば「人が何を不安に感じ、何を求めているか」という話です。数字に表れない部分を、音楽が教えてくれることがあります。専門の中は「何が起きているか」を見せてくれますが、専門の外は「なぜそれが普遍的に起きるのか」を見せてくれます。私の「インプットの流儀」を言葉にすると私のインプットの流儀を一言で言えば、「構造のない問題はない」です。世の中で起きていることは、必ず何らかの仕組みの上で動いています。たとえば、複雑に見えていた問題も、一度その仕組みを描き出すと、論点が二つか三つに収まることがあります。だからインプットは、情報量を増やす行為ではなく、自分の中の地図を更新していく行為だと捉えています。新しい情報を浴びることよりも、「なぜ自分はそう考えていたのか」を疑うことの方が、はるかに難しく、価値があります。AIで情報が誰でも手に入る時代になり、情報量による差別化はもはや不可能です。差がつくのは、問いの立て方と、構造の見立てだと考えています。AIに答えを求めるのではなく、AIに自分の整理をぶつけて構造を検証する。これが人間側に残された仕事です。インプットとは、世界を理解する作業であると同時に、自分の思考の癖を解体し続ける作業でもある。私はそう捉えています。本記事は、NewsPicks Expertに登録する各業界のエキスパートが、自身の経験から「専門領域の情報をどう選び、取り込み、仕事に活かしているか」を言語化する寄稿企画「#インプットの流儀」の一編です。情報源の選び方、取り込む習慣、整理・消化の方法、専門外からのインプットといった多様な視点からの寄稿は、以下の一覧ページよりご覧いただけます。https://newspicks.expert/media/category/input-style「インプットしているのに、うまく仕事につながらない」——そんな感覚は、多くのビジネスパーソンに共通するものです。本記事で描かれた情報の選び方・取り込み方・活かし方が、ご自身の型を見直し、次の一歩を踏み出すきっかけとなることを願っています。一人のエキスパートが培ってきた情報との向き合い方は、言語化され共有されることで、業界や職種を越えて応用できる知見になります。こうした知見がどのような現場で生まれているのか、続けてお届けしていきます。