AI時代のインプットは「蓄積」がカギ―AIエバンジェリストの情報整理のコツ / #インプットの流儀

公開日: 2026-06-29

「#インプットの流儀」とは、各業界の第一線で活躍するNewsPicks Expertのエキスパートが、専門領域の情報をどう選び、取り込み、アウトプットできる状態にしているかを語る寄稿企画です。

情報が溢れ、AIが瞬時に答えを返す時代に、「何を読むか」だけでなく「どう読み、どう消化し、どう自分の思考につなげるか」というプロセスにこそ、専門家それぞれの個性と知的な流儀があります。

本記事では、情報源の選び方から、取り込む習慣、整理・消化の方法、そして専門外から得ているインプットまで、アンドデジタル株式会社 チーフAIエバンジェリストの國末拓実氏の情報処理の全体像を描きます。

「優秀な人はどんなふうに情報と向き合っているのか」——その問いへの一つの答えが、ここにあります。

EXPERT

専門領域の情報収集において、特に大事にしている情報源 

一番大事にしている情報源は、企業の公式発表と「自分の手」です。OpenAIやAnthropic、Googleの新モデル・新機能は、公式ブログとドキュメントを直接読み、出たその日に必ず自分で触ります。誰かの解説を読む前に触る。自分の言葉で「何が変わったか」を言語化できるまで使い込む。これを徹底しているのは、企業研修やセミナーで顧客が買っているのは情報そのものではなく「説明可能性」だと考えているからです。伝聞の知識では、受講者の「なぜ?」に答えられません。

その上で、流れの速いニュースはポッドキャストで補完しています。AIニュース番組「ジェネトピ」を毎週、移動中や家事の合間に聞き流す。耳でざっと潮流をつかみ、引っかかったものだけ後から一次情報に当たる、という二段構えです。もう一つの重要な情報源は「現場の質問」。講師として年間延べ千人以上に教えていると、受講者のつまずきや質問そのものが、世の中のAI活用の解像度を上げる一次情報になります。

あえて見ないのは、煽りタイトルのまとめ系コンテンツと、同じ意見ばかりが循環するタイムラインです。エコーチェンバーの中では、説明可能性が育たないからです。

専門領域の情報を自分の中に取り込み、使える状態にするために工夫していること

工夫は一つだけで、「いいなと思った情報を、チャットやタイムラインに流れたまま消さない」ことを意志力ではなく仕組みにしています。具体的には、Obsidianというノートアプリに半年で約950件のノートを貯め、AI(Claude Code)を接続して、整理のほぼ全てをAIに任せています。

ポッドキャストやYouTubeは文字起こしをAIに要約させてノート化します。毎週聞いている番組は50本以上、Web記事はクリッパーで放り込むだけで、AIが分類・タグ付け・要約・索引更新まで自動でやる。私がやるのは「残すか、捨てるか」の判断だけです。ポイントは、全ノートに「どんな時に開くべきか」という一文をAIに書かせておくこと。これで未来の自分(とAI)が検索できる資産になります。

最近の例では、変化の激しいAI時代の未来を語る講演を作る際、貯めてきたノート群から主張の裏付けになる一次情報をAIに横断させ、統計や出典の裏取りまで一気に終えました。流し読みした断片が、半年後に講演の骨格になる。整理術を頑張るのではなく、「貯まる導線」を一度だけ設計するのが私のやり方です。

専門外の分野で、自分の仕事や思考に意外な形で効いている情報源や習慣

二つあります。

一つ目は、新卒で大工をやっていた経験です。経済学部卒からあえて現場に入り、その後も施工管理、広告運用、営業と職種を渡り歩きました。一見AIと無関係ですが、企業へのAI導入支援とは、要するに「人の仕事を分解して言語化する」仕事です。現場の業務はマニュアルに書かれていない暗黙知だらけで、そこを汗をかいて言語化した経験がないと、AIに渡せる形になりません。私は「生成AIの社会実装は、AI登場以前の人の営みに対するリバースエンジニアリングだ」と考えていますが、その感覚は現場時代に作られたものです。

二つ目は、ゲーム制作にノウハウ動画です。「ゲーミフィケーション」という概念がゲーム作り以外にも生きるので好きなのですが、これが講師業に効いています。ゲームデザインの核心は「リスクとリターンの設計」と「プレイヤーを飽きさせない仕掛け」で、これはそのまま研修設計に翻訳できます。受講者がどこで離脱するか、どこに小さな成功体験を置くか。AIの知識そのものより、専門外から借りてきたこの設計思想のほうが、講座の満足度を支えている実感があります。

私の「インプットの流儀」を言葉にすると

私のインプットの流儀は「AI時代のインプットは蓄積が最も重要」です。
きっかけは生成AIとの対話でした。ChatGPTを使い込むほど、良い気づきや知見ほどチャットログの彼方に流れて消えていくことに、強い気持ち悪さを覚えたんです。読んで「なるほど」と思った瞬間が一番価値が高いのに、置き場所がなければ翌週には消えている。だから「知見をチャットに消えさせない」を原則にして、消えない場所=自分のナレッジベースに貯める仕組みを作りました。

誤解してほしくないのは、全部を真剣に読めという話ではないことです。むしろ逆で、私はほとんどの情報を「ながら」で流しています。流していい。ただし、引っかかった瞬間だけは、消えない場所に置く。インプットの質は読む量ではなく、この「引っかかりを拾う反射」で決まると思っています。
そしてもう一つ。好きな言葉に「全ての才能は備わっているものではなく発揮されるものだ」という言葉があるのですが、情報も同じで、貯めただけでは価値になりません。講座、記事、案件。使う場が決まっていると、情報は勝手に頭に入ってきます。

インプットに悩んでいる方は、整理術を探す前に、小さくてもいいからアウトプットの場を先に作ることをおすすめします。情報の整理は、もうかなりAIエージェントに任せられる時代です。


本記事は、NewsPicks Expertに登録する各業界のエキスパートが、自身の経験から「専門領域の情報をどう選び、取り込み、仕事に活かしているか」を言語化する寄稿企画「#インプットの流儀」の一編です。

情報源の選び方、取り込む習慣、整理・消化の方法、専門外からのインプットといった多様な視点からの寄稿は、以下の一覧ページよりご覧いただけます。

https://newspicks.expert/media/category/input-style

「インプットしているのに、うまく仕事につながらない」——そんな感覚は、多くのビジネスパーソンに共通するものです。本記事で描かれた情報の選び方・取り込み方・活かし方が、ご自身の型を見直し、次の一歩を踏み出すきっかけとなることを願っています。

一人のエキスパートが培ってきた情報との向き合い方は、言語化され共有されることで、業界や職種を越えて応用できる知見になります。こうした知見がどのような現場で生まれているのか、続けてお届けしていきます。

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