しなやかに受け止める―内科医師・研究者のインプット習慣 / #インプットの流儀

公開日: 2026-06-29

「#インプットの流儀」とは、各業界の第一線で活躍するNewsPicks Expertのエキスパートが、専門領域の情報をどう選び、取り込み、アウトプットできる状態にしているかを語る寄稿企画です。

情報が溢れ、AIが瞬時に答えを返す時代に、「何を読むか」だけでなく「どう読み、どう消化し、どう自分の思考につなげるか」というプロセスにこそ、専門家それぞれの個性と知的な流儀があります。

本記事では、情報源の選び方から、取り込む習慣、整理・消化の方法、そして専門外から得ているインプットまで、国立大学病院のH.U.氏の情報処理の全体像を描きます。

「優秀な人はどんなふうに情報と向き合っているのか」——その問いへの一つの答えが、ここにあります。

EXPERT

専門領域の情報収集において、特に大事にしている情報源

医学知識のインプットには論文や学会発表、診療知識のインプットにはガイドラインや学会から発信される情報(リコメンデーションなど)を大事にしています。一次情報を取りに行きたいのと、すぐに自分の仕事に活かしたいというのがその理由です。誰のフィルターもかかっていない定量的な事実を頭に入れておくと自分の思考の確固たる土台になるので、様々な外的要因によってブレが生じることが少なくなります。

一方で、どれだけデータが揃っても実際の研究や臨床現場での判断に100%の正解はありません。そこでガイドラインやリコメンデーションを大先輩の方々が作られた「形」と思って吸収して、ピボットにするようにしています。こうしたインプットの作業は時間も労力もかかるのですが、最近は対話型AIのおかげで生産性が桁違いに上がりました。

気になるトピックについてレポートを作ってもらったり、最新の情報をアップデートしてもらったりして、それをきっかけにして深堀りすることができます。

専門領域の情報を自分の中に取り込み、使える状態にするために工夫していること

実際の活用シーンを想定しながら情報を取り込むことです。例えば、とある新薬が登場したとします。臨床試験の情報は論文に、適応や注意点はガイドラインに記載されています。

では、今自分がみている中でどの患者さんに処方してみるのが良さそうだろうか。それはなぜか?
■年齢、血液検査のデータ、合併症、どれがどんな値だからそう考えたのか? 処方する前に気をつけなければならないことは?
■腎機能や肝機能、副作用のリスク、事前に説明すべき注意事項は? 処方後の効果判定は?
■検査結果、患者さんの反応? これらをちゃんと言語化できるように整理するようにしています。読みながらここまで実行する能力はないので、いったんは情報を丸呑みして、後から整理することになります。

専門外の分野で、自分の仕事や思考に意外な形で効いている情報源や習慣

「全然違うルートで得た情報が業務で生きた」という経験でも、「なんとなく続けていたら効いていた」という話でも構いません。

ポッドキャストと経済ニュースです。ポッドキャストは好きなチャンネルがいくつかあり、毎週の更新を欠かさずに聴いています。そこでは自分とは全く違う仕事をされている方が、仕事ではなく日常で考えていることを話されています。聴いているうちに、「こういう自己発信の仕方があるんだ」とか、「この考え方は自分にとって新しいし、取り入れてみよう」といったしなやかな気づきをもらえるようになりました。そして自分でも驚きなのは、ポッドキャストをきっかけに友達ができたことです。それぞれの個性を尊敬しあえて楽しい仲間、今ではかけがえのないサードスペースになっています。

経済ニュースは、朝の支度と夜寝る前のルーティンです。自分の仕事も世界経済の一つのピースだということを感じさせられます。遠く離れた場所で起きていることが、明日の自分の仕事に影響するかもしれないし、その逆もあるかもしれない。それはとてもダイナミックで緊張感のあることだと思っています。

私の「インプットの流儀」を言葉にすると

突き詰めれば、自分の選んだ仕事で社会の中で役割を果たす。そのためのインプットだと思っています。どの仕事でもそうかもしれませんが、全ての情報が手元にあって、じっくり考えて判断できる、そんな場面はほとんどないと思います。しっかりとインプットを蓄えておくことで、不確実な状況でも臨機応変でありながら的確で安全な判断ができると信じてインプットを大切にしています。だからこそ、一次情報というロバストな情報源が頼りになります。

ただ、インプットへの姿勢にはこだわりはなく、常に変化し続けて行くのだろうと思っています。仕事ではオリジナリティを前面に出すよりは、いかに正解に近づけられるかということを求められる場面がしばしばあります。正解を出すなら私よりAIの方が優れているかもしれないし、AIはまたたく間に進化していきます。技術も社会情勢も常に変化していく中で、自分のインプットのやり方もしなやかにアップデートしていこう、と考えています。


本記事は、NewsPicks Expertに登録する各業界のエキスパートが、自身の経験から「専門領域の情報をどう選び、取り込み、仕事に活かしているか」を言語化する寄稿企画「#インプットの流儀」の一編です。

情報源の選び方、取り込む習慣、整理・消化の方法、専門外からのインプットといった多様な視点からの寄稿は、以下の一覧ページよりご覧いただけます。

https://newspicks.expert/media/category/input-style

「インプットしているのに、うまく仕事につながらない」——そんな感覚は、多くのビジネスパーソンに共通するものです。本記事で描かれた情報の選び方・取り込み方・活かし方が、ご自身の型を見直し、次の一歩を踏み出すきっかけとなることを願っています。

一人のエキスパートが培ってきた情報との向き合い方は、言語化され共有されることで、業界や職種を越えて応用できる知見になります。こうした知見がどのような現場で生まれているのか、続けてお届けしていきます。

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