今回の調査テーマ「サプライヤーとの関係構築・マネジメント」について運輸・物流業界におけるサプライヤーとの関係は、eコマースの拡大やグローバル経済の変化、さらにはサステナビリティの要求が高まる中で、単なる輸送手段を超えて、企業の競争力と成長の要となっています。特に気候変動やパンデミックなどの予測不能なリスクが顕在化する現代において、物流の遅延や供給網の寸断が与える影響は大きく、企業は迅速かつ柔軟な対応を求められます。そのため、安定した供給網を維持するためには、信頼できるサプライヤーとの関係をいかに構築し、リスク管理を強化するかが大きな課題となっています。今後の運輸・物流業界において、リスクを最小化しつつ、効率的かつ持続可能な物流網を構築するにはどのような戦略が必要なのか? 供給の安定性を保ちながら、サプライヤーとの協力を深めるためにはどんな取り組みが効果的なのか?これらの課題を踏まえ、NewsPicks Expertに登録して活動するエキスパート3名にその見解を伺いました。※エキスパートの皆様には、所属企業の秘密情報の漏洩・剽窃等に抵触しないよう注意喚起を行い、ご同意いただいた上で、本記事掲載の回答を頂戴しております※ご回答内容の掲載順はお名前の五十音順です※本記事に掲載されている所属や肩書きは、すべて調査回答当時のものです【設問1】サプライヤーとの効果的な関係構築のために行っている取り組みや事例について公開情報の範囲でご教示ください。▼太田誠一 氏パートナーシップ協議体を構築し、定期的な連絡会を開催しています。連絡会では、安全・品質・コンプライアンスをテーマにvisionを共有すると共に、one teamとなり物流を維持していくための取り組みについて協議します。パートナー同士のネットワーク構築をサポートするため、交流会ワークショップも開催しています。また、ニーズを踏まえた安全・品質・コンプライアンスに関係する講習会なども企画・開催しています。▼鎌刈雄 氏当社は利用運送事業者ですので、サプライヤーとは実運送会社や通関業者、倉庫会社といった業務委託先のことを指しています。担当者レベルの委託業務に関するやり取りとは別に、マネジメントレベルでの面談を定期的に設け、業界情報や市況の共有などに関する対話を行うことで、双方の困りごとや中・長期的なビジネスの見通しの共通認識を持ち、日々の担当者レベルのやり取りをよりスムーズにする為の助けにするとともに、新規案件が発生する際の委託先として適当かどうかの評価指標を常に持つように努めています。▼鈴木圭一郎 氏物流業界で 「2024年問題」への対応が重要課題となる中、 サプライチェーンの上流を構成するメーカーなどの荷主のうち、一定規模以上の貨物を扱う企業は「特定事業者」 とみなされ、今後は荷待ち時間削減の計画策定が法令により義務付けられます。サプライチェーンの中間を担う卸売業者においては、自社のサプライヤー (メーカー)が法令による規制強化に直面することに対応し、メーカーと共同で問題解決に取り組む動きがあります。日用品業界で取り組みが始まった 「事前出荷通知の配信」 については、その具体例といえます。【設問2】サプライチェーンのマネジメントにおいて、最近注目している技術をその理由も含めて教えてください。▼太田誠一 氏安全運転管理のテックソリューションとして、ドライバーの運転行動(動態管理)をリアルタイムで測定、評価、フィードバックするツールの普及に期待しています。運送業のドライバーは点呼以降、基本的に長時間誰からも干渉されなくなり、異常があっても運行管理側では把握することが困難となります。健康起因事故が問題とされる昨今、いつ誰が異常な状態になってもおかしくない状況でこれらのツールが普及することは、安全な物流を実現することに寄与するものと考えます。▼鎌刈雄 氏物流業界の2024年問題をきっかけとした運送事業者のコスト上昇とリソース不足の影響は徐々に広がりつつあり、協力会社からの既存案件に対する値上げ要請や、新規案件の受諾許容範囲の減少に影響を及ぼしつつあります。例えば、現在トラック輸送が主流となっている港~荷主間の海上コンテナ輸送においては、効率化を目的とした代替の手段として、鉄道、内航船、ドレージ運送のラウンドユースやインランドデポの活用などが挙げられますが、まだ特定の荷主や商流を対象とした限定的なサービスとなっており、まだ一般的で標準化されたサービスとは言えません。欧州系の荷主からはCO2削減の見える化が要望されつつあり、いずれ具体的な数値目標の設定や進捗管理が求められることが予想されることもあり、国際物流業界としてはそのような要望と実運送のサービス保全、効率化を関連付けて検討する必要があると感じています。▼鈴木圭一郎 氏前問の回答で挙げた事前出荷通知(ASN)の配信については、 技術的な制約よりもむしろサプライチェーンを構成する事業者間の利害の調整が実現上の課題となっていたと認識しています。2024年問題に関連する法改正を通じて、サプライチェーンの上流を構成する事業者(荷主)に対し、物流に関する問題解決への動機づけが促されることで、今後は既存・新規を問わず技術の活用が進んでいくことを予想しています。具体的には、既存の技術では前述のASN、新規技術ではバース予約管理システムの活用に注目しています。「NewsPicks Expert」とはNewsPicks Expertは、「個人の知見」を「企業の意思決定」につなぐエキスパートプラットフォームです。クライアント企業から様々な相談を受け、これまでの経験や知見を活かした見解やアドバイスを伝えることで報酬を得ることができます。現役会社員が登録者の7割以上を占めており、所属企業でのお仕事を続けながら、30分〜1時間程度のスキマ時間を有効的に活用して挑戦しています。「FLASH Opinion」とはFLASH Opinion(フラッシュオピニオン)とは、クライアントからの質問に対し、エキスパートの方々に24時間以内にテキストで回答いただく案件です。今回の記事のように、一問一答形式で、5名以上のエキスパートからの回答をクライアントに提供します。仕事で培ってきたスキル・経験・知見を、所属企業以外で活きるかを確かめてみることから始めませんか?回答いただいたエキスパートのプロフィール※本記事に掲載されている所属や肩書きは、すべて調査回答当時のものです太田誠一アマゾンジャパン合同会社 物流輸送企画事業本部 課長・課長補佐・マネージャー国交省所管の独立行政法人で14年間、トラック、バス、タクシーの安全指導を行い、ISO 39001の規格開発に関与。80社以上の事故削減に貢献した後、ISO審査機関で品質・労働安全・道路交通のISO審査員として活動。2022年にアマゾンジャパンに入社し、ラストマイルドライバーの安全マネジメント業務を担当。全国50配送拠点の安全管理を実施し、事故率を56%削減。フリーランスドライバーの事業法改正案や安全対策ガイドラインの作成を主導。2023年12月より物流輸送企画事業部に異動し、幹線トラック事業者の安全・法令・品質の監査評価プログラムを担当している。鎌刈雄GEODIS Japan株式会社 オペレーション 営業 部長・部長代理・次長国内大手物流業者で10年の勤務ののち、外資系フォワーダーの営業・業務管理・購買部門にて13年のキャリアあり。海上貨物輸送手配の経験が長く、航空貨物・エクスプレス・通関・国内集配にもそれぞれ経験あり。鈴木圭一郎GROUND株式会社 GROUNDリサーチインスティテュート 所長専門商社にて約10年間にわたりトレーディング業務に携わった後、 オフィス通販企業に転じ、 新規事業開発プロジェクトに参画。 その後、大手Eコマース企業において、出店事業者向けの新規事業となる物流サービスの開発・営業活動に従事。2015年、GROUND株式会社の創業時より同社に参画し、海外製ロボット製品の国内市場展開にあたっての事業開発ならびに投資家対応等に従事。 2024年4月より現職。