今回の調査テーマ「サプライヤーとの関係構築・マネジメント」について医薬・バイオ業界におけるサプライヤーとの関係は、製品の安全性や品質が人命に直結することから、他の業界とは異なる高度なリスク管理と厳格な規制遵守が求められています。さらに、パンデミックの影響やグローバル化の進展により、サプライチェーンの透明性と柔軟性がますます重要となっています。特に医薬品やワクチンの供給において、サプライヤーが提供する原材料や製造プロセスの一貫性が、最終製品の安全性と効果を大きく左右します。このため、サプライヤーとの信頼関係を深め、サプライチェーン全体でのリスク管理を徹底することが、業界の持続的な成長に不可欠です。今後の医薬・バイオ業界では、安定した供給体制と規制対応を両立させるために、どのようなサプライチェーン戦略が必要なのか? そして、サプライヤーとの連携をいかに強化し、共にリスクに対処していくべきか?NewsPicks Expertに登録して活動するエキスパート2名に見解を伺いました。※エキスパートの皆様には、所属企業の秘密情報の漏洩・剽窃等に抵触しないよう注意喚起を行い、ご同意いただいた上で、本記事掲載の回答を頂戴しております※ご回答内容の掲載順はお名前の五十音順です※本記事に掲載されている所属や肩書きは、すべて調査回答当時のものです【設問1】サプライヤーとの効果的な関係構築のために行っている取り組みや事例について公開情報の範囲でご教示ください。▼梅本常明 氏私の専門の電子デバイス産業での経験からは、どの業界であっても、サプライヤーには技術+QCDへの要望をするものの、その強弱については、業界により違いがある、と感じています。スマートフォンやTVなどの情報機器が最先端技術やその価値に見合うコスト、生産規模、安定した品質(PPM管理)を重視し、複数のサプライヤーをコントロールするマルチベンダー制を取り入れている企業が多く、特長技術やコスト提案、一定の品質を確保できる自動化に対する提案を好み、サプライヤーに競争させる動きが強い、と感じます。片方、医療や車に関しては、安定した高い品質や少量であっても対応してくれるデリバリー管理を重視しており、複数のサプライヤーを競わせる、というよりは、供給してくれるサプライヤーと深くつながりを持ち、着実に高い品質を確保しつつ安全・安心を確保しようとする傾向にあると感じます。従い、品質に関してもPPM管理ではなく、台数管理になり、流出不良に関しても事細かく調査し、対策する動きになります。また、サプライヤーの選定についても、情報機器とは違い、数年の年月をかけ、技術だけでなく管理システムなども含めて審査を受けて承認されます。利便性を求める情報産業に対して、人の命を守る医療や車産業の違いが、サプライヤーとの関係性にも影響しているのかな、と考えています。▼岡下真弓 氏サプライヤーのホームページ、IR情報、Wantedlyなどあらゆる情報収集を行い、企業理念、経営方針、今後力を入れていく分野、新規事業の有無などを調べておきます。このようにして共通言語、向かうべき姿を把握しておく事で、相手が欲しい情報や知識を的確に伝える事ができます。また最初のミーティングでは誰が意思決定権があるのか予測し、その方に質問を投げかけ、周囲の様子を見極めます。こうする事で、大事な内容、連絡事項など内容別にコミニュケーションをとり、スピーディーに事業開発を進めています。【設問2】サプライチェーンのマネジメントにおいて、最近注目している技術をその理由も含めて教えてください。▼梅本常明 氏医療の世界でも、変化する環境(各国の医療規制の変化や情報セキュリティーの変化、遠隔医療や外科手術の機械化に代表される医療自体の変化など)に対応した、デジタルデータ基盤の整備は、今後益々必要になると考えます。環境が変化する事でサプライチェーンやロジスティックは変化せざる得ず、これに対応した薬品などの生産状況や在庫管理がますます重要になり、従来のような個別のデータ管理では立ち行かなくなる可能性が高いため、ある一定の規模で企業間が連携しながら必要な薬品や備品を供給・提供しあう環境整備のためには、共通のデータベース整備が必要であると考えています。また、このデータベースをきちんと有益に活用するためには、登録されたデータを保護するセキュリティーも重要になってくると考えます。このような環境が整備されれば、データベースを活用したAIでの新薬開発などが加速され、医療業界の進化に繋がっていくのでは?と考えています。▼岡下真弓 氏最近、医療の業界ではM&Aが進んでいます。その際、企業文化だけでなく、安全基準も異なります。零細企業の安全基準は過去の慣習で行われており、数値化、言語化できておらず、品質も統一されていません。DXを推進しようとしてもパソコンそのものがわかっていない場合もあります。このような現状でも可能な安全・リスク管理が今後さらに必要になってくると思います。従って遠隔で操作できるシステムや誰が行っても同じ技術になりうるAIによる指導員、いつでも相談できるチャットbotなどが主流になるのではないかと思います。「NewsPicks Expert」とはNewsPicks Expertは、「個人の知見」を「企業の意思決定」につなぐエキスパートプラットフォームです。クライアント企業から様々な相談を受け、これまでの経験や知見を活かした見解やアドバイスを伝えることで報酬を得ることができます。現役会社員が登録者の7割以上を占めており、所属企業でのお仕事を続けながら、30分〜1時間程度のスキマ時間を有効的に活用して挑戦しています。「FLASH Opinion」とはFLASH Opinion(フラッシュオピニオン)とは、クライアントからの質問に対し、エキスパートの方々に24時間以内にテキストで回答いただく案件です。今回の記事のように、一問一答形式で、5名以上のエキスパートからの回答をクライアントに提供します。仕事で培ってきたスキル・経験・知見を、所属企業以外で活きるかを確かめてみることから始めませんか?回答いただいたエキスパートのプロフィール※本記事に掲載されている所属や肩書きは、すべて調査回答当時のものです梅本常明Create3株式会社 代表取締役シャープ株式会社入社し立上直後のTFT液晶事業に配属後は、担当・準管理職として経営管理、財務、プロセス技術、SCM革新・BPRのリーダーとしてのPM業務)、事業戦略、技術企画を経験。その後は、管理職として本社経営企画、デバイス事業の事業戦略策定・推進責任者として重要案件の推進、新子会社設立や経営管理、に従事し、業績向上に貢献した。シャープ株式会社退職後は起業し、製品の物販と事業戦略や生産革新などのコンサルティングを行い顧客企業の革新に貢献し、ITソリューション及びBPOサービス企業の社業の立て直しを行った。岡下真弓個人事業主化粧品会社研究開発、医薬品卸会社、調剤薬局薬剤師、オンライン診療会社に勤務。2016年以降個人事業主として業務委託によるヘルスケアサポートを行なってきました。医療分野で培った知識と経験を活かし、新規事業プロジェクトにおけるリサーチ業務に深く関与しました。市場動向の分析、競合調査、および顧客ニーズの洗練に取り組み、これをもとに戦略的なプランニングに貢献しました。このように、現場にいた経験を活かし、今なお改善の糸口が見えない医療慣習から何が現代に不足しているのか常に感じとり、必要な情報を端的に集約し伝える基盤を築き、持続的な成長と独創的な競争優位性の確保に向けて努力しました。