今回の調査テーマ「サプライヤーとの関係構築・マネジメント」について小売業におけるサプライヤーとの関係は、消費者の嗜好の多様化やECの普及、さらには環境規制の強化など、急速に変化する市場環境において、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。特にサプライチェーン全体の透明性と効率性が求められる中、商品の供給遅延や品質トラブルが発生すると、企業のブランドイメージや顧客満足度に直接的な影響を与えます。そのため、サプライヤーとの信頼関係を強化し、迅速な対応やリスク回避を実現することが、これからの小売業における成功の鍵となります。では、今後の小売・日用消費財業界において、安定供給と高品質を両立させるためには、どのようなサプライチェーン戦略が有効なのでしょうか? サプライヤーとのパートナーシップを強化するために、どのような改善策が必要とされるのでしょうか?今後の小売業における成功の鍵を探るべく、NewsPicks Expertに登録して活動するエキスパート3名に見解を伺いました。※エキスパートの皆様には、所属企業の秘密情報の漏洩・剽窃等に抵触しないよう注意喚起を行い、ご同意いただいた上で、本記事掲載の回答を頂戴しております※ご回答内容の掲載順はお名前の五十音順です※本記事に掲載されている所属や肩書きは、すべて調査回答当時のものです【設問1】サプライヤーとの効果的な関係構築のために行っている取り組みや事例について公開情報の範囲でご教示ください。▼島田浩司 氏日本市場における小売・日用消費財業界のサプライチェーン共存共栄からデジタル駆動型パートナーシップへグローバル化やデジタル化、サステナビリティ意識の高まりを受け、日本の小売・日用消費財業界のサプライチェーンは、「戦略的パートナーシップ」と「デジタル技術活用」を軸に進化を遂げている。従来の「共存共栄」から踏み出し、サプライヤーを長期的な戦略的パートナーと位置づける企業が増加。花王は、密なコミュニケーションを通して安定供給や品質向上を実現し、日本アクセスは共同開発で競争力を強化、トーハンは情報共有で可視化と最適化を達成した。トヨタはリスク共有と協力体制構築でサプライチェーン全体の強靭性を高めている。デジタル技術の活用も進展し、AIやデータ分析による需要予測や在庫最適化、ブロックチェーンによるトレーサビリティ向上などが進む。環境負荷低減や人権尊重への取り組みも強化されている。課題としては、情報連携不足、サプライヤーの経営基盤の脆弱性、意識改革の遅れなどが挙げられる。解決策として、SCM導入、データ共有プラットフォーム構築、経営支援などが求められる。今後は、データ駆動型で、強靭かつ持続可能なサプライチェーン構築が加速し、デジタルツインやサーキュラーエコノミー導入も期待される。日本市場では、信頼関係を基盤に、デジタル技術を活用した効率化や持続可能性を重視した進化が続くと見込まれる。▼中川貴文 氏1995年~2005年に釣糸の営業を行っていたが、合わせて生産管理(計画立案や資材の手配など)も行っていた。生産は製造子会社が行い、販売は国内外、それぞれ指定の代理店や商社が行っていた。製造子会社に対しては毎月1回以上、計画立案・修正や販売状況の連絡などを行っていた。代理店・商社などからは毎月販売状況を報告してもらっていた。米国や欧州については年1~数回、販売会議を開催し、情報を共有していた。釣糸は種類が多く、地域や時期によって使用される糸のサイズ・数量、使われ方が違うため、販売先での情報収集が非常に重要であった。▼藤林宗晃 氏相手の物流の希望条件を踏まえて、当方の希望条件を月一回、打合せして、現地確認をしてもらう。次に、当方と先方の担当者を半年に1度、お互いの部署に出向して、双方の業務をしてもらい、お互いの業務を実感するようにする。さらに、共同で配送の可能性、また、双方の希望するマテハンについての情報交換を年1回はしています。というのは、マテハンを変えるだけで効率化されることが少なくないからである。最後に、廃棄物についての打合せをしている。【設問2】サプライチェーンのマネジメントにおいて、最近注目している技術をその理由も含めて教えてください。▼島田浩司 氏小売・日用消費財業界のサプライチェーンマネジメントは、消費者のニーズ変化やデジタル化、持続可能性への関心の高まりにより、複雑化しています。そこで、効率的かつ強靭なサプライチェーン構築に向け、注目される最新技術を解説します。需要予測においては、AI/機械学習が過去の販売データに加え、天候やSNSトレンドなど多様なデータを分析することで、高精度な予測を実現します。これは、在庫最適化や機会損失の最小化に繋がり、企業の収益向上に貢献します。持続可能性の観点では、ブロックチェーン技術が注目されています。製品の生産から消費までの情報を記録・追跡することでサプライチェーン全体の透明性を向上させ、倫理的な調達や環境負荷低減を証明できます。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進においては、IoTデバイスがサプライチェーン上のあらゆるモノをネットワーク化し、リアルタイムデータ収集を可能にします。また、クラウドコンピューティングは柔軟かつ拡張性の高いITインフラを提供し、データ分析やシステム連携を効率化します。リスク管理においては、AI/機械学習が過去のデータ分析に基づき、自然災害やサプライヤーの倒産などのリスクを予測し、企業が事前に対策を講じることを支援します。加えて、複数の調達ルート確保など、サプライチェーンのレジリエンス強化も重要となります。人手不足が深刻化する中、倉庫内作業や配送の自動化も進んでいます。ロボティクスや自動運転技術は人材不足解消だけでなく、生産性向上やコスト削減、ヒューマンエラー防止にも貢献します。これらの先進技術を相互に連携させることで、より高度なサプライチェーンマネジメントシステムを構築し、効率的かつ強靭で持続可能なサプライチェーンを実現できます。▼中川貴文 氏釣糸は自然環境の変化により販売状況が大きく変わるので、天気の情報精度や海水温や潮流の変化についての情報精度が高くなっているのはとてもいいことである。またAIによる需要予測の精度が高くなると、生産計画の変更頻度も少なくなり、在庫過多や在庫切れなどを防ぐことができるようになるかもしれない。当時は3年間の販売や生産実績をExcelで集計していたが、その作業も大変であったが、そもそも直近の過去3年のデータがあたったことはなかった。▼藤林宗晃 氏まず、持続可能性です。商品供給のルートと生産体制についての打合せは絶対です。商品供給のルートを変えるといった場合、マテハンを変えるということなる場合が少なくないので、最近はマテハン業者の意見を聞く機会が一部の小売・日用消費財業者が増えています。次に、生産体制については、自治体の商工会議所等々の話を聞く機会を恣意的に増やしています。自分たちではこれが常識だと思っていたことが違うということが最近、少なくないからです。「NewsPicks Expert」とはNewsPicks Expertは、「個人の知見」を「企業の意思決定」につなぐエキスパートプラットフォームです。クライアント企業から様々な相談を受け、これまでの経験や知見を活かした見解やアドバイスを伝えることで報酬を得ることができます。現役会社員が登録者の7割以上を占めており、所属企業でのお仕事を続けながら、30分〜1時間程度のスキマ時間を有効的に活用して挑戦しています。「FLASH Opinion」とはFLASH Opinion(フラッシュオピニオン)とは、クライアントからの質問に対し、エキスパートの方々に24時間以内にテキストで回答いただく案件です。今回の記事のように、一問一答形式で、5名以上のエキスパートからの回答をクライアントに提供します。仕事で培ってきたスキル・経験・知見を、所属企業以外で活きるかを確かめてみることから始めませんか?回答いただいたエキスパートのプロフィール※本記事に掲載されている所属や肩書きは、すべて調査回答当時のものです島田浩司事業開発研究所株式会社 代表取締役日本を中心に、中国、韓国、台湾、シンガポール、タイ、インド、ベトナムとアジア圏で、ファッションビジネス~ビューティ~飲食までの事業開発、コンサルティング、教育を行なう。ファッション業界の特徴である「時代性・市場性・客層・デザイン・マーチャンダイジング・価格」をベースにマーケティングとインターネットを駆使し、他業種を含め、新しいコミュニケーションを切り口にビジネスモデルを創造し、マルチチャネルを駆使する事業開発プロデューサー。企業の儲けの仕組みを理解し、ビジネスモデルを創造し、時代の流れに合わせた新規事業の組み立てが可能。事業開発においては、情報拡散可能なコンテンツを開発中。中川貴文株式会社クレハ レジャー用品部 営業 課長・課長補佐・マネージャー・釣糸の海外市場の開拓、販売(担当エリア:アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オセアニア、中国等、20数カ国・地域)・ブランドマーケティング、流通・広告宣伝・価格決定・パッケージング等、地域ごとに決定・国内営業・生産管理も並行して担当していた時期あり。藤林宗晃一般社団法人教育総合研究所 理事建設、金融機関、物流(小売の会社と共同事業含む)などを経て、現在、学習支援業に従事しています。