営業として実績を重ねてきたものの、「このままずっと数字だけを追い続ける働き方でいいのだろうか」と考えたことはありませんか。あるいは、営業の先にあるキャリアとして「営業企画」という職種に興味をもったことがあるかもしれません。本記事では、営業企画の定義から具体的な仕事内容、必要なスキル、向いている人の特徴、キャリアの広がりまでを丁寧に解説していきます。現場での経験を活かしながら、新たなステージへ進みたい方はぜひ参考にしてください。営業企画とは営業企画とは、営業現場を支える戦略立案や仕組みづくりを担う職種です。現場が目の前の数字を追うのに対し、営業企画は中長期的な視点で営業活動全体を最適化する役割を持ちます。具体的には、売上データの分析、営業戦略の立案、目標設計、施策の企画・実行支援、営業資料の整備などが主な業務です。営業企画の目的・重要性営業企画の主な目的は、属人的な営業から脱却し、再現性のある営業プロセスを構築することで、現場の負担を軽減しながら、生産性と競争力を高めることです。また、営業企画は現場と経営、マーケティングなどの他部門をつなぐハブの役割もになっています。営業現場の実態を踏まえながら、経営の意図や事業戦略と整合した施策を立案し、組織全体の方向性を揃えることが求められます。変化の激しい市場環境において、営業活動を柔軟かつ迅速に対応するためには、データを活用した戦略立案や施策の改善が欠かせません。営業企画は裏方ではなく、企業の持続的な成長と競争力を支える中核的な存在といえるでしょう。営業企画の年収(年代別)営業企画の年収は、経験やスキルだけでなく年齢や役職によっても大きく変動します。JAC Recruitmentのデータによると、20代前半で約662万円、30代前半で約794万円と、比較的若いうちから高い水準にあるのが特徴です。さらに、30代後半では約852万円、40代前半で約894万円、40代後半では約950万円と、年齢とともに着実に上昇傾向が見られます。50代以上では1,000万円を超える水準(約1,042万円)となっており、マネジメントや全社戦略に関わる営業企画職の重要性が、報酬にも反映されていることがわかります。特に戦略立案や部門横断の推進力が求められるポジションでは、高年収の傾向が顕著です。営業企画の仕事内容を5つのステップで紹介営業企画の仕事は「戦略を考えるだけ」ではなく、現場と連携しながら複数のステップを踏んで進めていきます。ここでは、主な仕事内容を5つのステップに分けて紹介します。業務の全体像をつかんで、自分の経験やスキルがどこで活かせそうかイメージしてみましょう。1. 市場分析|顧客・競合を捉え、自社の立ち位置を明確にする営業企画の第一歩は市場分析です。まず、市場規模や成長性、顧客セグメントを詳細に調査し、自社が注力すべき市場や顧客層を明確にします。次に、競合他社の価格戦略や販売チャネル、強みや弱みを多角的に分析し、自社の立ち位置や差別化ポイントを把握します。さらに、顧客インサイトや潜在ニーズの深掘りも重要で、アンケートや購買データ、商談内容から顧客が本当に求める価値を探ります。そして、営業現場の声を積極的に吸い上げることで、実際の顧客接点で得られるリアルな課題や成功体験を把握し、市場分析に反映します。このように多面的な情報を統合して初めて、実効性の高い営業戦略の土台が築けます。2. 目標設定|達成可能かつ戦略的な営業KPIを設計する自社の立ち位置が明確になったら、達成可能かつ戦略的な営業KPIを設計します。まず、SMARTの原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性がある、Time-bound:期限が明確)に基づいて、売上や市場シェアなどの数値目標を具体的に設定します。この段階で営業部門と密にコミュニケーションを取り、現場の実情やリソースを踏まえた目標のすり合わせや調整を行います。次に、目標達成に向けたKPIを設計し、日々の進捗を追跡できるモニタリング体制を整備します。具体的には、成果指標を可視化するためのダッシュボードやレポートを作成し、関係者がリアルタイムで状況を把握できる仕組みを構築します。こうした体制により、目標達成のためのPDCAサイクルを効果的に回せるようになります。3. 戦略策定|ターゲット市場に対する実行プランを描く営業企画の戦略策定では、ターゲット市場に対する具体的な実行プランを描くことが求められます。まず、ターゲットとなる顧客層や取り扱う商材、効果的な販売チャネルを慎重に選定します。次に、価格設定や販促戦略を立案し、市場のニーズや競合状況に応じた魅力的な提案をするため、営業現場で使われる提案資料やトークスクリプトを整備し、営業担当者が一貫したメッセージで顧客にアプローチできるようサポートします。さらに、自社の差別化ポイント(USP:独自の売り、独自の強み)として、競合他社にはない独自の製品特徴やサービスの強み、顧客にとっての具体的なメリットを明確に打ち出すことが重要です。例えば、コスト削減効果や導入のしやすさ、サポート体制の充実など、顧客に響く独自価値を訴求し、競争優位を確立します。4. 実施計画の作成|具体的なアクションプランに落とし込む戦略が決まったあとは、それを実行に移すための実施計画を作成します。ここでは、スケジュールや責任者、必要な予算を明確に設定し、「誰が・いつまでに・何を行う」かを具体化します。予算面では、営業支援ツールの導入費、トレーニング費用、人件費、インセンティブ原資など、各施策に必要なコストを細かく見積もり、経営側との合意形成を図ることが重要です。あわせて、人員配置や必要なツールの整備など、業務遂行に必要なリソースも最適に配分していきます。そして、営業部門の実行力を高めるため、営業トレーニングや支援ツールの導入といった支援施策を展開し、現場がスムーズに動けるようサポートし、営業コンテストやインセンティブ制度を通じて、営業担当者のモチベーションと成果の最大化を目指します。5. パフォーマンス追跡と評価|PDCAを回し続ける営業企画における最終ステップは、戦略の成果を継続的に追跡と評価を行い、改善につなげることです。まず、受注率やリード転換率などの営業データをモニタリングし、KPIに対する実績を定量的に把握します。そして、顧客満足度調査や商談後アンケートを通じて、定性的なフィードバックも収集していきます。これにより、営業活動の「結果」と「質」の両面から課題を特定できます。こうした分析をもとに、営業部門に対して成果報告を行い、必要に応じて提案資料の見直しや現場支援を行ったり、営業プロセスのどこに改善余地があるかを整理し、新たな施策提案や、戦略自体を見直す主導的な役割も担います。PDCAを回し続けるこのプロセスこそが、営業組織を持続的に成長させるエンジンとなります。※PDCA:Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4ステップを繰り返すサイクル営業企画と似ている他職種との違いここでは、営業企画と混同されやすい職種との違いをわかりやすく整理し、営業企画の特徴を明確にしていきます。経営企画との違い営業企画と経営企画の最大の違いは、営業企画が営業部門に特化しているのに対し、経営企画は企業全体を対象としている点です。経営企画は、企業全体の中長期的な方向性を策定し、事業ポートフォリオの最適化や経営方針の決定など、組織全体に関わる重要な戦略を立案する役割です。経営層に近い立場で、資金調達や大規模な投資判断、組織再編、グループ全体のシナジー創出など、会社の将来を左右する意思決定を支えます。そのため、幅広い業務領域と経営視点が求められ、社内外のさまざまなステークホルダーと連携しながら全社の最適化を追求します。つまり、経営企画が「会社全体の方向性や成長戦略」を描くのに対し、営業企画は「営業組織が現場で実行するための戦略」を具体化・推進する役割といえます。営業との違い営業は「個人の売上を追う」職種であるのに対し、営業企画は「組織全体の成果を設計する」役割を担います。営業は、目の前の顧客に価値を届け、売上という成果を直接生み出すフロントラインの職種です。例えば、営業が個別の案件に集中するのに対し、営業企画は全体の受注率やリード転換率などを分析し、どのプロセスにボトルネックがあるのかを見極め、改善策を打ち出します。現場で得た情報を戦略に変換し、再現性のある営業モデルを築くという点で、両者は役割も視点も大きく異なります。営業成果を最大化する土台を築くのが営業企画の役割です。営業推進との違い営業企画と営業推進の違いは、「戦略の立案と仕組み作りに重点を置く」か、「現場の活動支援と実行フォローに重点を置く」かにあります。営業推進は、営業部門の日々の活動を円滑に進めるためのサポートや調整を主に担当し、営業ツールの配布、営業プロセスの標準化、営業メンバーの進捗管理など、現場の実行力を高める役割が中心です。つまり、営業企画が戦略と仕組みを設計するのに対し、営業推進はそれを現場で確実に実行できるようサポートする立場です。セールスイネーブルメントとの違い営業企画とセールスイネーブルメントの違いは、前者が「営業戦略の立案・設計」を担うのに対し、後者は「営業担当者の実行力強化」に注力する点にあります。セールスイネーブルメントは、営業担当者が立てられた戦略を現場で実行できるように支援する役割で、具体的には、営業トレーニングの企画・実施、営業ツールや提案資料の整備、ナレッジ共有の促進などを行います。つまり、営業企画が描く「何をやるべきか」を、セールスイネーブルメントが「どうやってやるか」をサポートします。両者が連携することで、営業組織は戦略と現場の実行が一体となり、成果の最大化を目指すことができます。マーケティングとの違い営業企画とマーケティングの違いは、前者が「営業組織の戦略設計」に特化するのに対し、後者は「市場全体の需要喚起やブランド構築」を担う点にあります。マーケティングは、広告やSNS、イベントなど多様なチャネルを活用して認知を広げ、ブランド戦略や顧客データ分析を通じて、見込み顧客の獲得・育成を目指します。一方、営業企画は、そうして獲得された見込み顧客を営業が受注につなげやすくするための仕組みや戦略を設計します。つまり、マーケティングが「見込み顧客を増やし育てる役割」なら、営業企画は「営業部門が受注につなげやすい環境を整える役割」といえます。連携することでより高い売上成果につながります。営業企画に向いている人の3つの共通点営業企画は戦略設計から現場支援まで幅広く担うため、求められる資質にも特徴があります。以下の3つの共通点に当てはまる方は、営業企画へのチャレンジを検討してみてください。データや数字に抵抗がない営業企画は、KPI設計や施策の効果検証など、常に数字に基づいた判断が求められます。売上やリード数、受注率といった営業データを分析し、施策の有効性を見極める力が重要です。データや数字を扱うことに抵抗がなく、感覚ではなく定量的な根拠で議論できることは大きな武器になります。また、「営業企画はきつい」と言われる理由の一つに、こうした定量的分析に加え、戦略立案から現場支援まで幅広い業務を担うプレッシャーがあります。適性があるかを見極める上で、「数字と向き合うのが苦ではないか」は重要なポイントです。コミュニケーション・調整が得意営業・マーケティング・経営企画・人事など複数部門と連携・調整を行う機会が非常に多いのが営業企画です。各部署の立場や目的の違いを理解しながら、共通の目標に向けて関係者を巻き込む「調整力」や「対話力」が求められます。特に営業現場と経営層の間に立つことも多く、双方の意見を汲み取ってすり合わせる力が重要になります。調整役として立ち回る場面を前向きに楽しめる人は、円滑に業務を進められるでしょう。変化への柔軟性・適応力がある市場環境や顧客ニーズが常に変化する中で、決まった正解に頼らず、状況に応じて判断しながら自ら進めていく柔軟性と適応力が強く求められます。例えば、想定していた施策が期待通りの効果を生まなかった場合、素早く仮説を見直し、次の一手を打てる人が重宝されます。戦略と現場の間でスピード感を持って判断を求められるプレッシャーがありますが、変化を前向きに捉えられて対応していける人にとっては、大きなやりがいと成長の機会になる仕事です。営業企画で成果を出すために必要な3つのスキル営業企画は、戦略立案から実行支援まで幅広い業務を担います。ここでは、営業企画で成果を出すために特に重要な3つのスキルを紹介します。論理的思考力論理的に物事を捉え、筋道を立てて考える力は、営業企画の軸となるスキルです。例えば売上が伸び悩んでいるとき、「どの指標に異常があるか」「なぜそうなったのか」と因果関係を整理し、仮説を立てて検証していくことが求められます。また、戦略設計においても、課題に対して有効な施策を根拠をもって提案し、関係者を納得させる力が必要です。データに基づいて論理的に施策を構築できる人ほど、実行性の高いプランを描くことができます。データ分析力・洞察力営業企画には、膨大な営業データや顧客情報を読み解き、意味のある示唆を導き出す力が求められます。市場規模の推移や競合の動き、顧客セグメントごとの反応などを分析し、「なぜこの数字になっているのか」「背後にある顧客の行動や心理は何か」といった深い洞察を行います。また、定量的なデータに加え、営業現場の声や商談内容など定性的な情報も含めて総合的に判断する柔軟さも必要です。企画立案力企画立案力は、戦略を具体的な施策として落とし込み、実行に移せるようにする力です。例えば、ターゲット市場へのアプローチ方法や、営業プロセスの改善策、販促施策の設計など、現場で動く仕組みに変換していく役割を担います。そのためには、現場とのすり合わせや過去のデータ、業界トレンドなどを踏まえた多角的な視点が必要です。また、社内の合意形成を得るには、説得力ある説明力と資料設計も欠かせません。営業企画へのキャリアパス営業経験者はもちろん、マーケティングや事業企画など他部門からのキャリアチェンジも多く、多様なバックグラウンドが活かせる職種です。ここでは主なキャリアルートや、活かせる経験について解説します。営業からの異動・転職を目指すのが近道営業企画へのキャリアパスとして、最も現実的で近道となるのが営業職からの異動・転職です。営業企画職に転職している人の出身職種を見ると、最も多いのは「経営企画/事業企画(12.5%)」ですが、次いで「営業企画(8.2%)」「電機メーカーの営業(5.4%)」といった営業職が多くランクインしており、営業職からのキャリアチェンジが王道ルートとなっていることが分かります。多くの企業では、営業企画に営業実務の理解や経験を求めており、現場の課題や営業プロセスに精通していることが評価されやすい傾向にあります。そのため、営業での経験や実績を活かし、段階的にキャリアを築くことが、営業企画を目指す上で最も有効なアプローチです。▶参照元:営業企画とはどんな職種?仕事内容/給料/転職事情を解説【doda職種図鑑】マーケティングや事業企画からの転職も可能営業企画は、マーケティングや事業企画など、他部門からの転職も十分可能な職種です。これらの職種では、データ分析や戦略立案、プロジェクト推進など、営業企画と共通するスキルが多く、業務内容にも親和性があります。特に、市場の捉え方や課題設定、企画構築の経験は強みとして活かせます。ただし、営業プロセスや営業現場の実情を理解していない場合、現実から乖離した企画になってしまうリスクもあるため、営業活動の流れや商談の実態などの実務理解を深めることが必須です。まとめ|営業企画はプレイヤーから“戦略を動かす側”への転換点「このまま現場で数字を追い続けていいのか」「もっと上流で価値を発揮したい」そう感じ始めた方にとって、営業企画は次なるキャリアの選択肢となります。数字を追うプレイヤーから一歩引いた視点で、組織全体を戦略によって動かす営業企画は、あなたが現場で培ってきた強みや経験を次のステージへとつなげる転換点です。求められるスキルは多岐にわたり、営業企画はきついと言われる部分もありますが、営業経験があるからこそ成果も出しやすく、やりがいを感じられることも多いはずです。戦略を描き、現場を支え、組織の成果を導く営業企画というキャリアは、これまでの努力と実績を活かして踏み出す、確かな一歩になるはずです。