会社員として働きながら、副業をきっかけに「個人事業主」として活動する人が増えています。副業収入を事業として申告すれば、経費計上や青色申告による節税など、会社員にはないメリットを得られる一方で、確定申告や帳簿管理といった負担も発生します。「どのくらいの収入や規模から個人事業主として認められるのか」「副業で始めるメリットや注意点は?」「手続きは難しいのか」など、初めての人が疑問に思うポイントを整理しました。本記事では、副業で個人事業主になるための条件や手続き、メリット・デメリット、取り組みやすい仕事の種類をわかりやすく解説します。※ 本記事の内容は、2025年9月時点の法令・制度等に基づいて作成しています。内容の正確性や最新性を保証するものではありません。税制は改正される場合がありますので、実際の申告や手続きを行う際は、必ず国税庁やお住まいの自治体の公式情報をご確認ください。会社員でも副業で個人事業主になれる?会社員であっても、事業性のある活動を継続すれば個人事業主として登録できます。ここでは国税庁の基準を踏まえ、認められるパターンと対象外となるケースを整理します。個人事業主として認められるパターン国税庁は「継続性」「反復性」「事業規模」「営利性」の観点から、事業所得か雑所得かを判断しています。これに基づけば、次のような活動は個人事業主として認められる可能性が高いです。Webライティング、デザイン、プログラミングなど、複数の顧客から継続的に案件を受注している仕入れと販売を繰り返し行うネットショップ運営広告収益や案件受託を伴うブログ・YouTubeなどのコンテンツ配信を定期的に行っているコンサルティングやセミナー講師など、知識・スキルを体系的に提供しているこれらは「営利を目的として反復継続的に行う事業」と判断されやすく、開業届を提出すれば税務上も事業所得として扱われます。▶︎参照:国税庁|No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)個人事業主として認められないケース一方で、国税庁は「規模が小さい」「継続性がない」といった活動は雑所得に区分すると明示しています。以下のようなケースが典型例です。フリマアプリで不用品を一度だけ売却した友人や知人に単発で報酬を得ただけで継続性がない趣味的に収益を得ているが、事業性や規模が伴わないこれらは「営利性・継続性に乏しい」と判断されるため、個人事業主として登録しても事業所得とは認められません。▶︎参照:国税庁|No.1500 雑所得個人事業主と自営業との違い会社員が副業で事業を行う場合、生活基盤は給与収入にあり、副収入として事業を営む点が特徴です。一方、自営業は事業収入を唯一の収入源としています。また、社会保険の取り扱いも異なります。副業の場合は勤務先の健康保険や厚生年金が維持されるため、保険料の追加負担が発生しにくい点が会社員の強みです。どんなときに副業で個人事業主になるとよい? 判断の目安は?副業を続けるうちに、一定の収入や業務量が安定すると「個人事業主として登録すべきかどうか」を考えるタイミングが訪れます。国税庁の定める申告義務や、将来の事業拡大を見据えた判断が基準になります。ここでは代表的な2つの目安を紹介します。年間所得が20万円を超えたとき副業で得た所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。この時点で開業届を提出しておくと、青色申告による控除や赤字の繰越など、税制上のメリットを活用できます。特に本業の給与がある会社員は、副業収入が20万円以下であれば申告不要とされる場合がありますが、超えた瞬間に税務上の取り扱いが変わるため注意が必要です。▶︎参照:国税庁|No.2020 確定申告安定して数百万円の事業所得があるとき副業の収入が数百万円規模に安定してくると、税務上の最適化や社会的信用を得る観点からも個人事業主として登録するメリットが高まります。青色申告で65万円控除を受けられるほか、金融機関からの融資やビジネス契約で「事業者」として扱われやすくなります。規模が大きくなるほど、雑所得扱いではなく事業所得として申告する方が税務署からも妥当と判断されやすくなります。副業で個人事業主になるメリットは?会社員として副業をするだけであれば収入は得られますが、開業届を出して個人事業主になることで初めて享受できるメリットがあります。ここでは、税制面・キャリア面・社会的信用といった観点から代表的な利点を紹介します。独立・起業に向けた実務経験を積める個人事業主として活動すれば、営業、契約、会計処理など事業運営に必要な実務を一通り経験できます。会社員としての副業だけでは得られない「経営者目線」が身につき、将来的に独立や起業を目指す際の大きな足掛かりになります。経費を計上して課税所得を抑えられる個人事業主になると、収入から業務に関連する支出を「経費」として計上できます。例えばパソコン代、通信費、書籍代、打ち合わせにかかった交通費などが対象です。給与所得者には認められない控除が利用できるため、課税所得を抑えて税負担を軽くできます。▶︎参照:国税庁|No.2210 必要経費の知識青色申告で65万円控除などの節税効果を受けられる開業届とあわせて青色申告承認申請書を提出すると、確定申告の際に最大65万円の特別控除を受けられます。さらに家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」や、赤字を3年間繰り越せる制度など、節税につながる制度を幅広く活用できます。▶︎参照:国税庁|No.2072 青色申告特別控除赤字を給与所得と相殺できる(損益通算)副業が赤字になった場合でも、個人事業主であれば本業の給与所得と損益通算できます。例えば事業で30万円の赤字が出た場合、給与所得からその分を差し引いて税金を軽減できます。これは雑所得扱いではできない仕組みであり、事業として認められる大きなメリットです。▶︎参照:国税庁|No.2250 損益通算事業者として社会的信用を得やすい個人事業主として登録すると、契約や融資の場面で「事業者」として扱われます。銀行口座の開設、クレジットカード審査、法人との契約などで有利になることが多く、副業を超えて活動を広げたい人にとって大きな強みになります。副業収入では社会保険料が増えない場合が多い会社員が副業で個人事業主になっても、健康保険や厚生年金は勤務先を通じて加入を続けられます。副業収入は社会保険料の算定対象にならないため、収入が増えても保険料が上がらないケースが多いのが特徴です。[[[CTA_B]]]副業で個人事業主になるデメリットや注意点は?個人事業主として登録すると、収入や信用の面で得られるメリットがある一方で、会社員の副業だけでは発生しない特有の負担やリスクもあります。ここでは、個人事業主ならではの注意点と、その対策を紹介します。確定申告や帳簿管理などの事務負担が増える開業届を出すと、毎年の確定申告や日々の帳簿付けが必須になります。青色申告を選択すれば節税効果は大きいですが、その分仕訳や複式簿記への理解が必要になり、事務作業の負担は避けられません。<対策・対応方法>会計ソフトを活用し、自動仕訳やレシート読取で手間を軽減するクラウド会計に慣れない場合は、税理士にスポット相談して効率的な記帳方法を学ぶ開業初期から事業専用の口座・カードを使い、経費とプライベートを明確に分ける副業収入が原因で失業保険を受給できない場合がある個人事業を営んでいると、雇用保険の「失業の状態」とは見なされず、失業保険を受けられないケースがあります。本業を退職した後のセーフティネットが弱まる点は注意が必要です。<対策・対応方法>退職後すぐに事業を拡大する計画がある場合は、失業保険に頼らず運転資金を準備しておく万一に備えて、貯蓄や小規模企業共済などの制度を利用して生活防衛資金を確保する退職前にハローワークや社労士に相談し、受給可否を確認しておく所得が増えることで税負担が大きくなる事業として利益が安定すると、所得税や住民税が増えます。経費や青色申告での控除があっても、収入規模が大きくなれば最終的な納税額は増えるため、資金繰りを考えて備えておくことが重要です。<対策・対応方法>売上が増えたら、その一部をあらかじめ納税資金として積み立てておく経費にできる範囲(通信費・セミナー費・旅費など)を正しく理解し、漏れなく計上する将来的に安定して数百万円以上の所得が出る場合は、法人化による節税効果も検討する副業で個人事業主になるにはどんな手続きが必要?会社員が副業で個人事業主として活動する場合、ただ収入を得るだけでは不十分です。法律や税務上の扱いを正しくするために、いくつかの手続きが必要になります。ここではステップごとに、具体的にやるべきことと、その理由を整理します。ステップ1. 就業規則を確認し副業が可能かどうかを確認する副業を始める前に、勤務先の就業規則を確認することが第一歩です。会社によっては副業を禁止していたり、事前申請を義務付けていたりする場合があります。勤務先の就業規則を読み、副業禁止や事前申請の有無を確認する必要に応じて人事部門へ申請し、書面で承認を得る会社のルールに反すると懲戒の対象になる可能性があるため、最初に必ず確認することが重要です。ステップ2. 税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出する副業を事業として始めるには、税務署への届け出が必要です。開業届を提出することで、事業を正式に開始したことが公的に認められます。税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する(開業から1か月以内が目安)あわせて「青色申告承認申請書」を提出する(その年の3月15日まで)特に青色申告を選択すれば65万円控除などの大きな節税効果を受けられるため、開業届とセットで準備しておくことが推奨されます。▶︎参照:国税庁|A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続、A1-8 所得税の青色申告承認申請手続ステップ3. 必要に応じて都道府県税事務所へ事業開始申告を行う地域によっては、都道府県税事務所に対して事業開始を知らせる申告が必要です。これを怠ると、後から修正や追徴が必要になることもあります。自治体によっては「事業開始等申告書」の提出が必要所轄の都道府県税事務所や市区町村に確認する住民税や個人事業税の課税対象を把握するための手続きであり、自治体によって義務が異なります。提出を怠ると後から修正や追徴が必要になる可能性があるため注意が必要です。ステップ4. 事業専用の口座やクレジットカードを準備する個人の家計と事業の資金を分けることで、帳簿付けや経費管理がスムーズになります。税務調査時にも説明が容易となり、プライベートとの混在を防ぐことができます。事業専用の銀行口座を開設する必要に応じて事業用クレジットカードを作成するステップ5. 事業内容に応じた許認可を取得する事業内容によっては、法律で定められた許可がなければ営業できません。必要な許可を取らずに事業を行うと行政処分や罰則の対象となるため、事業開始前に必ず確認しておくことが欠かせません。飲食業なら保健所の営業許可を申請する中古品販売なら古物商許可を警察署で取得するその他、業種ごとに必要な許可を事前に確認する副業の税金や社会保険はどうなる?会社員が副業で個人事業主になると、給与だけのときとは違い、確定申告や住民税の申告、社会保険やインボイス制度といったルールを押さえる必要があります。特に確定申告と住民税は、多くの人が迷いやすいポイントです。【確定申告】年間20万円を超える副収入は申告が必要給与所得以外の所得が年間20万円を超えた場合、確定申告が必要です。副業の収入から必要経費を差し引いた「所得」で判定される点に注意しましょう。20万円以下であれば申告義務はありませんが、住民税の申告は必要です。<対応の流れ・ポイント>所得が20万円を超えるかを計算する超えた場合は翌年2月16日〜3月15日の間に確定申告する青色申告を選べば65万円控除などの節税メリットを受けられる【住民税】副業収入分は申告時に納付方法を選べる副業で得た収入には住民税が課され、原則として給与所得と合算されて会社を通じて納める「特別徴収」が行われます。確定申告の際に「普通徴収(自分で納付)」を選ぶと、会社経由ではなく個人で納付する形になる場合もあります。特別徴収:会社の給与と合算されて天引きされる普通徴収:確定申告時に選択し、自分で納付する方式(自治体により認められない場合もある)いずれも正しい制度上の選択肢であり、どちらが良いかは勤務先や自治体の運用に応じて確認する必要があります。【社会保険】会社員は基本的に負担が増えない本業で厚生年金や健康保険に加入している場合、副業で個人事業を行っても社会保険料は追加でかかりません。ただし、副業の収入が本業を上回るなど、実質的に「主たる収入」と判断されると、国民健康保険や国民年金への加入が必要となる可能性があります。【インボイス制度】売上や取引先によっては登録が必要売上が年間1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となりインボイス発行が必須になります。売上が少なく免税事業者のままでも、法人取引が多い場合は取引先からインボイス登録を求められるケースがあります。規模や相手先に応じて早めに検討すると安心です。<対応の目安>売上が1,000万円を超えたら登録必須少額でも法人取引が中心なら登録を検討する副業で個人事業主として取り組みやすい仕事は?個人事業主として認められるには、継続性・反復性・事業規模・営利性がポイントです。そのうえで必要なスキルごとに整理すると、自分に合った仕事を選びやすくなります。専門スキルを活かす仕事:コンサルティング・研修講師実務経験や専門知識を生かせる仕事は信頼性が高く、少ない時間でも高単価を得やすいためおすすめです。代表例としてはコンサルティングやアドバイザリー、研修講師やオンラインスクールの運営があります。向いている人:実務で専門性を培った人、ビジネスの課題解決に関わりたい人報酬目安:スポット相談は1時間5,000円〜2万円、研修講師は1回1〜5万円程度▶︎あわせて読みたい:副業コンサルタントの始め方|特徴や選び方からおすすめプラットフォームまで徹底解説[[[CTA_A]]]クリエイティブ力を活かす仕事:Web制作・写真・動画制作制作物を納品する仕事は依頼が途切れにくく、スキルを磨くことで安定収入につながるため取り組みやすいです。代表例はWeb制作(デザイン、開発、ライティング)、写真や動画、音楽の制作などです。向いている人:表現力や技術力を活かしたい人、ポートフォリオを積み上げたい人報酬目安:Web制作は1案件数万円〜数十万円、ライティングは1文字1〜5円程度、映像制作は1本数万円〜▶︎あわせて読みたい:週1日からできる副業おすすめ20選|専門スキル・在宅・バイト・地域別に解説発信力を活かす仕事:ブログ運営・SNS配信情報発信を継続して収益化する仕事は、軌道に乗れば資産的に収益が積み上がるため長期的に有効です。ブログやアフィリエイト、YouTubeやSNSでのコンテンツ配信が代表的です。向いている人:継続的に発信できる人、テーマに一貫性を持って取り組める人報酬目安:初期は数千円〜、中長期で月数十万円以上に成長可能商取引や実務支援に取り組む仕事:物販・IT導入支援物販や業務代行は取引の反復性が明確で、事業性を示しやすい点から個人事業主に適しています。ネット物販・EC販売や記帳代行、RPA導入支援などのITサポートが代表例です。向いている人:仕組みづくりや事務処理が得意な人、安定した収益を積み上げたい人報酬目安:ネット物販は月数万円〜数十万円、業務代行は月額契約で数万円〜よくある質問Q&A副業で個人事業主になるにあたって、よくある質問にまとめて回答します。副業を始めるときは何から取りかかればいい?副業を始める際は、まず会社の就業規則を確認し、副業が許可されているかどうかを確かめることが必要です。そのうえで、自分のスキルや時間に合った仕事を選び、無理なく続けられる体制を整えましょう。仕事を探す方法としては、クラウドソーシングや専門人材マッチングサービスの活用が代表的です。▶︎あわせて読みたい:副業の始め方|注意点・おすすめ副業・よくある悩みまで初心者向けに解説副業の所得が20万円以下なら確定申告は不要?所得税については、副業の年間所得が20万円以下であれば申告を省略できます。ただし、住民税は必ず申告が必要です。申告を忘れると未納扱いになり延滞金が発生するため注意が必要です。▶︎あわせて読みたい:副業の税金はいくらから? 20万円ルール・計算・申告・節税対策を徹底解説青色申告を利用できる条件と申請期限は?青色申告は、開業届を出し、正しい帳簿付けを行える人であれば利用可能です。申請期限は事業開始から2か月以内とされており、この期間を過ぎるとその年は白色申告しかできません。青色申告を選べば65万円の控除や損失繰越といった大きなメリットが得られます。▶︎あわせて読みたい:副業の確定申告はいくらから必要? 手続きの流れ・節税のコツまで徹底解説【2025年版】事業所得と雑所得の違いは?事業と認められないケースは?継続して営利を目的に取引を行うと「事業所得」となり、節税上の優遇措置を受けられます。一方で、不用品販売や単発的な謝礼収入のように規模や継続性がないものは「雑所得」とされます。雑所得になると青色申告や損益通算はできません。個人事業を続けながら退職した場合、失業給付は受けられる?原則として、個人事業を続けていると失業給付は受けられません。給付を受けるには「就職の意思と能力がある」ことが条件であり、事業を継続している場合はその要件を満たさないと判断されるためです。どうしても受給を検討する場合は、廃業や休業の手続きを行い、ハローワークに確認する必要があります。どのタイミングで法人化を検討するとよい?副業の収入が安定して数百万円を超えるようになった段階で、法人化を検討する余地が出てきます。法人化すれば節税や社会的信用の向上といったメリットがありますが、設立・維持コストや社会保険料の負担も増えます。個人事業を続ける場合との比較を行い、自分の状況に照らして判断することが重要です。まとめ|副業で個人事業主になりキャリアと収入の可能性を広げよう会社員が個人事業主として副業を始めることは、収入を増やすだけでなく、自分のスキルを社外で試すきっかけになります。開業届や確定申告などの手続きは必要ですが、その経験が仕事やお金の管理力を高めます。継続して取り組めば独立や法人化といった将来の選択肢も見えてきます。まずは就業規則を確認し、無理のない範囲から始めてみてください。