仕事と家庭を両立するために、どんな役割・責任・業務をやめた/減らしましたか?管理事務所の事務系の部署。課長に対して直属の部下は1人。あとは派遣社員やパートナー会社の社員と、できる業務が限られている。しかも私自身は遠距離介護、障害児の親とダブルケアラー状態。しかも部下は新入社員。長時間の残業はできない。そんな中で喫緊の課題は部下を猛スピードで成長させなければならない。そこで私がとったのは、着任早々自分で手を動かさせ、書類を作らせる。システムにも触らせる。当然のことながら初体験なのでわからない。最初は自分がやるしかない。当分の間の残業は仕方ないから仕事の足かせになっている介護・福祉・教育の関係者には急な呼び出しや抜き打ちの電話をさせないように交渉しつつ(と同時に部下や横並びの役職者には自分が介護・育児のハンデを抱えていることを共有)、部下の成長具合をみて、書類作成やルーティーンでできる交渉は一人でこなせるように次々と任せるようにし、最後はマネジメントや重要な交渉事以外の全部を任せるようにした。他事務所の新入社員どうしの横のつながりが深いことも助けになった。そうした役割や業務を抱え続けていたことで、仕事の進め方や意思決定にはどのような無理や非効率が生じていましたか?上記にもあげたように、私自身、遠距離介護と障害者育児のダブルケアラーであったことから、長時間残業が重なることによる帰結として、介護の進め方や息子の教育や支援の方針の決定が進まないなど、介護・福祉・教育関係者には負担を相当押し付けることになったと思う。仕事面においても、深夜にわたる長時間残業、体力的な疲弊、健康への影響、顧客や関係部署へのレスポンス遅滞、職場環境の悪化(ストレスからくるやり場のない怒りの伝播)として発現されてきた。それは家庭にも深刻な影響として現れた。具体的には育児の問題解決の先送りやうやむや化、子供の成長阻害、教育・福祉関係者の業務停滞。介護については介護関係者とのカンファレンスの無期限先延ばし、方針決定の先送り、介護事業者の負担となって表れた。役割を手放す・任せる判断をする際に、最後まで迷った点や失うと感じたメリットは何でしたか?私自身、迷いはあったし、本来なら課長である私が時間や家庭を犠牲にしてでも行わなければならないのではないか、という葛藤があった。実際に上司からも「何とかならないのか」という批判を受けた。しかしながら、これ以上家庭を犠牲にするわけにはいかず、部下にとっては苦しいかもしれないが、部下が急速に成長していくにはとにかく自分の手を動かし、悩み、苦しむことが早道であることは自分の新入社員時代の経験上認知していたし、何よりも部下は独身でまだ自由に自分の時間をコントロールできる。時間外協議の上限は厳守しつつ、あえて自主性のもとで業務を遂行するよう見守った。その結果、自ら顧客(協議相手方を含む)や上部機関に対する書類や資料の作成を入社してから半年たたずに完璧な形に仕上げることができるようになり、顧客への対応も非の打ちどころがないぐらいに完璧なものに仕上がってきた。やめた/減らしたことで、今はどんな役割や判断に集中できていますか?今は退職し、別の業務(自営業)になっているので、過去の話にはなってしまいますが、当時は課長にしかできない業務。具体的には損害賠償対応の中でこちらに非がある案件や債権管理の中で難易度の高いもの、顧客クレーム対応、警察や消防等といった高速道路の安全対策に重要な影響を与える機関との交渉ごと、高速道路の交通に影響を与える事象に対するローカル独自の対応方針の策定および上部機関への提案、交通管理隊の業績評価およびマネジメント、契約書(対他インフラ管理者との協議書を含む)のリーガルチェック、部下が作成した損害賠償(前職のケースでは特別法で規定されているので「原因者負担金」としている)の請求内容の精査、事例研究会への積極的な参加による業務スキルの向上、他部署との折衝、役割分担の決定、上部機関や事務所トップへの重要事項説明に集中することができました。もし役割や責任を抱え込みすぎていると感じる人がいるとしたら、今すぐ1週間で見直せる具体的なポイントは何だと思いますか?もし、社内において、部署ごとに役割分担に関する内部規程がありましたら、今一度読み返してください。そこには各部署で行うべき役割分担が明記されているはずです。ひょっとして本来は他部署で行うべき仕事を自部署に押し付けられていませんか?本来はその部署がやるべきなのに、自分の部署は手が回らないから、どうせ(自部署と比較したら)暇だろうから、専門知識がありそうだから、丸投げしちゃえ、という心理はどこの会社にもあるかも知れません。私自身も弁護士法第72条(非弁行為)にあたるものを他部署から依頼されて断ったことがありました。そのような行為がありましたら、すぐに該当の部署の長に役割分担に関する規定を提示しながら事実を伝えてください。改善されない場合は組織・人事の担当部署、そして事業所の長に伝えてください。まずは規程の確認、事実確認、該当部署への伝達、改善されなければ組織・人事部署への通報もしくは事業所の長への通報です。本記事は、NewsPicks Expertに登録する各業界のエキスパートが、自身の経験から「やめたこと・減らしたこと」を言語化する寄稿企画「#引き算の仕事術」の一編です。思考や意思決定、専門性、マネジメントといった多様な視点からの寄稿は、以下の一覧ページよりご覧いただけます。https://newspicks.expert/media/category/subtraction-workstyleこうした経験の言語化は、日々の実務の中で積み重ねられてきた知見そのものでもあります。本記事を通じて生まれた視点や問いが、これからの働き方やキャリアを見つめ直すきっかけとなり、それぞれの現場での新たな選択へとつながっていくことを願っています。実務の中で培われた経験は、言葉にして共有されることで、企業の中で意思決定を担う人を支える知見へと変わります。こうした知見が生まれる場についても、続けてご紹介します。