楽しく働き続けるために、どんな役割・責任・業務をやめた/減らしましたか?楽しく働き続けるために、作業間調整業務に関与する時間を減らしました。現場監督時代、鉄筋、とび土工、大工、左官・・・業種の異なる職人たちが現場で同時並行して作業する建設現場では、何かとイレギュラーが発生し、一般的には現場監督がそういった異業種間の各種調整業務を担うことが多い。例えば、いつどのエリアでどの会社が作業するから、各社そのために資材の移動や作業日の調整をする、といった業務内容です。しかし、この調整業務に時間がとられることで、現場監督が日中にデスクワークをする時間が取れずに、やむなく現場作業が終わる17時以降、残業時間を使って図面作成や計画書、施工管理記録などのデスクワークを行っているケースが建設業界では常態化していて、自分も漏れなくその一人でした。そうした役割や業務を抱え続けていたことで、仕事の進め方や意思決定にはどのような無理や非効率が生じていましたか?翌日以降の作業間調整業務をスムーズに行うためにデスクワークをしているにも関わらず、それが体力も集中力もない残業時間になってしまうことで、結果的に精度の低い準備となってしまい、翌日以降の調整もうまくつかず、余計な業務が増えてしまうことで、また次の日も残業時間でしかデスクワークの時間がとれないという悪循環が生じていました。10階建てのオフィスビル現場を担当していたとき、5~6階の工事を進めるための調整で、本来は鉄筋、型枠、設備工事など、関連する全ての職種について工程や施工性を考慮すべきところ、疲労と眠気でコミュニケーションの多い特定の業者についてしか検討できておらず、当日になって複数の業者が作業できずに手戻りになり業者間で喧嘩となる事態を発生させてしまったことがあります。役割を手放す・任せる判断をする際に、最後まで迷った点や失うと感じたメリットは何でしたか?とはいえ、現場監督にとって「業者任せ」という言葉は恥であると考えていたため、調整業務についても自分が全てを主導して関わり、全ての意思決定に関わっていないといけないという思いが常にありました。自分が関わっていなくてもスムーズに進むならば現場監督は必要ない=自分が主導しなければ自分は必要とされなくなるという恐怖感があったのかもしれません。また、自分でつくることが建設業の喜びとも考えていたので、調整業務をスムーズに果たせたときに感じていたそういった達成感を失うことも怖かったのだと感じています。任せたつもりでも気づけば現場に出てしまう、必要以上に現場に張り付いてしまって結局デスクワークは残業時間になる、そんな楽しくない日々が続きました。やめた/減らしたことで、今はどんな役割や判断に集中できていますか?全ての調整業務や意思決定に自ら主導して関与することをやめたことで、日中にデスクワークの時間が確保できるため残業時間が減りました。体力も集中力も高い時間帯に計画をすることで、作業間調整の精度も高まり、結果的に生産性が向上していきました。社内基準とされていた生産性の指標を1.5倍上回り、通常は3人配属となるプロジェクトを2人でもほとんど残業なく担当できるようになりました。今は「プロジェクトに関わる全員が同じ方向を目指して自ら主体的に他者とコミュニケーションを図る」その環境づくりに集中できています。現場で働く職人にとって、必要だったのは「現場監督が全てを決めること」ではなく、施主により良い成果品を提供するために「このプロジェクトで目指す方向と作業条件」を明確にすることだと気づいたからです。これはまさに現場を取り仕切るリーダーにしか果たせない役割であって、「自分が全部やろう」とすることで本来果たすべき役割をないがしろにしていたのです。それ以来、自分にしかできない役割に集中することを意識しています。もし役割や責任を抱え込みすぎていると感じる人がいるとしたら、今すぐ1週間で見直せる具体的なポイントは何だと思いますか?もし今、役割や責任を抱え込みすぎていると感じる人がいるなら、まずは1週間のタイムスケジュールを整理してみてほしいと思います。その中で、自分が主体的にできたことの時間と、そうでない時間を比べる。仕事に関連することでもいいし、プライベートなことでも構いません。例えば、晩御飯の時間さえ業務に追われて、本当は行きたいところがあったのに行けなかった、といったようなことでも構いません。それができたら次の1週間で主体的にやりたいことをする時間を増やす。まずは週に1時間でもいいと思います。それを決めたら、例え業務が中途半端になったとしても自らの人生として主体的な時間を優先する。そこで万が一仕事上の失敗をしてしまって怒られたりしても、そんなに大したことにならないケースの方が多い。心配事の9割は起こらないとも言われます。少しずつ心の余裕が出てくれば、自然と仕事のアイデアも浮かんできます。本記事は、NewsPicks Expertに登録する各業界のエキスパートが、自身の経験から「やめたこと・減らしたこと」を言語化する寄稿企画「#引き算の仕事術」の一編です。思考や意思決定、専門性、マネジメントといった多様な視点からの寄稿は、以下の一覧ページよりご覧いただけます。https://newspicks.expert/media/category/subtraction-workstyleこうした経験の言語化は、日々の実務の中で積み重ねられてきた知見そのものでもあります。本記事を通じて生まれた視点や問いが、これからの働き方やキャリアを見つめ直すきっかけとなり、それぞれの現場での新たな選択へとつながっていくことを願っています。実務の中で培われた経験は、言葉にして共有されることで、企業の中で意思決定を担う人を支える知見へと変わります。こうした知見が生まれる場についても、続けてご紹介します。