オプティマイゼーション思考としての引き算と足し算 - T.T / #引き算の仕事術

公開日: 2026-02-24

「#引き算の仕事術」とは、仕事やキャリアの中で「やめたこと・減らしたこと」という選択を、各業界で実務に向き合うNewsPicks Expertのエキスパートが言語化し共有する寄稿企画です。

思考の癖や前提、日々触れる情報を見直すことは、視点の偏りや意思決定の歪みを整え、無意識のバイアスやメンタルモデルを書き換えながら問いの質を変えていきます。

本記事では、考え方・情報・前提をどのように手放してきたのか、その葛藤と変化、そして今すぐ見直せる具体的なヒントまでを、不動産関連業 代表取締役社長のT.T氏の経験からたどります。

思考の前提を整えることで、より本質的な問いに向き合う視点が得られます。

EXPERT

「思考の純度」を高め続けるために、どんな考え方・情報源・習慣をやめた/減らしましたか?

敢えて家族から離れて、隣県間での単身赴任を断行することによって、通勤時間を6分の1(片道2時間から20分)に短縮することにしました。

その結果として、

①仕事に入る前に「どういう1日にするか(課題、目標の確認作業)」、仕事が終わった後に「どういう1日だったか(反芻、反省、明日に向けての軌道修正の実施)」について思考を巡らす場所と空間が、公共交通機関の中から個室に置き換わり、思考の質や集中力が向上しました。

②通勤手段が、公共交通機関から自転車に置き換わり、有酸素運動が体内のみならず脳内にもたらすポジティブな側面(創造性の向上、記憶力の向上、課題解決能力の向上)が加わりました。

③アルコール摂取をした状態での自転車運転は、道路交通法違反になりますので、仕事帰りにお店に立ち寄る類の飲酒が、帰宅後のノンアルまたは微量のアルコール摂取に置き換わり、このことを代表取締役社長として健康体を維持することの責務として意識するようになりました。

それを続けていたことで、視点の偏りや意思決定の歪みはどのように生まれていましたか?

SNSなどを介してあらゆる情報があふれている現代にあって、振舞いの先端や、教養の最前線のようなものについて、多忙で時間が無いことを言い訳にして、見境いなく追い始めることは、一見すると世の中にありふれた当たり前の態度のようですが、躓きの始まりのように思います。

でも、私自身の実体験として、傷が浅い程度に躓きを体感すること自体は、必要とも感じます。この文脈においての「見境い」とは、それをすることは自分に向いているかどうか、自分のためになるかどうか、自分にとって大切な人(お客様、友人、家族など)や世の中のためになるかどうか、を知ることです。「見境い」とは別に「見極め」もあります。何が自分にフィットして何がフィットしないかを見極めるには、これも実体験ですが、ある程度の投資(お金と時間を費やして、試行錯誤してみること)も必要です。

例えば、書店で「世界のエリートが実践する教養としてのワイン」といった類の本を見つけた時にどう感じてどういう行動に走るかを想像してみると分かり易いと思います。

やめる・減らす判断をする際に、最後まで手放しづらかった考え方や立場、失うと感じたメリットは何でしたか?

ビジネスを一人で成し遂げることはできませんので、固有の人的ネットワークに継続的・反復的に関わりつづけることのできる場や機会を備えておくことは必要であり、あらゆる情報発信と情報収集の基盤でもあります。単に、ビジネス上のヒントやきっかけになるような情報交換のみならず、「敢えて耳の痛い話を入れてくれる人」の存在や、そのような人と巡り合える機会は本当に貴重です。

しかしながら、齢を重ねるにつれて、関わる人やネットワークは自ずと増えていきますし、その一方で内面や嗜好性の変化がありますので、全ての人間関係や集団への帰属を維持することは難しくなり、自然な形または意識的な疎遠や断捨離が否が応でも生じます。無理やり維持しようとすると、そこに投じる時間とコストは膨大となりますから、現実的ではありません。

手放したことで、問いの立て方や物事の見え方、行動や成果はどのように変わりましたか?

手放すことを試行錯誤して繰り返した結果として、手放すという行為は、単なる目先の打算や損得勘定ではなく、クリエイティブな営みである、という境地に至りました。

そして、手放すことの意味については、①リターンの見込めないものを減らす、②手放したことにより生じる余白を他のより有益なもので充足する、③充足どころか、余白を充足する以上のプラスすらも生じ得る、という3つの意味があることにも気づきました。

ここに気づけますと、手放すことの抵抗感が和らぎ、大局観が養われて、人生のあらゆるシーンで、達観した決断力や判断力が研ぎ澄まされます。私生活上の判断であっても、ビジネス上の判断であっても、これは変わりません。

もし今、視野や問いが狭まっていると感じる人がいるとしたら、今すぐ1週間で見直せる具体的なポイントは何だと思いますか?

私は、日本で有数のコーチングスクールにおける認定コーチ有資格者ですが、そこで学んだスキルを活用することで、視野が狭まっている人が、冷静な自分を取り戻して、知らず知らずのうちに自らの視野が狭まっていたことに自ら気づくことができると考えております。

例えば、その人が何かに取り組んでいるとき、それは将来到達すべき目標(いつまでに何をするか)の設定がまずあって、そこからのバックキャスティングで、今の状態があるはずなのです。視野が狭くなっているときには、目標を見失っているケースがありますので、目標に立ち返ってみることは有効です。

10年後の「ありたい自分」を創造して登場させて、10年後の自分から見た現在の自分の姿を見つめてみるとよいでしょう。


本記事は、NewsPicks Expertに登録する各業界のエキスパートが、自身の経験から「やめたこと・減らしたこと」を言語化する寄稿企画「#引き算の仕事術」の一編です。

思考や意思決定、専門性、マネジメントといった多様な視点からの寄稿は、以下の一覧ページよりご覧いただけます。
https://newspicks.expert/media/category/subtraction-workstyle

こうした経験の言語化は、日々の実務の中で積み重ねられてきた知見そのものでもあります。本記事を通じて生まれた視点や問いが、これからの働き方やキャリアを見つめ直すきっかけとなり、それぞれの現場での新たな選択へとつながっていくことを願っています。

実務の中で培われた経験は、言葉にして共有されることで、企業の中で意思決定を担う人を支える知見へと変わります。こうした知見が生まれる場についても、続けてご紹介します。

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