組織を成長させるために、どんな考え方・情報源・習慣をやめた/減らしましたか?結論: 私は、「最新のデジタルツールを導入すれば現場の課題は解決する」という幻想と、特定の業務だけを切り取って改善しようとする「部分最適」の思考をすっぱりと手放しました。理由・背景: 私たちアプリバンクは建設業に特化した経営コンサルティングを行っています。慢性的な人手不足や高齢化、そして「2024年問題」に直面する建設業界では、今まさに「DX化」が声高に叫ばれています。 私自身も以前は、「まずはこのシステムを導入して、この業務を効率化しましょう」という、ツールありきの部分最適な提案に傾倒しがちでした。しかし、ヘルメットを被り、現場の泥臭い実態に触れれば触れるほど、一つの残酷な真実に辿り着きました。 建設業が抱える課題は、決して単独では存在していません。経営戦略、現場のオペレーション、財務、人材、そして情報システム。これらヒト・モノ・カネ・情報の「業務連鎖」が複雑に絡み合っているのに、各部門がタコツボ化し、至る所で「断絶」を起こしているのです。アプリケーション、データ、そして人間関係が断絶している土壌に、いくら最新のツールを植え付けても花は咲きません。この「切り離して考える」思考の癖をやめることが、私の「引き算」の第一歩でした。それを続けていたことで、視点の偏りや意思決定の歪みはどのように生まれていましたか?結論: ツールやデータといった「目に見える解決策」ばかりに視点が偏り、現場の「声なき悲鳴」や、組織深層にある人間関係の「断絶」を見落とすという、コンサルタントとして致命的な意思決定の歪みが生じていました。理由・背景: 部分最適の思考を続けていた頃は、経営陣に対して「このツールを入れればこれだけ工数が削減できます」とプレゼンし、すぐに賛同を得られていました。しかし、企業は有機体です。実際にシステムが現場に降りてくると、現場の職人や施工管理者からは「入力の手間が増えた」「現場のやり方に合わない」と猛反発を受けます。 ツールを導入することが目的化してしまい、「なぜこの会社は部門間でデータが共有されないのか」「なぜ若手が定着せず、ベテランとの間に深い溝があるのか」といった、成長を阻害している「本当の病巣」から目を背けてしまっていたのです。表面的な課題解決で現場を「わかった気」になることは、企業が本来持つ強みを殺してしまう最大の罠でした。やめる・減らす判断をする際に、最後まで手放しづらかった考え方や立場、失うと感じたメリットは何でしたか?結論: 最後まで手放しづらかったのは、コンサルタントとしての「分かりやすくパッケージ化されたIT提案」という、見栄えの良さと効率性です。理由・背景: 経営課題に対して「このシステムでDX化しましょう」という提案は、非常にキャッチーで、クライアントに「何かが変わる」という手っ取り早い期待感を抱かせやすいものです。また、支援する側にとっても、オフィスにいながら効率よく案件を回せるというメリットがありました。このスマートな手軽さを手放し、企業全体を一つのシステムとして捉え、分断された要素を有機的に連携させる「統合最適化」のアプローチに切り替えることは、非常に勇気がいりました。なぜならそれは、見栄えの良い提案書を捨てるだけでなく、お客様の組織の深部に入り込み、経営トップから現場の若手までと「共に考え、共に悩み、共に汗をかく」という、時間も労力もかかる泥臭い伴走者へと、自らの立場を180度変えることを意味していたからです。手放したことで、問いの立て方や物事の見え方、行動や成果はどのように変わりましたか?結論: 「どうすればこの業務を効率化できるか?」という表面的な問いから、「アプリケーション、データ、人間関係の断絶をどう解消し、企業全体を『統合最適化』できるか?」という本質的な問いへと変わりました。理由・背景: 部分最適を手放したことで、私の行動は一変しました。誰かのフィルターを通った「加工情報」ではなく、徹底した三現主義(現地・現物・現実)に基づき、現場の「源流情報(一次情報)」から事実(ファクト)を拾い集めるようになったのです。現場の職人の手の動きや、他部署への不満を口にする声のトーンを観察することで、「システムが使いにくい」という不満の裏には、実は「不公平な評価制度への不信感」や「前工程とのコミュニケーションの断絶」が隠れていることに気づけるようになりました。これにより、最新システムを導入する際も、単にツールを入れるだけでなく、それが経営理念とどう繋がり、現場の評価制度や人材育成にどう影響を与えるかまでをデザインする「統合最適化」の提案が可能になりました。結果として、人が定着し、生産性が劇的に向上するという、クライアントの持続可能な成長に直結するようになったのです。もし今、視野や問いが狭まっていると感じる人がいるとしたら、今すぐ1週間で見直せる具体的なポイントは何だと思いますか?結論: 目の前の課題を「単独の問題」として捉える思考を1週間だけ引き算し、パソコンの画面から離れ、現場の「つなぎ目(断絶)」を直接観察しにいくことです。理由・背景: 視野が狭まっている時、私たちは無意識のうちに「自分の専門領域」だけで手っ取り早く問題を解決しようとしてしまいます。「ITで解決しよう」「人事制度を変えよう」と考える前に、その「部分最適で解決できるという前提」を引き算してください。まずは現場に赴き、システムと現場のオペレーションの間にギャップはないか、前工程から後工程へデータは正しく引き継がれているか、部門間で人間関係の壁(断絶)は起きていないか、ありのままの「生の事実」を観察するのです。たった1週間でも、組織を一つの有機体として捉え、加工される前の「源流情報」に触れ続けるだけで、綺麗にまとめられた報告書からは絶対に見えてこない「本当のボトルネック」に気づくはずです。現場の断絶に気づくことこそが、企業全体の強みを引き出す「統合最適化」への第一歩だと確信しています。本記事は、NewsPicks Expertに登録する各業界のエキスパートが、自身の経験から「やめたこと・減らしたこと」を言語化する寄稿企画「#引き算の仕事術」の一編です。思考や意思決定、専門性、マネジメントといった多様な視点からの寄稿は、以下の一覧ページよりご覧いただけます。https://newspicks.expert/media/category/subtraction-workstyleこうした経験の言語化は、日々の実務の中で積み重ねられてきた知見そのものでもあります。本記事を通じて生まれた視点や問いが、これからの働き方やキャリアを見つめ直すきっかけとなり、それぞれの現場での新たな選択へとつながっていくことを願っています。実務の中で培われた経験は、言葉にして共有されることで、企業の中で意思決定を担う人を支える知見へと変わります。こうした知見が生まれる場についても、続けてご紹介します。