2024-12-18

「#エキスパートアドベントカレンダー2024」とは、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。
今回は、大手小売 取締役のK・K氏による記事をお届けします。
K・K
大手小売 取締役
小売業界に従事して25年になります。キャリアスタートはコンビニの店長からとなり「THE現場からのたたき上げ」です。
小売業界の生産性向上にはITの力を最大限活用することが必要であるという考えから、営業からIT領域まで守備範囲を広げてきました。
<未来の小売について考えないといけないこと>
人口減少・少子高齢化による、マーケットサイズの縮小
働き手不足による、人材コストの増大
低い収益性からの、平均給与の低位安定
必要に迫られるIT投資だが、最適解が見つからず、ITベンダー・PFの餌食に
日本の小売業を取り巻くマクロ環境からは、厳しい未来が見えてくる。
人口が減少し、高齢化が加速すると、モノを消費する力が衰えてくる。「ほしいものがない」「たくさん食べられない」「年金生活が不安なので必要最低限のモノしか買わない」などが原因となる。
加えて人口減少は、たくさんの働き手で支えられている小売業にとっては働き手不足に直結する。
労働集約型産業である小売業では、買い物決済時のレジ業務、運ばれてきた商品を売場に陳列する業務、賞味期限切れや売れ残り防止の値下げ作業、日々の商品売上金額と現金残高をカウントし照合する作業など、大半がたくさんの人の働き力で支えられている。
働き手が減少すると、現在のオペレーションが破綻する恐れが出る。人手不足を防止するには、他企業業界から働き手を奪取する必要が出てくるため、時給競争につながる。コストが増える。ただでさえ小売業界は低収益性である。営業利益率3%が出ると超優秀企業。ちょっとしたミスで利益が吹っ飛ぶ収益構造にも拘らず、人口減少という不可避の未来から考えると収益性の明るい未来は見えずらい。
そうなってくると、一般的に言われているアプローチが「デジタル化」「DX」となってくる。デジタルの力(IoT・AI・ロボットなど)を活用し、人の手による業務を減らすことで、生産性を高めていこう、という動き。
方向性は正しいが、実務・実益が伴っていない。「IT化したい」「DXしたい」と経営が掛け声を出すが、実務者レベルはITリテラシーが高いわけでもないので、結局のところ付き合いのあるITベンダーに相談、ということになる。
大手ITベンダーには、元小売り出身者の営業マンがいるので、小売り企業の悩みを解決する提案、しかも痒い所に手が届く提案がやってくる。費用もサブスク型支出が多いため、一次的な支出も抑えられるケースがある。これが中長期的にじりじりと首を絞めてくる。今の業務を1とした場合、1.4ぐらいのオーバースペックな提案が多い(MoreBetterの提案)。導入したが、利用しない機能があるモノが出来上がる。
海外のプラットフォームは更に巧妙。クラウド利用料などの利用料金がプラットフォーム企業の一方的な通告で値上げされてしまう。しかも不意打ちであったり継続的に値上がり続ける。
IT化によって業務効率を上げるつもりが、気がつくとIT企業・ITコンサル・プラットフォーム企業への上納金を支払う仕組みに組み込まれてしまう。
IT予算は売上比1%~2%が一般的。売上1000億円の企業で10億~20億円になる。仮に10億円とした場合だが、約半分はこのような昔に投資した経費の支払いに回すことになる(保守・運用費用)。
生産性を改善するための攻めの投資に結局のところ予算が十分に回らない構造となっている。
小売現場で困っていることを単に解決するIT化ではなく、業務そのものの必要性や手法を見直した上でのIT化(これをDXと呼んでいるが……)が、我々小売業界の経営陣に求められる。
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