2024-12-07

「#エキスパートアドベントカレンダー2024」とは、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。
今回は、クレジットカード会社 BtoBマーケティング推進責任者のK・S氏による記事をお届けします。
K・S
クレジットカード会社 BtoBマーケティング推進責任者
BtoBのセールス&マーケに一貫して従事。
自動車業界でCS営業を経験後、IT業界でソリューション営業としてAI・データ・5Gを活用した新事業創出プロジェクトを担当。その後マーケティング部門でトリプルメディア、デジタルマーケティング基盤を担当。
現在はクレジットカード会社でBtoBマーケティングによる事業推進に従事。アジャイル手法のプロジェクトマネジメントでビジネスキャッシュレスを推進中。
趣味はプロボノ。中高生向け金融経済教育やNPO向けデジタル活用コンサルなど。
私はBtoBで15年営業をやってからマーケティングにキャリア転向しました。マーケの経験が増え、社外のいろんな人と話をするにつれてBtoBマーケティングのモヤモヤが大きくなってきました。
マーケティング部の立場ってなんか弱い?
リード(見込客)を集めるだけの仕事って存在するの?
名刺を集めるだけの営業は存在しないけど・・
マーケティング部は広告宣伝をするところと思っている?
部外だけでなく部内の当事者も・・
マーケティング部で売上を見ている人って少ない?
営業もマーケも会社において利益を創る役割なのに・・
2024年はそんなモヤモヤの整理を試みた1年でした。導き出されたことは以下です。
BtoB営業でやっていた事はマーケティングそのもの、マーケティングという名がついていないだけだった
マーケティング”部”が担っている役割とマーケティングという言葉の範囲は別物
マーケティングの考え方をインストールすれば、お客様のためにすべき事が見える、広がる、楽しくなる
BtoB事業における営業部とマーケティング部の違いは①対象とするお客様の数と②1人で担うマーケの範囲だと考えています。
営業部
①対象とするお客様:少ない
②1人で担うマーケの範囲:広い
マーケティング部
①対象とするお客様:多い
②1人で担うマーケの範囲:狭い(他者と分担&協働して行う)
マーケティング=経営そのものとも言われます。営業も、業を営むというその名のとおり近いものがあります。それらに必要なパーツを図に整理してみました。これをもとに、BtoB営業でやっていたマーケティング活動を紹介します。
営業とマーケティングとを翻訳するものになれば嬉しいです。

紹介するのは、前職のSIerでやっていたソリューション営業の事例です。
役割 ➡ ソリューション営業
ミッション ➡ AIやデータを活用したシステム開発の受注
担当顧客 ➡ モバイル通信事業者1社
短期的成果 ➡ 受注・売上・入金
長期的成果 ➡ 顧客との共創事業の確立
■マーケティング活動①■
見込顧客の発見(=リード獲得)
1つめは、見込客の発見です。担当顧客はモバイル通信事業者1社、その中からAIやデータ活用に興味があり、かつ決裁権限がある人を探します。
手段はweb広告のような飛び道具ではありません。主な手段は紹介です。対顧客でいうと仲が良いお客さんにお願いしたり、そもそもお客さんと仲良くなるためにノベルティを配ったりします。
社内向けの活動もします。隣の部の部長が実は狙っていた顧客と旧知の仲だった・・みたいなことがあり得るからです。社内外両方を見ながら、誰と誰がどんな関係性か把握しながら、見込客獲得の確率を上げていきます。
■マーケティング活動②■
顧客との関係構築(=ナーチャリング・セールス)
2つめは、自社商品であるシステム開発と顧客の課題・業務目標との関連性を創るための情報提供や提案活動です。
顧客は組織として意思決定をします。なので組織の課題・目標と関連性が無ければ顧客にとっての価値はゼロです。組織課題と関係ないシステムを導入する可能性はゼロです。だから組織課題と解決策(=自社の提案)が繋がるようなストーリーを作り、理解してもらうための活動をします。
手段は継続的なコミュニケーション、顧客課題の理解、それをベースとした提案ストーリーの作成です。最終的には顧客内で稟議を上げるためのロジックに仕上げ、稟議書そのものを顧客に作ることもあります。
要は顧客の業務の一部を肩代わりするということです。顧客の担当者からはこのような活動も価値として認めてもらえます。
■マーケティング活動③■
商品開発への関与
3つめは、商品開発の上流部分です。ITシステムの開発はザックリいうと、要件定義 → 設計 → 開発 → テスト → リリース の段階に分かれます。そのうち”要件定義”は営業が関わります。顧客課題との関係性が深いからです。
顧客はITシステムで業務がこう変わって欲しい!とイメージを持っています。しかしITの専門家では無いのでシステムに必要な条件を具体化しきるのは困難です。
開発者は条件が決まれば設計や開発が進められます。しかし顧客のことを良く知らないので顧客の業務課題の深いところを理解するのは困難です。
このギャップを埋めるのが営業の役割です。顧客とシステム開発者との間にたって翻訳をします。翻訳が上手くいくと顧客課題の解決に直結するシステムが実現できて顧客価値が大きくなります。
また顧客の信頼を得られるので継続的な受注につながります。営業をかけなくても顧客から指名で受注をもらえるようになります。マーケティングによって販売が要らない状態を目指すとすると、それが実現するのです。
■マーケティング活動④■
プロジェクトチーム作り(組織体制)
4つめは、プロジェクトチーム作りです。ITシステム開発は本質的には開発者の人材派遣業です。定型的なモノが無いのでプロジェクトごとに開発体制を作る必要があります。
人が資源のビジネスなので限りがあります。どの業種・どの領域に注力してノウハウを貯めるか戦略が重要です。顧客ニーズがあったとしてもあれこれつまみ食いは効率が悪いので戦略を軸に活動します。
手段はビジネスプランの策定、社内合意の獲得です。システム開発のためには開発部門にチーム体制を組んでもらい人的投資をしてもらう必要があります。投資対効果を一定のロジックで示して投資判断をしてもらう必要があります。
つまり開発部門の稟議を通す必要があるわけです。顧客だけでなく、社内の他部門の稟議も通すための動きをするのがソリューション営業です。
■マーケティング活動⑤■
戦略策定
以上の活動の方向性を決めるのが営業戦略の策定、5つめの役割です。そもそもAIやデータ活用の領域をビジネスとして狙うのか、顧客ニーズの兆候はあるか、自社プロダクトで勝ち筋があるか、チーム体制を組めそうな開発部はいるか、総合的に考えて中期的な戦略を策定します。
逆に言うと戦略的に決めた領域は中期的に取り組むものであり、短期的な利益は追わない(商品の性質上追えない)ということです。いわゆる業績評価もその特性に合ったものになります。
ここで困るのが、外部の人が営業戦略を理解しないまま戦略外のことを言われることです。世に言う営業部とマーケティング部との対立構造は、戦略を理解しないままマーケ部が営業部に介入することが原因だと考えています。代表例の1つが「営業がリードを受け取ってくれない」という現象。そもそも前提が奇妙です。
マーケ部から営業部にリードを納品すると考えると、マーケ部のお客様が営業という構図です。お客様が納品物の質に納得していない、それに対して「お客様が分かってくれない!」と主張する営業はいません。淘汰されます。顧客視点ではないからです。
にも関わらずそんな議論が絶えないのは顧客視点がすっぽり抜けているからだと私は思います。相手のニーズを把握してそれを届ける、それがマーケティングですよね。
営業もマーケティングも言葉の意味合いは広く、事業経営そのものと言われます。その中心にある顧客視点は忘れないでいたいです。
マーケティング活動は大括りにすると3つに分けられます。価値の創造、価値の伝達、仕組みづくりです。

これを全てのお客様に対して、全ての商材で、1人でやるのは無理です。だから役割を分け、部門ごとに専門領域を担うわけです。営業部もマーケティング部も会社において利益を創る部門、プロフィットセンターの二大巨頭です。切り口が違うだけで、お客様のためにすべき事を広く捉えるべきという点で同じです。
違いは対象とするお客様の数、1人で担うマーケ活動の範囲です。
営業部
①対象とするお客様:少ない
②1人で担うマーケの範囲:広い
マーケティング部
①対象とするお客様:多い
②1人で担うマーケの範囲:狭い(他者と分担&協働して行う)
営業思考とマーケ思考との融合は思考の幅が広がる効果があります。お客様のためにもっとこんな事ができるはず!とアイデアがどんどん湧いてきます。そして価値が認められて売上が上がると仕事がどんどん楽しくなります。私はそれを体験しました。多くの人が楽しい仕事に巡り合えること、そして切磋琢磨できるマーケ仲間が増えることを心より願っています。
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