2024年はデザイン思考の変曲点、2025年はフォアサイト(デザイン思考)のアプローチからバックキャスト(未来洞察)へ - 油井毅 / #エキスパートアドベントカレンダー2024

2024-12-09

「#エキスパートアドベントカレンダー2024」とは、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。

今回は、大学教員 准教授、コンサル会社 代表取締役の油井毅氏による記事をお届けします。

EXPERT

油井毅

大学教員 准教授、コンサル会社 代表取締役
新卒でエネルギー商社に入社し、高圧ガスの営業、M&Aに携わる。その後、アカデミックの方面に進み、現在は大学教員の傍ら、個人でコンサル会社を経営している。

私がデザイン思考に出会ったのは2015年、スタンフォード大学で産学連携をしていた家電メーカー社員の講演であった。サラリーマン時代に代理店からエンドユーザーの困りごとを聞きその内容を本社に上げたところ「愚痴に付き合うことはない」と一掃されたことをふと思い出した。デザイン思考はその愚痴こそが宝でありアイデアの源泉であるということに衝撃を受けた。その後私自身も2016年に短期ながらカリフォルニアやデンマークで勉強し、さらに東京大学i.schoolでワークショップの手法を学びながら、日本人にフィットするデザイン思考のワークショップを開発してきた。現在も大学でデザイン思考を教えながら、会社経営でもデザイン思考を活用した研修講師、コンサルを行っている。

デザイン思考は、デザイナーが持つ多様な視点を身につけること、問題発見し解決を目指すという両面がある。2011年、米国からデザインコンサルIDEOが東京オフィスを開設した時期は、デザイナーによる人間中心の設計によるプロダクトの開発が目を引いた。特に、テクノロジープッシュによるモノづくりがグルーバルで難しさを感じていた日本メーカーは、正解のある魔法として羨望のまなざしを向けていたであろう。
その後、開発部署のみならず、ニーズドリブンの発想はスタッフ部門や営業職等でも必要な考え方であると浸透し、2019年にそのブームに乗り株式会社を起業した。失敗OKというワークショップの雰囲気が職場のチームビルディングにも好評で、幹部社員から新入社員まで現在2000人以上の受講者がいる。
近年は問題を見つけICTで解決を行うDX研修との良い相性もうかがえるが、新型コロナウイルスの影響で対面によるワークショップが出来なくなったころから、徐々に案件が減ってきたことは実際の経験からうかがえる。

また、デザイン思考は今ある問題から人間中心に解決策を考える、フォアサイトのアプローチが得意である。例えば10年後の未来や会社のビジョンをデザイン思考から考えることはあまり向いていないという課題は数年前から認識していた。
2023年からデザイン思考に次ぐもう1本の柱として、未来を考える手法の研究を始めた。日本総研が出版する未来洞察、BBT大学の未来構想の手法を学びながらイノベーション・ラボラトリにて業務委託で勤務を始めた。同社ではメガトレンドなどマクロ情報と人間起点からなるミクロ情報との掛け合わせから、研究者が内発的に作りたい未来ではなく、一般性と共感性が高い機会領域の設定を明示していた。ミクロ情報の取得はデザイン思考の共感のフェーズとの類似があり、不透明な未来だから考えても無駄ということは無いという説得力のあるプロセスにも心惹かれた。

未来を考える研修やコンサルの仕事を受注できるようになった2024年初頭ごろ、冒頭紹介したIDEOの東京オフィス閉鎖のニュースが流れた。デザイン思考の1つの時代の区切りを感じるとともに、それでも人間の困りごとは日々変化進化すること、それには社会や政治、技術などの変革が影響を与え続けているという前向きな意識が芽生えた。

パラダイムシフトが起こり続ける限り、起業は新規事業を考え続ける。2025年はフォアサイト(デザイン思考)とバックキャスト(未来志向)の両輪で前に進み続けたい。


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