未来予測-オープンソースインテリジェンス(OSINT)の勧めと難しさ - I・T / #エキスパートアドベントカレンダー2024

2024-12-18

「#エキスパートアドベントカレンダー2024」とは、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。

今回は、大手造船会社 アドバイザーのI・T氏による記事をお届けします。

EXPERT

I・T

大手造船会社 アドバイザー
2018年に定年退職するまで幹部自衛官として勤務しました。艦艇乗り組み幹部として長い間勤務したほか、各種計画の策定や、ロジスティックス、インテリジェンス等の分野で勤務したほか、海外駐在、他省庁出向等を経験しました。
元々は「使えない」の象徴である「理系の公務員」でしたが、長い間の宮仕えと様々な部署を転々とした事による経験値の蓄積により、あらゆるパワハラに耐える耐久性とその経験を反面教師としたマネージメント能力、そして少々特徴的な切り口と分析能力を手に入れました。
現在はアドバイザーとして技術的側面のほか、クライアント対策などで業務を行っています。

「神はサイコロを振らない。そして、予測できない未来はない。」

これは、私が前職(防衛省・海上自衛隊)を辞する際に、アインシュタイン博士の名言を引用し、同僚や若き後輩たちに贈った言葉です。

物理学の世界では、現在では「未来は必ずしも決まっていない。」という方向性にあることはもちろん承知しています。
しかし、私が元職で最後の10年ほどを過ごしたいくつかの部署では、情勢の分析評価と未来予測を生業としておりましたので、上司などからいつでも「明日はどうなる?」という問いかけを受けておりました。時には容易に予測できる未来、時には予測困難な未来を御覧に入れる必要があり、往生したものです。

私たちは、このような予測に「OSINT(オープンソースインテリジェンス)」という手法を用いていました。
OSINTとは、いわゆる「公開情報」からある事象を分析・評価し、見通しを述べる手法です。公開情報とは、非合法を含めた特別な手段を用いることなく誰でも手に入れることのできる「公式発表」「メディアの伝える情報」「公開された論文」「公開された企業情報」等のことを指します。

「政府関係者が行う情勢分析でそんなコンテンツを使うの?」と疑問に思う方も多いと思います。
しかし、私たちのコミュニティにはイーサン・アレンやジェームス・ボンドといった優秀なオフィサーもいませんし、アムロ・レイのように未来を感じることのできる「新人類」もおりません。地道に手に入れることのできる情報を積み上げて結論を得るのです。

最近ではネット監視などにより最新の情報をリアルタイムに得て、蓄積することも可能ではありますが、いずれにせよ手間のかかる作業ではあります。そのようにして得た情報を基にある事象を分析していくのですが、手にした情報の「精度」が課題になります。

「1次情報」と呼ばれる「本人のコメント」「政府、企業の公式発表」「起こった事象で確認された事項」などがありますが内容は限定的です。そこでメディア情報などに代表される「2次情報」を活用することになりなす。そこで問題となるのが提供される情報に掛かる「バイアス」です。

今年は米国の大統領選挙がありました。結果はご承知のとおりでしたが、大勢が判明するまでは「拮抗」「混戦」と評価され、激戦州が開き始めるとトランプ優勢、結果は「圧勝」とも評価されました。
8年前のほうが顕著でしたが、特にアメリカの3大ネットワークは「アンチトランプ」であり、「トランプに勝ってほしくない」「もしトラでは見通しが暗い」「分断が拡大する」などの理由で民主党候補への期待が膨らみ、結果「世論調査」にすでにバイアスがかかっていたことも考えられます。あからさまな結果改ざんはなかったにせよ、調査セグメントの調整くらいは行っていたのでしょう。

ここ数年で「FAKE NEWS(フェイクニュース)」という言葉が特別ではなくなり、SNSが世論をリードする時代になりました。様々なDXによる進化が、情報収集の手法、ツールにも影響を与えています。SNSに注目しますと正直様々なバイアスが見え隠れしていて、たくさんの方々が翻弄されているような印象すら受けます。

さて、今年一年は日米の選挙はじめ、経済見通し等お堅い分野をはじめ、オリンピックの勝敗、大谷選手の活躍など、「どこまで伸びるのか?」という話題など、様々な分野での予想が行われました。工業分野においても、洋上風力発電やSAF燃料の今後等、知りたい未来が数多く存在しています。

これら未来のことを少しでも正確に、他人より早く知る、それによって人はアドバンテージを得ることができるかもしれません。そのためには、合法的で比較的取り付き易い、OSINTの手法を学ぶのも一考です。

ということで、OSINTという分野について紹介させていただきました。

私自身、来年も何らかの未来について予測し、何方かと意見を交わしている事でしょう。
劇的に明るい2025年を予測することは困難ですが、来年が皆様にとって良い1年になることを心からお祈りいたします。


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