生成AI時代、コンサルタントの価値は? 代替不可能な専門性を探る - SK / #エキスパートアドベントカレンダー2024

2024-12-22

「#エキスパートアドベントカレンダー2024」とは、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。

今回は、外資系コンサルティング会社 コンサルタントのSK氏による記事をお届けします。

EXPERT

SK

外資系コンサルティング会社 コンサルタント
半導体研究開発と生産技術の経験を基盤に、30代でデータサイエンス分野へキャリアチェンジ。10年以上にわたり、パワー半導体の量産化や不良率低減、品質向上に取り組み、数千万円規模のコスト削減を達成。データサイエンティストへ転身後は、製造業を中心にAIアルゴリズム開発や予知保全システム構築を実施。現在はITコンサルタントとして生成AIやDigital Twin技術を活用した製造現場の効率化支援を行う。昨年、趣味の延長で統計検定1級を取得。

1. はじめに:生成AIの進化とコンサルタントへの影響

「また、このレビュー後の資料修正か…」深夜の自宅で、私はため息をつきながらPower Pointを編集し始めた。コンサルタントとして転職したての当時、資料作成やデータ分析に多くの時間を費やしていた。そんな私に、最近、大きな変化が訪れている。そう、生成AIの登場だ。ChatGPTやGeminiといったAIツールは、コンサルタントの日常業務を大きく変えつつある。

最初は「便利だな」と単純に感じていた。しかし、同時に「このままでは、コンサルタントの仕事はAIに代替されてしまうのではないか?」という漠然とした不安も感じてきた。私自身、コンサルタントとして「何が強みなのか?」「AIに代替されない専門性とは何か?」を真剣に考えるようになった。

本記事では、私自身の経験も踏まえながら、生成AIがコンサルタントの仕事に与える影響を分析し、AI時代においてもコンサルタントが持つべき価値、そして代替不可能な専門性について考察したい。

2. コンサルタントの仕事の現状:AIに代替されうる領域とは

コンサルタントの仕事は多岐に渡る。クライアントの戦略立案、市場調査やデータ分析、業務改善、組織変革など、様々な課題解決を支援している。コンサルティングの成果物作成の流れは、大きく5つのステップに分けることができる。それは、①目的・仮説設定、②調査・分析、③メッセージ決定、④表現・クリエイティブの下書き、⑤成果・資料作成だ。

⑤で作成するPPTは業界用語で“紙”と呼ばれ、内容も見た目も高い品質が求められる。

私が担当したあるプロジェクトでは、製造業クライアントの生成AI活用支援を行うために、「そもそもAIと生成AIの違いは?」や「AI活用全体のマップ」を作成する必要があった。他社での生成AI活用の動向を調査する必要があった。その業務のいくつかのフェーズでは生成AIを活用した。

一連の業務の中で、上図からもわかるように、特に②調査・分析、⑤成果・資料作成のステップは、AIに代替されやすい領域だと感じる。AIは、大量のデータ分析やレポート作成、インターネット上の情報収集などを効率的に行うことができる。実際、ある調査によれば、AIは人間の3倍以上の速さで情報を収集し、データ分析の精度も人間を上回るケースがあるという。(参考:Building the AI-Powered Organization)

しかし、コンサルタントの仕事は、単純作業の繰り返しではない。①目的・仮説設定、③メッセージ決定、④表現・クリエイティブの下書きといった、思考力や創造性が求められる領域は、AIでは代替が難しい。これらの領域こそ、コンサルタントの価値の源泉であり、AI時代においてもコンサルタントが生き残るための鍵となる様に思う。

3. 生成AIの得意領域:データ分析、レポート作成、情報収集

生成AIは、確かに凄い。データ収集、レポーティング、データ分析のタイパでは、もはや敵わないと感じる。例えば、私が以前、手作業で数日かけて分析していたデータを、生成AIは数分で正確に分析してくれる。また、レポート作成においても、AIが文章構成やグラフ作成を自動化してくれるため、資料作成の時間が大幅に削減される。

また、情報収集に関しても、生成AIは非常に優秀だ。私が以前、何時間もかけていたインターネット検索や文献調査を、AIは瞬時に完了させてしまう。私はこの手の業務にはGenspark Autopilot Agentを使っている。AIが情報取集して、レポーティングしてくれている間に、私は紙とペンを片手に「クライアント内での生成AI活用のTo Be」を書き出す。

これらのAIの能力は、コンサルタントの業務効率を大きく向上させるだろう。そして、この効率化の陰で、コンサルタント自身の存在意義を改めて問われることになるだろう。

4. コンサルタントの強み:代替不可能な専門性とは

コンサルタントの最大の強みは、やはり、高度な問題解決能力にあると思う。私が経験したあるプロジェクトでは、クライアントが長年抱えていた複雑な問題を、チームで議論を重ね、様々な角度から分析することで、その本質を見抜くことができた。そして、最終的には、クライアントの事業成長に大きく貢献できる戦略を立案することができた。このような複雑な問題解決は、AIには難しいと感じている。

また、コンサルタントは、クライアントとの信頼関係を構築する能力も非常に重要だ。私たちは、クライアントの言葉に耳を傾け、共感し、その上でクライアントの想定を超える提案を求められる。また、発注 VS 受注側の構図でなく、One Teamとして共に課題解決に取り組む姿勢が求められる。あるクライアントからは、「〇〇さん(私の名前)になら、安心して相談できる」と言ってもらえた。このような信頼関係を築けることは、AIには決して代替できない、人の強みだと思う。(正直、その人のキャラでクライアントにハマる、ハマらないが左右されることもままある。)

さらに、コンサルタントは、単なるアドバイザーではなく、クライアントの変革を推進する役割を担っている。コンサルタントは、現状分析を行い、目標を設定し、戦略を実行するプロセスをサポートするだけでなく、組織文化を変革し、組織全体を活性化させる役割も担っている。これらの変革は、AIの分析結果や提案だけで実現できるものではない。

5. AIと共存する未来:コンサルタントが持つべき視点とスキル

AIの進化は、私たちコンサルタントにとって、決して脅威ではない。むしろ、業務効率化や新たな価値創造のための強力なツールとなるはずだ。しかし、そのためには、私たちコンサルタント自身の意識改革も必要になりそうだ。

これからは、AIを「敵」とみなすのではなく、「副操縦士(Copilot)」として捉え、積極的に活用していく必要がある。むしろ、周囲が活用し始めたら自分も使わざるを得ない。生成AIでブーストされたビジネスマン VS 生身のビジネスマンでは、相対的に後者が仕事の遅い人間になってしまう。

例えば、AIが得意とするデータ分析やレポート作成は、AIに任せて、私たちは、より高度な問題解決やクライアントとのコミュニケーションに注力していくべきだろう。

また、AIを活用する上で、倫理的な観点も非常に重要となる。私たちコンサルタントは、倫理観を持ってAIを扱い、データプライバシーを尊重し、バイアスを排除し、透明性の高い意思決定を行う必要がある。例えば、システム開発を受託して行う場合、生成AI(Github Copilot等)を使って開発した場合の著作権の取り扱いを契約書でしっかり握っておくべきである。一般的には、AIが生成したコードは人間による創作物と見なされず、著作権保護の対象外とされる。そのため、受託側、クライアント側いずれの著作権にも属さない成果物が発生する。

倫理的なAI活用に関する研究も進んでおり、コンサルタントは、これらの最新の知識も習得する必要がある。(参考:Great promise but potential for peril)

さらに、コンサルタントは、常に新しい知識やスキルを習得し、自己変革を続けなければならない。AI技術、デジタルスキル、データ分析能力はもちろん、クライアントの組織変革を推進するためのリーダーシップスキルやコミュニケーションスキルも磨き続ける必要がある。

6. おわりに:コンサルタントの未来を切り拓くために

生成AIの進化は、コンサルタント業界に大きな変革をもたらすだろう。しかし、それは必ずしもコンサルタントの仕事を奪うものではない。むしろ、コンサルタントの価値をより高め、新たな可能性を切り拓くチャンスだと私は信じている。(と言うか、競争原理に基づき、積極的に活用せざるを得ない時代になりつつある)。実際、個人とAIエージェントがバディを組み業務に取り組む事例が出てきている(参考:アクセンチュア、社員と一緒に仕事をこなすAIエージェントを2025年春に全社員へ展開)。

私たちは、AIに代替されない、独自の価値を磨き続ける必要がある。それは、高度な問題解決能力、クライアントとの信頼関係構築、変革を推進する力だ。これらの能力を磨き続けることで、私たちコンサルタントは、AI時代においても必要とされる存在であり続けられるだろう。

コンサルタント業界の未来は、私たち自身の行動にかかっている。AIの進化を恐れるのではなく、積極的に受け入れ、自己研鑽を怠らず、クライアントに価値を提供し続けることで、生成AI時代を生き抜くことができるだろう。


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