医療需要度が高くなる未来だからこそ経験豊富な看護職の社会進出を! - 濱田安岐子 / #エキスパートアドベントカレンダー2024

2024-12-24

「#エキスパートアドベントカレンダー2024」とは、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。

今回は、株式会社はたらく幸せ研究所 代表取締役の濱田安岐子氏による記事をお届けします。

EXPERT

濱田安岐子

株式会社はたらく幸せ研究所 代表取締役
看護師臨床11年、看護教員3年、2006年から病院に所属せず、病院看護部に就職する中途(既卒)採用者の適応支援面談や教育コンサルティングなど看護のキャリア支援活動を始める。2010年にNPO法人看護職キャリアサポートを設立。地方自治体との看護師確保対策事業、個別のキャリア開発支援、研究会の企画運営、執筆活動や研修講師を通して看護師が元気に自分らしくキャリアを継続できるように活動。2018年には株式会社はたらく幸せ研究所を設立し、社会的健康を実現する看護師の活動を推進している。

私は、1992年に看護師免許を取得、11年の病院勤務を経た後に看護学生を育てる教育現場で3年間過ごし、2006年にフリーランスとなって看護職(看護師だけでなく、保健師・助産師・准看護師を含む)のキャリア支援を始めました。その意義は組織内ではなく、外部から支援することです。活動の根拠とするためキャリア・カウンセリングのスキルを身につけるため、厚生労働省認定資格を取得(2016年にキャリアコンサルタント国家資格登録)しました。
フリーランスで始めた活動はニーズを捉え始めることができ、看護職の持続的な活動を社会課題としてとらえて2010年にNPO法人を設立して活動継続を進めました。活動を進めるなかで医療業界ではない、他業種の方々と交流を持つことで、思うところがあり2018年に株式会社はたらく幸せ研究所を設立して現在に至ります。

私の看護職に対する課題感

看護職へのキャリア支援は2006年にお悩み相談からスタートしました。看護職たちがどのようなことで困っているのか、利害関係のない外部の支援者として本音を引き出すことで本質的な課題解決を目指したいと思いました。
当初、看護職たちが吐露したことは医療現場の人間関係の問題がほとんどでした。私は、チームマネジメントの問題を感じつつ、本人との面談支援だけでは解決できないと思うようになりました。そのため、支援に入らせていただいていた病院の教育システム構築も支援させていただくことにしました。

しかし、教育システムを構築しても医療現場は診療報酬制度が改定されるたびに大きく変化していきます。看護職にとって大きな変化は仕事内容に付随する手続きが増えていくことです。看護職の知識や技術の積み重ねだけでは解決できない課題があることに気づき始めました。

課題は様々ですが、看護職の養成制度、診療報酬の改定プロセス、人口構造の変化に伴う患者の高齢化で日常生活ケアが煩雑化、医療の高度化による看護技術の複雑化などなどによって、仕事の内容が変化し看護職の仕事量が増加し続けました。制度改定によって看護職の採用人数は増えていても対応しきれなくなっています。

その結果、看護職はやりがいと使命感では耐えられないほどのストレスフルな仕事で、職場の人間関係が悪化して退職者が増えるという負のスパイラルに陥っていった現場が増えました。もちろん、どんなに大変な職場でもマネジメントが重要です。しかし、マネジメントだけで何とかなる課題ではなくなってきたようにも思います。

解決に向けて私が考えること

私は医療現場だけでは解決できない課題になってきていると感じています。最近の様々なメディアを見ていると、社会保障制度改革として医療費問題を解決するための議論がされています。しかし、そこには看護職はいません。医療を語るのは医師だと社会に思われているからです。
もちろん、そういう側面はありますが、医師が最大のパフォーマンスができるように環境整備する医療現場のマネジメントや患者の人生に関わるケアをするのは看護職です。某ドラマでは「医師は病気を見て病気を治し、看護師は人を見て人を治す」というナイチンゲールの決め台詞で問題解決していますが、現実の医療現場ではフリーランスのナースが職場の問題を解決しません。

組織にコミットして継続的に組織運営に取り組む看護のマネジャーが、看護職を取り巻く経営の資源であるヒト・モノ・カネ・情報などを管理しているから、患者は入院治療を無事に終えることができます。看護管理者が活躍できる看護の現場で患者をケアする看護職が質の良いマネジメントでパフォーマンス良く活動することができれば、患者を幸せに導くことができます。医師には解決できない医療現場の問題があります。それを支えているのは看護職です。

現在、取り組み始めたこと

私が現在、取り組み始めたことは、経験豊富な看護管理職がビジネスパーソンと一緒に働ける場を作ることです。超高齢社会で医療現場の看護職が足りなくなるといわれていますが、定年退職した管理職には看護とマネジメントの長年の経験を強みにして企業と協働して活躍してほしいと思っています。

超高齢社会で医療の現場に必要な大量の人材は、患者に直接ケアをする看護職です。若手~定年前の看護職は日本の超高齢社会を乗り越えるため、保健・医療・福祉の現場で活躍して欲しい。そして、管理職は次の世代を育てる必要がありますから、優秀な若手をしっかりとマネジメントできる看護職に育てて、次のステージに移行してほしいのです。
しっかりと長い期間、やりがいをもって医療現場をマネジメントして医療を支えてきたから、次のステージが待っていると考えれば、管理職は責任ばかりを追う損な仕事とは思われません。役職定年していたとしても、管理職が同じ組織に居続けることで世代交代が進まず、いいことはありません。

私はNPO法人で保健・医療・福祉分野に関わる看護職のキャリアを支援し、株式会社で定年退職後の看護マネジャーが企業で活躍するために実践的な学習プログラムでキャリア開発支援をします。NPO法人の活動と株式会社の活動は私の思いをつなげているのです。
看護とマネジメントの豊富な経験を活かして専門職として企業の人材不足を補いながら、その存在が、働く人も企業の恩恵を受ける顧客も幸せにする、そんな取り組みを始めています。

看護職が実現するwell-being

看護職は看護学生になった初期の段階でWHOの健康の定義を学びます。WHOの健康の定義の英語原文では、身体的、心理的、社会的健康の良好な状態が“well-being”と表現されています。看護職は体と心だけでなく、社会的健康をケアするのだと意識します。
しかし、社会はまだまだ健康だとは言えないと感じています。日本社会が健康になるために必要なことは看護職として取り組みたい課題です。企業が取り組む健康経営が従業員の体と心の問題解決だけではwell-beingの持続性はありません。そんな社会的健康に取り組むことができるのは経験豊富な看護管理職なのです。

2024年はそんなことに取り組み始めた幸せな1年でした。皆様、良いお年を。


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