制度が大きく動く前夜。2026年から家の選び方は変わります。 - 木瀬裕介 / #エキスパートアドベントカレンダー2025

公開日: 2025-12-02

「エキスパートアドベントカレンダー2025」とは、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。

今回は、アースコンテナ合同会社 CEOの木瀬裕介氏による記事をお届けします。

テーマは「ご自身の専門領域で2025年に起きた“最重要トピック”と、その背景・今後の見立て」です。
2025年にその専門領域で起きた象徴的な変化を取り上げ、背景にある構造的な動きを紐解きます。今後の展望を読むことで、来年の市場の見方が一歩深まる内容です。

EXPERT

木瀬裕介

アースコンテナ合同会社 CEO
大手住宅メーカーにて研究所、企画、マーケ、営業責任者などを経験後、住まい想像研究所を設立。
建築士や宅地建物取引士の知識を活かし家づくりのコンサルタントを実施しています。
自社の魅力を理解する研修やお客様むけセミナーを行なっています。
また、コンテナハウスやトレーラーハウスなど、次の時代を考えた新しい家づくりにチャレンジをしています。

きちんとした知識があれば家づくりは案外楽しいですよ。
家づくりのご相談、研修、セミナーのご依頼お待ちしています
毎日記事を発信しています。
https://note.com/beautifulholiday
家づくりは楽しいですよ。

Q1. 2025年、あなたの専門領域で最も印象に残った出来事・変化・トピックは何ですか?

2025年はいろいろ騒がしい一年でしたが、住宅の現場にいると大きく深い変化が進んだ年でした。
四号特例の縮小、断熱基準の急上昇、働き方改革のしわ寄せ。

紙の上では正しそうに見える制度でも、実際に対応する工務店の体力は限界に近づいています。
施主を守ることは当然ですが、業界に負荷をかけすぎれば良い家づくりそのものが机上の空論になりかねません。
いくら良い住宅性能でも、買えないほど価格が急騰したら意味がありません。

価格より深刻なのは、つくり手が減り続け、地域で家を建てられる会社が本当に少なくなってきたという現実です。

とくに新築より技術が必要なリフォームでは、その限界がよりはっきりしています。
大工の高齢化は以前から知られていましたが、今年は省エネ義務化や構造計算の厳格化といった負担が一気に増えました。
体力のない工務店ほど心が折れていく姿を何度も見ました。工務店の二極化が明白になっています。
技術や誠実さではどうにもならない制度の重さに押しつぶされる構図が進んでいます

さらに広告の世界でも変化がありました。
新聞折込はほぼ効果を失い、SNSが完全に主戦場になりました。
紹介ビジネスの謝礼は大きな負荷になっています。
お金をかけた会社だけが露出できる状況になり、地方のまじめな工務店ほど逆風が強まっています。
家の良し悪しではなく広告の腕力で戦う時代に入ったと感じます。

マンションは別の意味で重い一年でした。
東京23区の中古マンションは70㎡あたり1億1034万円。
前年から約37パーセントも高騰したというデータもあり、80年代後半の空気を思い出します。
当時のように投資ブームが起きているわけではないのに、価格だけがバブルのように走っている印象です。
本来は立地だけでなく、将来の管理状態などで価値が分かれるべきであるなのに、購入時の金額だけが独り歩きしている状況です。
立地が気に入り、支払いができれば購入を具体的に検討する時代です。
無理をした返済計画はもちろん避けるべきですが、それ以上に将来的なメンテナンス費用も含めて慎重さが必要になります。
そもそも都内の空き家問題はマンション空き家が大きなウエイトを占めていますが、その問題が顕著になっていないことも気になるポイントです。

政治の変化も見過ごせません。高市政権になってから、国土交通省の空気がわずかに変化しました。
既存住宅や管理のほうに視線が向き始めた印象です。

金利上昇に関しての慎重な判断はもちろんですが、補助金の拡充、共働きがしやすい環境の制定など住宅を購入しやすい流れになれば良いと思います。

Q2. その出来事・変化が起きた背景には、どのような要因があると思いますか?

この動きの背景には、日本の住宅市場が長く抱えてきた前提のズレがあります。
まず、新築を前提にした住宅政策が、人口減少の時代になっても続いてきたことが大きくあります。
戦後から続く「家は不足する」という考え方が制度の根底に残り、住宅の量を増やす仕組みだけが積み上がりました。
しかし実際には、全国レベルでは住宅ストックは過剰で、温熱基準や構造の弱い建物が増えました。

老朽化した建物の維持や更新が本来の課題になっています。
しかし中古住宅の問題解決はほとんどされていません。

この政策の遅れが、現在の価格の歪みや供給の偏りを生む原因になりました。
これを改善する目的に制定されたのが、四号特例の縮小であり、断熱基準の急上昇ですが、現場に負荷が大きすぎることが問題になっています。

また都市部の価格高騰には、コロナ禍の落ち着きと都心回帰が影響しています。
リモート一辺倒から出社とのバランスを求める動きが増え、企業が都心を再び中心に据え始めました。
人口と雇用が再び都市に吸い寄せられたことで、もともと供給が限られていた都内の住宅需要が一気に高まりました。
土地が買えない=マンションが高騰する は、わかりやすい図式です。
少し前に建てられた立地が良い中古マンションに需要が集中し、価格が高騰しているのも納得です。

全国的には空き家が増えていても、東京では物件が足りないという構造が続き、価格が実需を上回って動いてしまった背景があります。
しかし一方で、マンションの空き家問題が重大な局面に来ていますが、これがほとんど報道されていないことに闇を感じます。

性能向上を求められる一方で、実現のための支援が十分ではありませんでした。
構造強化や断熱性能の向上は必要ですが、それを担うための人材育成や財政的な後押しが追いつかず、民間が自力で対応するしかない状況です。
制度だけが積み重なり、実行するための基盤が整えられていない。
大手は乗り切れても、中小には致命傷であり、実際に廃業する工務店も増えています。

このねじれが現場の負担を増やし、さらなる価格の上昇にもつながっています。
政治の面で、大きな方針転換が行われたわけではありませんが、印象として、人口減少と住宅ストックの老朽化を前提にした議論が増えてきました。
今後は国土交通省の良い変化を期待したいと思います。

新築中心の政策を続けるには限界があり、既存住宅の質や維持管理をどうするかが避けて通れない課題になっています。

制度の細部に変化の兆しが出てきたのは、その流れの延長にあると感じています。
2025年に見えた揺れは、偶然の出来事ではなく、これまでの前提が続けられない状況に入り、長年の歪みが一気に表に出た結果だと思います。

Q3. このトピックは今後どのように進化・展開していくと考えますか?

2026年以降の住宅市場は、これまでの延長では語れない動きが進むと思います。
現在の制度は限界にきており、マンションを中心とした都心の空き家問題を明確にしていくべきです。

まず、人口減少と世帯構造の変化を前提にした政策が本格化し、住宅の量ではなく質をどう守るかという議論が中心になっていくはずです。

新築の供給はこれまで以上に減り、既存住宅の維持や改修に関する制度設計が重要になります。
しかし一方で、四号特例の縮小など、急激に難しくなったリフォームの問題を理解し、解決する必要があります。
机上の空論ではなく、住む人にも、建てる人にも、社会にも良い制度設計が必要です。
この三方よしの考えがなければ業界の破綻がさらに進むと思います。

また、管理が行き届かない中古マンションの問題も、避けられないテーマとして表面化してくるでしょう。
都心回帰の動きはしばらく続くと思いますが、価格の上昇はどこかで限界に近づきます。
バブル崩壊の足音が聞こえてきている中では、きちんとした金融意識を持つことが重要です。
自己責任なのですが、毎回こういった問題で「保証しろ」という話が出てきます。

過去から学ぶことも重要ではないでしょうか。

金利の変化、企業の働き方、人口の動きが複雑に絡むので楽観はできませんが、無理をしない返済計画を前提にした家選びがより重要になる時代です。
いつまでも若くて健康でいられるわけでもありません。自分の未来を想像する力が重要です。

今のように価格だけが先行する状況は長続きせず、建物の管理状態や将来の維持費を含めた総合的な価値で判断される流れが進むはずです。

一方で、性能向上の波はこれからさらに強まります。
省エネや断熱の強化は避けられず、構造の安全性についてもより厳しく見直されるでしょう。

ただ、その負担を民間だけに任せる形では立ち行かないため、長期的には技術者育成や施工体制の強化に向けた支援を増やすべきです。

やるべきことを現場に投げ続けるだけでは、さすがにどこかで限界が来ます。

個人としては、こうした移行期をどう乗り越えるかが住宅業界にとっての大きなテーマだと思っています。
住宅の機能や制度の理解だけでなく、家の維持や管理の判断を一般の人がしやすくする情報がもっと必要です。

つくり手が減る中でも、正しい選択ができるような伝え方や、過度な不安を煽らない発信が求められています。
2026年以降は、住宅を選ぶ人にとっても、つくる側にとっても、新しい基準で価値を判断する時代に入ります。

数値だけでは測れない住まいの良さをどう守り、どう伝えていくか。それがこれからの大きな課題だと感じています。

本来は家づくりは楽しいイベントです、恐れすぎず家づくりが楽しめる社会になれば良いと思います。

「エキスパートアドベントカレンダー2025」とは

「エキスパートアドベントカレンダー2025」は、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。2025年12月1日〜12月25日の25日間、エキスパートの学びや気づきをお届けします。

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https://newspicks.expert/advent-calendar/2025

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