Q1. 2025年、あなたの専門領域で最も印象に残った出来事・変化・トピックは何ですか?
2025年は、私にとってプロデューサーとして、コンサルタントとして、そして人材育成の立場からも忘れられない年でした。その中で最も心に残ったのは、技術(特に AI と Web3)を通じて、お客様との「絆」を再構築する動きが、単なる実験段階を越えて本格化してきたことです。
具体的には、NFT やソウルバウンドトークン(譲渡不可能な暗号資産)を使って「愛着の証明」をデジタルで可視化し、それによって本当にブランドを愛するお客様との深い関係性を築く試みが、私が関わるプロジェクトでも動き始めました。ヴィンテージデニムのコレクター向け事業では、従来の所有証明を超えて、「そのアイテムを大切にしてきた人」「そのブランドに対する思い入れを持つ人」を識別できる証として SBT の発行が可能になった。これにより、単なる購入者から「ブランドを共に育てるパートナー」のような存在へと顧客を昇華させる可能性が現実味を帯びてきたのです。
もうひとつ象徴的だったのは、AI エージェントの進化と実用化です。2025年には、AI が単なる入出力のチェーンではなく、ビジネスの中長期のタスクを自律的に遂行できるようになるフェーズが明確になりました。私がアドバイザーをしている企業でも、エージェントが費用構造、在庫コントロール、顧客対応改善までを包括的に支援する導入が始まり、PoC(概念実証)の域を脱した「成果を出す AI」が現場に根付き始めています。
この2つの流れは、愛着を深化させる絆の再構築と、創造と自動化を両立させる AI の実践的導入が、2025 年に最も強く印象に残るトピックでした。「技術の向こう側にいる人」に立ち返る働きかけを、実際のビジネスで再び形にできた年だった、と言えるでしょう。
Q2. その出来事・変化が起きた背景には、どのような要因があると思いますか?
このような変化が2025年に顕在化した背景には、いくつもの重層的な要因が重なっていると感じています。
まず、技術成熟とインフラの整備です。AI の性能はもはや実験室の次元を出ており、エージェント機能やマルチモーダル処理能力が非常に高速かつ高精度になりました。同時に、クラウドや専用ハードウェアへの投資も進み、企業が大規模 AI を本番環境で運用する際のコストや障壁が大きく下がったのです。
次に、人々の価値観の変化です。これまで「所有」や「利便性」を中心に成り立っていた消費は、成熟社会やデジタル社会において徐々に変容しています。特にファッションの世界では、モノを持つだけではなく、物語や所属感、共創といった「感情の絆」を強く求めるお客様が増えてきました。コレクターやロイヤルカスタマーの間で、「そのブランドを育てる」「歴史の一部になる」ことに誇りを感じる層が拡大し、その思いを形式化する手段として、IT技術や生成AIが注目されているのです。
また、ビジネス側の構造変化も見逃せません。多くの企業が、「技術導入の疲れ(PoC疲れ」を経験してきました。「AIを試す」の段階を超えて「AIで成果を出す」ためには、単なる技術者ではなく、技術とビジネス、そして現場のビジネスと文化をつなぐ「翻訳者や異文化コミュニケーター」 が必須になります。これは、私のようなプロデューサー型のコンサルタントが存在感を発揮できる土壌が整ってきたことを意味しています。
最後に、規制・ガバナンスの成熟も無視できません。Web3、NFT、AI などの領域は、まだ規制が不十分、あるいは過剰な警戒がある分野でもあります。しかし、2025年には各国でガイドラインが整備され始め、デジタル資産や AI 活用に対する信頼性・透明性を担保する枠組みが強化されています。企業は安心して「絆づくり」をデジタル上で構築できる可能性が見えてきました。
これらの技術、社会、ビジネス、規制という複数の流れが同期し、「絆と創造性を再構築する」ための強力な追い風になった。そんな年だった、と私は考えています。
Q3. このトピックは今後どのように進化・展開していくと考えますか?
2026年以降、私はこの 「絆と創造性の再構築」の潮流が、さらに深まり、形を変えながら社会とビジネスの中核になると見ています。
1. 創造性の戦略化
AI による最適化はすでに当たり前になりつつあります。だからこそ、真に勝負になるのは、「創造性を戦略としてデザインする力」です。AI が導く最適な数字や分析結果をそのまま使うのではなく、「どういう物語で伝えるか」「どうやって人の心を揺さぶるか」を戦略の中心に据える。これは技術者でもマーケターでもなく、「人の心を読むプロデューサー」だからこそできる仕事です。
私は、顧客の声・感情・思い入れと、AI が見つけ出すパターンを掛け合わせて、人が喜び、自ら関与したくなる体験を設計していきたいと考えています。特に、Web3や生成AIを通じて、「共創の場」「共同オーナーシップ」「顧客体験創造」を生み出すビジネスデザインが、これからの鍵になるでしょう。
2. 顧客ロイヤルティの再定義
2026年以降、ロイヤルティは、頻度や金額だけでは測れなくなります。「深さ」と「意味」が問われるロイヤリティへと進化すると予想します。
具体的にはデジタル技術とコンテンツから生み出す「顧客ライフストーリー」の可視化。
なぜ、顧客は、このサービスや製品を購入したのか。
どのアイテムをいつ買って、どう手入れをし、どう次の世代へ渡すか。
リアルとデジタル体験や共創を通じて、ブランドと顧客の関係が単なる消費から創造の共同体になる。
このようなロイヤルティを育む戦略は、単なる収益の最大化ではなく、ブランドの歴史と価値をお客様と一緒に紡ぐことそのものになるはずです。
3. 人材育成と組織文化の変容
この未来を実現するには、組織の中に ハイブリッド人材(ビジネス × 技術 ×共感) を育てる必要があります。私はこれを、人材育成のもっとも重要なテーマとして捉えています。
具体的には、次のようなアプローチを強めていきたい。
社員・経営者双方へのワークショップ:AI・Web3の理解を深めながら、絆を築く設計者としての思考を育てる。
共同創造型プロジェクト:実際に生成AIやデジタル技術を使った共創を通じて、ハイブリッド人材が自分で体験を設計・検証できる場を提供。
失敗と学びを尊ぶ文化:過去の失敗や小さな挑戦を「学び」と捉え、改善を即フィードバックできる仕組みを組織へ根付かせる。
4. 社会と規制との共創
技術の進化だけでなく、社会との対話とガバナンスの成熟も重要です。ブランド側、顧客側、規制当局が共に学びながら、信頼できる Web3・AI のエコシステムを育てる必要があります。
私は、業界団体や企業、学術機関と協働して、「顧客との絆構築」「共創構造」「透明性担保」をテーマに、ガイドラインや実践モデルを作る役割を担いたいと考えています。
最後に
40年にわたるファッションビジネスと人材育成の経験。株式会社ワールドで培った現場力。アジアで得た多文化・多市場の知見。これらを背負って、私は今、テクノロジーと人の心をつなぐプロデューサーとして活動を続けています。
2025年は、その役割がこれまで以上に明確になった年でした。
そして、2026年以降は、創造性を戦略に変え、真に人を動かす体験を設計する時代が始まります。
皆さまと手を携えて、「絆」と「創造性」の両輪で、新しい未来を描いていきたい。どうぞ、これからも温かいご支援と共創の機会をいただければ幸いです。
ここまで、お読み頂き、ありがとうございます。明るい未来を創造していきましょう。
よろしくお願いいたします。



