Q1. 2025年、あなたの専門領域で最も印象に残った出来事・変化・トピックは何ですか?
2004年12月にインバウンドで旅館と地方を元気にする!という想いのもと、日本初の旅館・観光地向けインバウンド集客のマーケティング会社を創業しました。今月で22年目になります。
昨年暮れからインバウンド市場の変化についての予想が次々と現実のものとなったことが私自身にとって最も感慨深いことです。年初に予想したことは主に3つ。1つ目は日本ブームの継続により海外の中間所得層の訪日客が増加する。2つ目はデジタルノマドの訪日旅行が増えて、滞在日数が長くなりより日本文化にどっぷり浸かるようになる。3つ目は訪日旅行の多様化の一環としての地方旅行先が分散化する。
インバウンド訪日外国人客数が好調な伸びを見せ、10月の訪日外国人旅行者数(推計値)は前年比17.6%増の389万6300人となりました。年初から累計は前年同期比17.7%増の3554万人。11月時点で年間4000万人まであと445万人に迫りました。中国人の渡航自粛の影響もあり年内に大台に乗せるかどうか微妙なところではあります。いずれにしても総数にはビジネス、留学、研修などが含まれるため純粋な観光目的の訪日客はこの85%程度と見ておくべきでしょう。
老舗のインバウンドマーケッターとしては表面上のデータよりも掘り下げて「どのような訪日客が増えたか」「何を目的に来訪しているか」など目に見えない動きが気になっていましたが、冒頭の3つについてクライアント旅館、温泉地への集客支援やプライム上場の飲食チェーン、東京観光財団アドバイザーなどの業務を通して訪日リピーター層の動きがはっきりと見えてきました。
Q2. その出来事・変化が起きた背景には、どのような要因があると思いますか?
先述のインバウンドの3つの動きの背景には以下のような理由があると分析しています。
1つは国内の物価安と円安の状態が続いており、つまり海外では自国でのインフレ・物価高、所得増、自国通貨高(円安)が続いていること。
2つは訪日リピーターの増加。2023年の訪日リピーター割合は7割となり、コロナ前の2019年より上昇しました。2025年のデータは来月に発表されますがリピート率は更に上昇している可能性があります。ある海外OTA(宿泊予約サイト) の調査によると、アジアの10ヶ国・地域の4,000名を越えるアゴダユーザーの内、32%の旅行者が日本を再訪しているという結果が出ています。これは、アジアの中で最もリピーターが多い数字です。日本の観光政策としては「日本ファン」の獲得に成功していると言えるでしょう。これを裏付けるデータとして電通による「ジャパンブランド調査2025」では日本が世界で最も「再訪したい国」となりました。再訪意向は52.7%に達し、韓国(20.0%)やアメリカ(16.6%)を大きく引き離して世界首位となりました。
最後のインバウンド増加の背景としては訪日リピーターを中心に国内での旅先が分散化し、また訪日目的も多様化したこと。自分たちだけの旅を容易に実現できるデスティネーションとしての日本観光のインフラが充実してきたこともプラスに働きました。
Q3. このトピックは今後どのように進化・展開していくと考えますか?
今後も日本の対外的な物価安状況は続き、為替も円安傾向は続く。仮に1ドル150円を切って円高傾向となったとしても、対外的な物価安状況が強いためインバウンド需要の旺盛さは変わらないでしょう。
中国については政治家の発言への過敏な反応により、いったん外交関係が回復し、訪日中国人の来訪が正常化しても暫くリスクは顕在化した状態が続くと見ています。本当に日本が好きな人、日本での不動産取引を行う人やビジネス目的の来訪は減少しないと見ています。私は中国インバウンドについてはリスクがあるとクライアント先にも、セミナーでも一貫して説明してきました。2012年の尖閣諸島問題では3000人キャンセルも発生した旅館もありました。リスクが伴う誘客であることを認識して激減時に対処する術まで準備しているのであれば問題ありませんが、未だにリスクを理解していないホテル旅館や観光業が大半のようです。訪日旅行消費でも、中国は1兆6443億円と全体の24%と存在を示す形となりましたが、政治が外交によるブレ幅がいつの時代でも業績に影響を及ぼす中国に大きく頼るインバウンド施策はこれを機に見直しをすべきでしょう。
インバウンド市場の増大の源泉は何か?旅の安心・安全・快適の三拍子に加えて、旅館や温泉、伝統文化など世界で唯一レベルのコンテンツが豊富なことが挙げられます。マーケティング面ではコロナ禍でも日本ブームを途切れさせなかった事がインバウンドの早期復活へ導いたと見ています。私は日本ブームの火を灯し続けてくれた外国人インフルエンサーに大いに感謝しています。彼らこそが本国に帰らずに日本に関する観光情報を発信し続けてくれたことにより、コロナ禍で潜在的な訪日のFIT層(個人旅行者)を急回復させることにつながったのです。私自身もクライアント先の旅館や温泉地に外国人インフルエンサーを招聘し、コロナ禍において仕込みの発信をお手伝いしました。彼らは着実にフォロワー数を獲得して、今弊社でのインフルエンサー活用事業の重要なビジネスパートナーとして活躍してもらっています。観光庁の調査でも訪日外国人が最も参考になった旅行情報源としてSNSが挙げられています。旅行雑誌や一般メディア、旅行会社ではなく、SNSを含めたネットで最新の日本観光の情報を収集する動きが完全に定着しました。私はこの流れは2026年も続くと見ていますし「ほんとうの日本の楽しみ方」を発信する重要な媒体であり続けることに変わりは無いと考えております。
2026年も、日いづる国にっぽんに訪れた外国人旅行者が楽しんでいる様子を全国で見かけるのを楽しみにしています。



