Q1. 2025年、あなたの専門領域で最も印象に残った出来事・変化・トピックは何ですか?
まず、具体的な事例として取り上げられるのは、ドラッグストア業態の食品スーパー取り込みです。例えばクスリのアオキは、2024年に引き続き、香川県でスーパー5店舗を運営するミワ商店を子会社化しました。
一方、イオングループはツルハホールディングスを経営統合するなど、スーパー側からドラッグストアを取り込む動きも起きました。また、フード&ドラッグの代表格であり、生鮮食品や日配なども取り扱うコスモス薬品やゲンキーが、出店エリアをさらに拡大しました。
この他、ドン・キホーテのさらなる成長拡大など、ディスカウントストアも食品領域をさらに強化している状況にあります。
また、スーパーマーケット業態内での動きとして、地域/都道府県をまたがる出店も加速しています。代表的な事例としては、ロピアが昨年にイトーヨーカ堂の閉鎖店の一部を引き継いだことを端緒として、東北・北海道への展開を加速しています。また、関東を地盤とするオーケーストアの関西進出、中部を地盤とするバローの関東進出など、地域をまたいだ有力企業による競争が激化しています。
加えて、ミニスーパー業態において、イオングループ1強の構図が崩れる可能性が出てきたものと感じています。これまでイオングループが、「まいばすけっと」「マルエツプチ」を展開してきたミニスーパー市場において、トライアルが「トライアルGO」を始動させ、対抗馬が増えたことが注目の出来事です。
Q2. その出来事・変化が起きた背景には、どのような要因があると思いますか?
小売市場を取り巻く市場環境として、少子高齢化、人口減少が進み、マーケットのパイ自体が縮小しつつあることが大きな変化点でしょう。これまではパイが拡大していたために、競合しながらも各社成長が実現できていたわけですが、今後はパイの取り合いが加速することになります。
加えて、物価高騰が進み、賃金上昇が十分に追いつかないなか、各消費者の実質所得は伸びていないのが実情です。また、高齢化社会において、年金に生計を依存する高齢者世帯においては、節約志向がさらに強まっているものと推察されます。そうした経済環境のなかで、「ハレ」の消費には出費を惜しまない一方、日常の食事など「ケ」の消費に対しては、消費者がより節約意識をもって消費行動を変容させる可能性が高いでしょう。
さらに、少子高齢化・人手不足が進む中で、スーパーをはじめ小売業で十分な労働力を確保できなくなっている現状もあるでしょう。スーパーマーケットは、その事業運営上、主婦パートや学生アルバイトなど、非正規社員を数多く確保できる前提で、彼ら・彼女らの労働力に多くを依存するビジネスモデルを続けてきました。現在、セルフレジや電子値札などのデジタル化を各社で進めていますが、より抜本的な手段が必要になるかもしれません。
Q3. このトピックは今後どのように進化・展開していくと考えますか?
2026年以降、業界・業態を超えた企業統合は更に進み、全国規模に拡大する企業と、他社の傘下入りする企業に二分されるものと想像します。また、イオングループのように、業態を横断した総合小売チェーンが増加するものと想像します。一方、そうした競争に出遅れた企業は、場合によっては淘汰される可能性もあるでしょう。
人口の都市集中が進む中で、数少ないフロンティアである都市型スーパーでは、トライアルGO以外の新規参入を含め、競争が激化するものと想像します。一方、地方、特に農村部では、「買い物難民対策」として、行政から小売事業者に対し、何らかの連携・協力を求められる事例が、これまで以上に増えてくるものと想像します。
デジタル化・省人化が進む中で、今までのスーパーのイメージを一新する店舗が登場する可能性があると想像します。私の拙い想像ではありますが、考えられる新しい店舗像の例としては、①生鮮食品・惣菜類の店内加工は一切行わない(プロセスセンターでの加工商品のみ)、②キャッシュレス決済のみ(現金は取り扱わない)。③会員制・アプリ登録が購入の前提(コストコのイメージ)、④行政・NPO等と連携したローカル型新事業モデルの開発(補助金活用やレベニューシェア等)。といった店舗は現実的な可能性としてあり得ると考えています。



