Q1. いま特に関心を持っているテーマ・活動は何ですか?
生成AIの進化と活用法、普及の状況には興味を持っています。ビジネス領域や日常生活におけるタスクを支援、代行する利用方法は注目されることが多いのですが、一方で日頃の話し相手や相談相手、パートナーとしてのAIに関心があります。ビジネス分野では「壁打ち相手」ということになりますが、もっと日常的に会話の相手となるパートナーとしての使われ方です。
現在多くの生成AIに利用されている大規模言語モデル(LLM)は、人間と自然な会話を目指した技術なので、人間と会話する相手というのは、その原点となるアプリケーションだと思っています。
以前からAIが人間の会話の相手、相談相手となるサービスを考えていたので、ChatGPTが登場して以降、生成AIと自然に会話する際の機能や品質には着目してきました。2025年は、人間との会話の品質が格段に向上したように感じます。
人は誰かと会話すること、その相手が身近にいることがメンタル面のサポートにとても重要だと言われています。しかし、会話する機会がない、適当な相手がいないという課題もあります。これを解決するサービスとして、AIとの会話には期待しています。
Q2. そのテーマ・活動を通して、どんな発見や気づきがありましたか?
2025年には、xAI社が「Grok」のサービスを開始しました。これは、まさに人のパートナーとなることを目的としたAIサービスです。また、年末にはChatGPTが「アダルトモード」を開放するというニュースもあります。
私自身は、生成AIの活用についてのセミナーや研修を実施したり、コミュニティで生成AIの活用事例を共有したりしていますが、その中でも日常の話し相手や相談相手にしているというケースも頻繁に聞かれるようになりました。潜在的なニーズが顕在化しているのだと感じます。
GPT-5が発表された際にも、AIの回答に親しみやすさや寄り添ってくれる感じが失われたというクレームが続出したことが話題になりました。AIからの回答の正確さや質の高さという機能的価値だけでなく、より人間的で自然な会話にも価値を求めている利用者が多いというのは意外な結果でした。AIとの自然な会話へのニーズが大きいことを実感しました。
実際に生成AIと会話すると、以前はこちらの質問に対する反復・繰り返しがなく回答だけを提供する感じでしたが、今は相槌や反復して回答してくれるのが当たり前になっている気がします。「会話」という意味での性能も向上していると感じます。
人間との自然な会話という部分は、なかなか表には出てこない面があって、注目されにくいのですが、そのニーズが顕在化してきたと思います。「Grok」や「アダルトモード」での恋人のようなパートナーまではいかなくても、身近で気軽な話し相手のAIには、潜在的におおきなニーズがあると思います。
Q3. 今後、その関心領域とご自身の専門性をどう掛け合わせていきたいですか?
人間との自然な会話を実現するためには、現在のテキストチャットをベースにしたサービスでは限界があると思います。技術的には、回答途中での割り込みの質問を許すなど、一部はAIのモデルにも工夫が必要になるかもしれません。このあたりは、AIベンダーの今後に期待したいです。
また、自然な会話相手のパートナーとなると、テキストベースでは不十分で、アバター動画や音声合成、リップシンクとの組み合わせが必要になってきます。このようにいくつかの機能を統合した総合的なアプリケーションとしてのサービスが求められます。「日常的な会話」は、マネタイズに工夫が必要と考えられるため、事業化に踏み切れない部分はありますが、大きな潜在ニーズを掘り起こして顕在化していくことに期待したいです。
AIとの会話でのアプリケーションの一つとして、カウンセリングやコーチングがあると思っています。特に日本では、これらに対する認知度がまだ低く、ネガティブなイメージがあります。しかし、ここをAIでカバーして、誰でもが気軽に利用できるようになると、全体的なニーズの底上げにもつながると思います。AIでは、プロフェッショナルなサービスではなくても、日常会話の延長のような、本格的なサービス利用の入り口を作れるのではないかと思います。
人間とAIとの自然な会話は、様々なサービス形態、ビジネスモデルが登場しそうですが、今後も注目して、普及することに期待したいです。



