Q1. いま特に関心を持っているテーマ・活動は何ですか?
いま私が関心を寄せているのは、「小さなコミュニティ」というテーマです。この数年、体験型推理ゲーム「マーダーミステリー」に没頭していること、今年からオンラインで小さな共同体を育てるコミュニティ運営を始めたこと、そして大学でのゼミ運営を通して得た気づきが、その背景にあります。一見まったく異なる領域に見えますが、どれも“人が人間らしく考え、感情を使い、他者と対話する行為そのもの”を中心にしているという強い共通点があります。
マーダーミステリーは6〜8名で行う推理ゲームで、参加者はキャラクターになりきり、目的を果たしながら物語の真相を探ります。3〜4時間の濃密な体験の中で、「役柄としての自分」と「プレイヤーとしての自分」を行き来し、相手の言葉の裏側を読み、信じ、疑い、協力し、時にはだまし合いながら物語を紡いでいく。その“人と一緒に考える営み”に強く魅了されてきました。
大学では、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(EMC)で白木ゼミを運営しています。20歳前後の学生たちとアートや哲学をテーマに読書会やディベート、歌舞伎・オーケストラ鑑賞、美術館訪問などを行い、感じたこと・考えたことを言葉にしていく時間を重ねています。小さな集団のなかで、知識と感性が豊かに育っていく瞬間を幾度も目にしてきました。
さらに、私が主宰するオンラインサロンでも、AIが急速に進化する時代だからこそ、小さな共同体の存在価値は高まっていると感じています。オンラインであっても、読書会や哲学対話、アートツアー、そして日々の投稿やコメントを通じて、お互いの温度や優しさが確かに伝わる。心理的安全性のある場では、普段SNSでは発信しない人が自然とコメントし、イベントを企画し深くも温かい対話が生まれていきます。
AI時代において、小さなコミュニティは「人間らしさ」を取り戻し、育てる装置だと強く感じています。
Q2. そのテーマ・活動を通して、どんな発見や気づきがありましたか?
マーダーミステリー、大学のゼミ、オンラインサロン。これら三つの場を通して、私は「人は小さな共同体の中でこそ深く思考し、創造性を発揮する」という確信を得ました。
マーダーミステリーでは、複数の視点を往復しながら物語と対話を進めることで、他者理解や共感力が自然と鍛えられます。人の立場に立ち、推理し、自分の“役割”と“素の自分”を行き来するプロセスは、ビジネスでも重要な多様性理解や文脈把握に通じています。
大学のゼミでは、アート作品や哲学の問いをきっかけに学生が自分の内側を言葉にしていきます。大人数の講義では生まれにくい、「誰かの言葉に触発され、自分の考えが深まる」という瞬間がしばしば起きます。これは小さなコミュニティならではの現象です。
オンラインサロンでも同じです。心理的安全性の高い小さな場だからこそ、普段発信しない人が自然に意見を言える。毎日の投稿やコメントの中に、思いやりや励ましが連鎖し、それがまた新しい行動を生む。AIが生成する言葉では代替できない、“人が人を動かす感情の作用”を日々感じています。
Q3. 今後、その関心領域とご自身の専門性をどう掛け合わせていきたいですか?
私が取り組んでいるサステナビリティ、教育、ブランディングの専門性は、すべて「小さなコミュニティ」というテーマと強く結びついていると感じています。というのも、小さなコミュニティが社会に多く存在すること自体が、サステナブルな世界をつくる重要な基盤になるからです。
まず、小さなコミュニティは互いの顔が見え、対話が生まれやすい構造を持っています。これは社会学でいう「ソーシャルキャピタル(信頼・協力関係)」を生み、人々が自発的に協力し合う文化を育てます。コミュニティにおけるサステナビリティの障害の一つとして“分断”があると考えていますが、小さなコミュニティはその逆で、信頼の再構築を促す装置です。
また、心理的安全性の高い場は「内発的動機づけ」を高め、積極的に社会をより良くする行動を自然と選択できる個人を育てます。地域性・文化・情緒など大きな組織が扱いきれない多様性を抱えられる点も、小さなコミュニティの強さであり、これはサステナビリティに不可欠な「分散」「多様性」「回復力」とも合致します。
この視点で見ると、マーダーミステリーをはじめとした卓上ゲームには教育的応用の可能性が非常に大きいと感じます。SDGsや環境・社会課題をテーマにした“学べるミステリーゲーム”、アンコンシャスバイアスをテーマにしたり、多様性理解やチームビルディングを促す企業研修、地域の文化や歴史を物語化した観光コンテンツなど、小さなコミュニティの中で体験しながら学ぶ仕組みがつくれるはずです。
一方で、オンラインサロンのようなコミュニティは、AI時代において“人の内発的動機づけ”を生む重要な場になります。私自身これまで多くの企業のブランドづくりを支援してきましたが、今後は「人と人の関係性そのものをデザインするブランド」という領域が確実に重要になっていくと思っています。AIが進むほど、人間の価値は“関係性”“感情”“対話”といった小さな場で育まれる要素へと移行していくからです。
今後は、「小さなコミュニティ × 体験デザイン × サステナビリティ」という3つの軸を掛け合わせ、AI時代における“人間らしさ”を引き出す場の創造に挑戦したいと考えています。その未来像として、コミュニティの企画、体験型学習コンテンツの開発、企業や自治体へのプログラム提供など、社会に小さなコミュニティを無数に実装していくことをイメージしています。



