「利益体質への変革」2025年建設業が直面する「淘汰フェーズ」と経営品質の総点検 - N・S / #エキスパートアドベントカレンダー2025

公開日: 2025-12-12

「エキスパートアドベントカレンダー2025」とは、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。

今回は、株式会社アプリバンクのN・S氏による記事をお届けします。

テーマは「ご自身の専門領域で2025年に起きた“最重要トピック”と、その背景・今後の見立て」です。
2025年にその専門領域で起きた象徴的な変化を取り上げ、背景にある構造的な動きを紐解きます。今後の展望を読むことで、来年の市場の見方が一歩深まる内容です。

EXPERT

N・S

株式会社アプリバンク 代表

建設業のための経営コンサルタント、株式会社アプリバンク代表
スーパーゼネコンで20年、海外子会社再生やM&A統合で培った私の「統合最適化」手法は、ROI死守に徹底的にこだわります。机上の空論を排し、データで「プロフィット・コア」を特定し、確実に利益を出す戦略的な値決めと利益体質への変革を現場で伴走支援します。
生き残りをかけた変革は待ったなしです。ぜひ、弊社の実践的なコンサルティングにご相談ください。
株式会社アプリバンク https://www.applibank.com/
認定ファシリティマネジャー、日本内部監査協会 会員、東京商工会議所 会員

Q1. 2025年、あなたの専門領域で最も印象に残った出来事・変化・トピックは何ですか?

2025年、建設業界において最も印象的だったトピックは、長年の構造的課題であった人手不足、コスト高騰、そして法規制(2024年問題)という「構造的危機の同時収束」が臨界点に達し、業界が「否応なしの淘汰フェーズ」へと移行したことです。

私自身、リーマンショック以降、海外子会社の再建を通じて常にインフレと戦い、利益率向上にこだわり続けてきた経験から断言できますが、生産性改革はもはや「競争優位性」ではなく、「強制的な生存条件」へと変質しました。

特に、2024年4月に適用された時間外労働の上限規制(2024年問題)が実質的な「時間生産性の法定制限」として本格化し、長時間労働と「どんぶり勘定」に依存した従来の経営モデルが、法的に、そして財務的に立ち行かなくなった点が核心です。

生産性の低さは、直接的に「利益の確保能力の限界」として露呈し、案件はあっても「利益なき繁忙」に陥る企業が続出。その結果、各企業の「経営品質」が明確に可視化される年となりました。

Q2. その出来事・変化が起きた背景には、どのような要因があると思いますか?

この危機的な変化が起きた背景には、弊社の専門とする「統合最適化」の視点から見て、以下の三つの要因が複合的に作用しています。

第一に、労働時間規制による「時間生産性の壁」の発生です。これは単なる労働時間の制約ではなく、最高責任者である社長に対し、「法定時間内で確実に利益を出すためのROI(投資対効果)を確保せよ」という、経営の本質的な問いへの回答を強制したことを意味します。従来の「時間を投入して乗り切る」という非戦略的な対応は完全に崩壊しました。

第二に、「原価管理の戦略的破綻」と「価格転嫁力の喪失」です。建設コストは2021年1月比で全建設コストが約30%も上昇しており、収益構造は著しく圧迫されています。このコスト増に対して、建設事業の実態と乖離した「伝統的な原価計算」に基づいた「どんぶり勘定」の経営が致命的なダメージを与えました。海外再建で培った経験から言えるのは、正確な原価を把握し、このコスト増を適切に価格転嫁し、利益を確保する「戦略的な値決め」ができない企業は、需要があっても利益を生まない「利益なき倒産」に向かうということです。

第三に、「人材市場からの信用の喪失」です。高齢化と若手人材の低い定着率という状況下で、労働環境改善(週休二日制など)を怠る企業は、未来の労働力を確保するための「最低限の必須インフラ投資」ができない企業と市場から見なされました。結果、需要があるにもかかわらず、時間・コスト・人員の制約で案件を処理できずに破綻する「供給能力の構造的限界型倒産」という、戦略的な失敗による異例の倒産が表面化しました。

Q3. このトピックは今後どのように進化・展開していくと考えますか?

この生産性改革の強制は不可逆的であり、今後、建設業界は「戦略的なポジショニングによる二極化」の道をたどって進化・展開していくと考えられます。

■ 強者の戦略:大手企業の「オートメーション化」

大手企業は、大規模な資本力と「規模の利益」を背景に、国土交通省のi-Construction 2.0に沿った「サプライチェーン全体のオートメーション化」へと舵を切ります。これは、2040年度までに省人化3割(生産性1.5倍)を目指すという目標達成のため、BIM/CIM、遠隔・自動化技術を先行導入し、「資本による時間生産性の確保」を図る強者の戦略です。

■ 弱者の戦略:中小企業の「集中と特化」

一方、資本力に劣る中小企業は、生き残りのために「ランチェスター戦略」に基づき、経営資源を一点に集中させる「集中戦略」を採る必要があります。

  1. 「ローコスト・クイックウィン型DX」による時間生産性の最大化:高価で全社的なシステム導入ではなく、SaaS型ツールを活用したローコスト・クイックウィン型DXを推進します。特に、事務作業などの非生産的な間接業務を徹底的にデジタル化し、現場の時間を創出することがROI確保の生命線です。

  2. 「戦略的原価管理」と「適切な価格決定力」の確立:プロジェクトごとの利益をリアルタイムで把握できる「ダッシュボード」を導入し、コスト高騰分を適切に価格転嫁できる経営体制を構築します。これにより、価格競争から脱却し、「高収益なニッチ市場でのNo.1」を目指します。

生産性向上やDX、GX(グリーン建築)への取り組みは、もはや「成長戦略」ではなく「事業継続のための必須インフラ投資」です。

2026年以降は、自社の経営資源を戦略的に投入し、「時間あたりの収益性」を向上させた企業のみが淘汰フェーズを生き残り、次の成長ステージへ進むことができると予測します。

「エキスパートアドベントカレンダー2025」とは

「エキスパートアドベントカレンダー2025」は、NewsPicks Expertに登録するエキスパートが、各業界・専門領域における学びや、エキスパート活動を通しての気づきを共有する期間限定企画です。2025年12月1日〜12月25日の25日間、エキスパートの学びや気づきをお届けします。

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https://newspicks.expert/advent-calendar/2025

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