Q1. いま特に関心を持っているテーマ・活動は何ですか?
いま私が最も関⼼を寄せているテーマ:循環(サーキュラー)×AI×現場⼒の再価値化
2025年の⼀年を通じて強く感じたのは、『サーキュラーエコノミー』『AIによる⾃動化・最適化』『⽇本の現場が持つクラフトマンシップ的な強さ』・・・この3つが、ゆっくりと、しかし確実に結びつき始めていることです。私は化学・素材・製造業を中⼼にコンサルティング活動を⾏っていますが、各プロジェクトが⽰す『共通した⽅向性』がありました。
それは、
①素材や⼯程を『循環』前提で設計することが、コストと品質の両⽅を⾼める時代に⼊ったこと。
②AIが『現場固有のクセ』まで学習し、⽣産性と品質保証の境界を再定義し始めていること。
③そして、そのAIの価値を最⼤限引き出すのは、驚くほど⼈間味のある『⽇本の現場⼒』であること です。
特に、再資源化やサプライチェーン透明性の要求が進む中で、海の向こうで起きている⼤規模プロジェクト(インドネシアのPETボトル再資源化、PFAS代替材料、海洋モニタリング、CO₂からCOをつくるケミカルリサイクルなど)を⾒ても、今後は標準になっていくと思います。
『環境・安全・品質・効率』の四つの要求が同時に求められる、デジタルと現場⼒を統合して応える⼒。
これこそが、今の⽇本製造業に求められている『らしさの再定義』だと感じています。
Q2. そのテーマ・活動を通して、どんな発見や気づきがありましたか?
このテーマを深める中で⾒えてきた『3つのシナジー』
①循環設計×AI 最適化:素材とプロセスの『再構築』がはじまった
素材メーカー・化学メーカーの現場では、再⽣材⽐率の引き上げやPFAS規制への対応など、従来の発想では解けない課題に直⾯しつつあります。その中でAIは『品質許容範囲の⾃動学習』『異物の⾃動検知』『歩留まりのリアルタイム制御』など、かつて『熟練⼯の勘』でしか処理できなかった領域まで踏み込んできています。
再⽣材を扱うほど悩ましい『バラつき』『汚染』『プロセス変動』を、AIが『個体ごとに最適化』 する世界が現実味を増し、循環素材をメインストリームに押し上げる基盤になりつつあります。
ここに、循環とAIの明確なシナジーがあります。
②現場の知⾒×デジタルツイン:⽇本の強みが技術で⾔語化されはじめた
⽇本の現場⼒は、⻑年『暗黙知』として語られ、属⼈性の源でもありました。しかし、最近のプロジェクト(スマート⼯場、光ファイバーによる多点温度計測、物流DX、スマートゴミ箱、海洋環境のデジタルツインなど)で明確に⾒えてきたことがあります。
暗黙知は、AI とセンサーによって『再利⽤可能な資産』に変わる。
例えば固定床触媒リアクターの温度ムラや、⼯場の歩留まりの原因、倉庫での⼈とAGVの動線、 海域の環境変動・・・これらをデジタルで『⾒える化』すると、現場が本来持っていた強さが、そのまま『再現性ある技術⼒』になってきています。
⽇本の現場は、デジタル化によって弱くなるのではなく、『ようやく強みを世界に輸出できる段階に⼊った』と感じています。
③サステナビリティ×技術者魂:社会課題と技術課題が⼀本線になった
私のプロジェクトの多くは、社会課題(廃プラ、海洋、CO₂、PFAS、安全DXなど)と技術課題 (プロセス最適化、材料開発、データ基盤整備)が重なる位置にあります。
ここで特に強く感じるのが、
『社会課題に取り組むことが、技術者としての挑戦を最も⾯⽩くする』
という⽇本ならではの感覚です。
海洋モニタリングやブルーカーボンでも、再⽣材でも、PFAS吸着材料でも、技術者の挑戦は社会価値と直結します。
この構造⾃体が⽇本企業の⽂化に⾮常に合っており、新しい産業横断型のシナジーが⽣まれています。
Q3. 今後、その関心領域とご自身の専門性をどう掛け合わせていきたいですか?
2026年に向けて:⽇本製造業の『再定義』はここから始まる
2026年は、循環×AI×現場⼒が本格的に融合し、以下のような具体的な景⾊が広がっていくと⾒ています。
AIが『現場のクセ』を理解し、最適条件を先回りで提案する製造ライン
再⽣(リサイクル)素材でもバージン材と同等品質を実現するプロセス⾃律化
環境データ・原料トレーサビリティが経営の意思決定に直結
海洋・都市・⼯場・物流がデジタルツインでつながり、循環データが新たな価値になる
⽇本の現場技術がアジアやグローバルの循環経済を⽀える『輸出品』になる
私は、素材・化学・製造・環境・DXの境界線が消えていくこの流れを、⽇本らしい強みとして伸ばせる年にしたいと考えています。
循環、AI、現場⼒・・・この3つの融合は、単なる効率化でもエコでもありません。
『⽇本のものづくりが世界に再評価されるための、新しい設計思想そのもの』です。
2026年、この潮流がさらに⼤きなうねりになるよう、私は現場と経営の橋渡し役として、引き続き全⼒で取り組んでいきたいと思います。



