Q1. 2025年に挑戦したこと・変化があったことは何ですか?
2025年を振り返ると、この一年は「外側の挑戦」というよりも、「内側の土台をつくり直す挑戦」が最も大きかったように思います。独立から数年が経ち、企業の支援を続ける中で、自分が何を価値として提供しているのか、その源泉がどこにあるのかを深く見つめ直す必要性を強く感じていました。それは、自分の経験や知識を単発のアドバイスとして伝えるのではなく、「誰が実施しても成果につながる状態」をつくるために、元々作りたいと考えていた自分の中に存在する判断基準や思考の癖、行動のパターンを、一度すべて棚卸しし、体系として組み直すというものでした。
そのために今年もっとも力を注いだのは、「自分の流儀」を言語化し、構造としてまとめ直すことでした。戦略の組み立て方、売場や顧客の捉え方、データの読み解き方、人の動かし方、関係構築の手順。これらはこれまでの実践経験の中で無意識に使っていたものですが、それを「誰でも使える再現モデル」として型にすることは、思っていた以上に大きな挑戦でした。
特に、物事を理解するまでの思考プロセスと、実行に落とし込むまでの行動プロセスを整理し、「成果を再現するための流れ」として一本化できたことは、自分にとって大きな転機になりました。私は以前から、「結果には必ず理由がある」と考えてきましたが、今年はその「理由の構造」をより精密にまず自分自身が理解できるようになった一年でもあります。たとえば、観察→解釈→構造化→仮説→設計→検証といった「理解と改善の流れ」は、これまで直感的に行ってきたものを改めて体系化したものであり、自分の思考が「なぜ成果につながっていたのか」の裏付けを取る取組でもありました。
同時に、行動につながる仕組みも整理し直しました。目的の整理、逆算での構造設計、重要な要因の特定、戦略の組み立て、提案・実行、改善の循環といった流れを可視化することで、自分が自然にやってきたプロセスを「他者にも伝わる型」にすることが出来ました。これにより、企業の支援でも、「どこから手をつけるべきか」「なぜそれが必要なのか」「どう改善につながるのか」が、これまで以上に伝えられるようになったと感じています。
また今年は、データを「行動につなげる」ための分析のやり方を整理したことも大きな挑戦でした。世の中には多くの分析ツールがあるものの、「数字を見ても動けない」状態は依然として多くの現場で起きています。そこで私は、データの見方ではなく、「背景にある要因の特定」と「改善につながる行動の設計」を重視した分析手法をつくり、それを企業の現場に提供し始めました。これは、単に数字を見るのではなく、「数字を通して現場のストーリーを読み解く力」を育てるための取り組みであり、現場からは「動くための気づきが得られるようになった」という声をいただくことも増えていきました。
さらに、人や組織、現場の変化をどのように生み出すかという「変化の構造学」をまとめた始めたことも、今年の大きな成果です。現場が変わるには、仕組み・行動・感情・意味のいずれが欠けても動かない。これは私自身が店長時代、バイヤー時代、企業支援の中でずっと感じてきたことですが、それを体系として整理することで、「変化が起きる条件」と「変化が止まる理由」がより明確になりました。これにより、企業支援で組織の動きを読み解く精度が一段階上がった感覚があります。
そして、これらの考え方を個人の活動だけでなく「業界全体を変えていくための構想」へと発展させました。今後、経験豊富な人材がキャリアの後半で活かされにくい現状や、現場・本部・メーカー間の知の分断を解消し、誰もが自分の強みを発揮できる働き方をつくるためのビジョンが自分の中で鮮明になりました。「知が継承され、活かされ、循環する業界」を実現したい。その願いが、自分の未来の方向性を決定づけたと感じています。
2025年は、自分の中の見えない骨格を丁寧に磨き直すような一年で、これから先の基盤になるものが整い始めてきた、そんな感覚があります。この土台を持って、2026年はより外に向けて挑戦していきたいと考えています。
Q2. その経験を通じて得た学びや、印象に残った気づきはありますか?
2025年の一年を通じて、私が最も深く実感したのは、「人も組織も、意味と熱意の両方が揃って初めて動く」ということでした。どちらか一方では、不十分なのです。意味が分かっても、熱がなければ行動は加速しない。逆に、熱があっても、意味が欠けていれば空回りしてしまう。私の仕事の根底には常に「人はなぜ動くのか」という問いがありましたが、その答えが少しだけ見えてきたような気がしています。
まず、「意味」の重要性について。私は今年、多くの現場や企業の方と向き合う中で、数字や事象の裏側にある原因や、構造を読み解き、それを分かりやすく伝える機会が増えました。実際、停滞していた売上や組織の動きが、原因が特定され、関係性が整理された時に、一気に改善の方向に進み始める場面は少なくありませんでした。要因の繋がりが「腑に落ちる」というのは、理解だけではなく行動に向かう力を生む瞬間です。
しかし今年、そのタイミングにもう一つ条件があることに気づきました。それが「熱意」です。意味がつながるだけでは、行動は変わらない。誰かが「やる」と決める熱が必要なのです。この熱意は場面によって「本気度」や「覚悟」という言葉に変わりますが、根本は同じです。自分がその未来に責任を持つという姿勢。その「温度」のようなものが、人を動かし、組織を動かし、結果を変えます。
今年、企業支援をしてきた中で、私は何度も目の前でその瞬間を見ました。同じ課題でも、熱のあるチームは改善スピードが速い。逆に、どれだけ精密な戦略を用意しても、関わる人の温度が低ければ動きは鈍くなる。人が動くとは、本質的には「感情が動く」と思います。分析やロジックを軽視しない一方で、ロジックだけでは越えられない壁があることを改めて思い出してもいました。今年は、その「人の温度」が結果を大きく左右するという本質に、改めて深く向き合う一年でした。
そして、今年は自分自身の思考の流れを整理し、「成果には順番がある」という気づきもありました。事実の観察、意味の解釈、構造の把握、要点の特定、施策の設計、実行、改善。これらは以前から無意識に行っていたプロセスですが、今年あらためて可視化したことで、自分がなぜ成果を出せていたのか、その「再現性」がより明確になりました。これは企業支援でも大きな武器となり、「何から始めればいいか分からない」という状況に対して、順序立てて道筋を示せるようになりました。
さらに、今年印象に残った学びは、「現場 × 戦略 × データ」の三つが掛け合わさることで、変化が速くなり実現に近づくということを改めて確認できたことです。私は店長・バイヤー・現在のアドバイザリーによるメーカー支援と複数の立場を経験してきたことから、三つの視点を常に統合して捉えることが癖になっているようです。
しかし今年、その癖が企業支援において明確な価値として認識される場面が増えました。この視点は、本来は別々のものではなく、成果のためにはひとつに結びついているべきものなのです。この「分断の解消」は、2025年の大きなテーマのひとつで、今後はより詳細に作り込みもしていきたいと考えています。
また、人が動くための条件についても、多くの気づきがありました。能力の問題ではなく、「意味」が見えていない、「成功パターン」が描けていないという理由で止まっていることが実は多いということ。つまり、動けないのではなく、動く材料が揃っていないだけなのです。そこに意味を与え、熱を注ぎ、成功のイメージを共有すると、人は驚くほど変わります。今年はその瞬間を何度も見て、「人は本来、動ける存在なのだ」とあらためて実感しました。
意味が道筋をつくり、熱意がその道を踏み出させる。その両方が揃って初めて、行動も成果も変わるのです。これは単なるノウハウや技術の話ではなく、仕事の本質に近い部分だと感じています。
そして、思想や価値観は固定されるのではなく、経験を通じて変化し、深まっていくものであるということも強く感じました。今年、自分の内側を整理する中で、「自分が何を大切にしているのか」が以前よりもはっきりし、同時にその価値観がこれからも変化していくことにも気づきました。
Q3. 2026年に向けて、どのような構想や挑戦を思い描いていますか?
2026年に向けて、私が描いている構想は大きく四つありますが、その根底にあるのは「知が継承され、活かされ、循環する業界をつくりたい」という願いです。2025年に自分の内側を整えながら企業支援を行う中で、業界が抱える構造的な課題を、これまで以上に鮮明に感じるようになりました。
2026年は「経験や知識が個人に閉じず、業界全体の資産として循環する仕組み」をつくることに着手する年にしたいと考えています。流通業界では、現場の知、本部の知、メーカーの知など各専門領域の知が分断し、属人的なまま消えてしまうことがあまりにも多い。経験豊富な人材がキャリアの後半で活かされにくいことも大きな課題だと考えています。これらを統合し、「誰が見ても理解でき、誰でも再現できる状態」をつくることが、未来の業界にとって不可欠だと考えています。
そのために、「仕事の流儀」「成果をつくる再現モデル」「変化が起きる条件」を、企業が導入できる形にまとめ、業界全体に広げていく役割に挑戦することを描いています。従来のコンサルティングではなく、「知のインフラ」をつくるようなイメージで、現場の改善、データの解釈、人材育成、組織改革、関係構築、などなど、どのテーマにも使える「共通の考え方」を届けることで、改善のスピードを業界全体で底上げできると考えています。
また「思考の土台を共有する仲間づくり」も少し頭に入れ始めました。知人に「一緒に何かできないか」と声をかけていただいたことをきっかけに、ずっと眠らせていた起業時の想いを思い出しました。業界には、豊富な経験を持ちながら、家庭や体調、働き方の制約から活躍の場を限定されている人が少なくありません。そうした人たちが、無理なく価値を発揮できる仕組みを作りたいと考えています。
ただ、重要視するのは「共通の思考の土台」です。お互いの経験は違っても、仕事に向き合う姿勢や、成果につながる考え方、改善のプロセスを共有できれば、それぞれが強みを発揮しながら協働できます。そうした「思考の共通言語」をもつ仲間を増やし、企業と実務を支える新しい形のプロフェッショナル集団をつくることに改めてチャレンジしてみようと思い描いています。
同時に「実戦で使える思考&型」の作り込みに注力することも考えています。2025年に体系を整理したことで、戦略づくり、要因分析、データの読み解き、関係構築、現場改善、人材育成など、多くの領域で「再現性のある型」が出来始めてきましたので、これらを企業の実務にそのまま導入できる形にし、成果につながるまで伴走できるよう磨きあげることが、来年の重要テーマになります。
たとえば、
数値を見て終わらせず行動につなげる分析の型
メーカーと小売が「共通理解」のもとで協働するための設計書
現場の改善が継続する条件を整理した変化の流れ
成果を再現するための思考と行動の順番
こうした型を揃えることで、企業は自走できる力を高め、自分たちで成果を積み重ねられるように支援できる準備を進めていきたいと思います。
もう一つひっそりとではありますが、「AIと人の共創モデル」も考えています。今年、自分の思考がAIとの対話を通じて整理され、深まり、新しい構造を生むということを重ねてきました。この経験を通じて、自身の思考の延長として機能させることを型に出来たらなと思うようになりました。特にデータの解釈、戦略の構築、人材育成、組織の改善などの分野では、AIが自身の思考の補助をし、判断をより深く、高速にする役割を果たすようになると思っています。
AIと人が協働して仕事を進めるためのプロセスを体系化し、それを企業が使える形にする挑戦も実はしたいと思っている事の一つでもあります。「AIに置き換えられる仕事」ではなく、「AIとともに進化する仕事」をつくる。そのモデルを型にできれば、少しは人のお役に立てるかなとも思っています。
自分にプレッシャーをかける意味合いも込めて、
知が継承される仕組み作りに着手する
思考の土台を共有する仲間を増やす
実戦で使える型を整える
AIと人の協働モデルの型作りに着手する
この四つを軸に、より多くの企業や人のお役に立てるように努めていきたいと考えています。



