Q1. 2025年に挑戦したこと・変化があったことは何ですか?
2025年は、これまでのキャリアで最も「自分の軸」と深く向き合った一年でした。社会戦略家として地域企業を支援する中で、仕事の価値、生家のルーツ、親としての視点が一本につながり、これまで点だったものが線へと変わっていく感覚がありました。
この年、僕の仕事は大きく広がりました。従来のサステナビリティ経営やESG支援に加え、「100年企業づくり」「地域の価値の再編集」「文化・食・親子との接続」といった文脈につながり始めたからです。地域企業の理念再構築、長期戦略、未来シナリオづくり、広報や働き方の支援、新規事業の伴走。社会課題を起点に考える経営者と、本気で10年先・30年先を描く機会が格段に増えました。
「長期の未来を示すことこそ、経営者の仕事である」。この信念が、自分の支援スタイルをより深く強くしてくれました。同時に、2025年は「言葉としての軸」を明確にした年でもあります。
パーパス:すべての仕事に誇りを取り戻す
ビジョン:すべての大人が仕事に誇りを持ち、子どもが社会に憧れられる未来をつくる
この言葉が、僕の活動すべてを方向づけるコンパスになりました。地域には、本当は価値があるのに、正しく語られていない仕事が無数に存在します。その現実への違和感こそが、僕を突き動かす原動力になっています。
さらに大きな変化だったのは、生家に残る廃業した美濃焼工房と向き合ったことです。祖父母や両親が営んだ工房には、土の匂い、職人の技、文化の残り香が息づいていました。一児の父親になった今、「過去は捨てるものではなく、未来へつなぐ素材なのだ」と心から感じています。
また、親として子どもと過ごす中で、「子どもは憧れを通じて未来を選ぶ」という当たり前の事実に気づきました。地域の仕事は子どもにとって遠い存在で、出会う機会がほとんどありません。だからこそ、地域企業の価値を親子に届ける「仕掛け」が必要だと確信するようになりました。
Q2. その経験を通じて得た学びや、印象に残った気づきはありますか?
2025年を通じて最も深く感じたのは、「地域の価値は、正しく語られたときに“憧れ”へ変わる」ということでした。
これは単なる気づきではなく、社会戦略家としての自分の人生の核心に近い学びでした。地域を巡り、企業と向き合い、人と対話を重ねる中で、次の3つの気づきが自分の中に強く刻まれました。
① 本当の価値は、表に見えていない
地域を訪ね、数十年続く事業を見ていくと、どの現場にも「目に見えない価値」が満ちていることに気づきます。
技術、努力といった表面的なものだけではない。
そこには、
・仕事に向き合う人の思い
・積み重ねられた時間
・地域に根付いた文化
・支える人々の誠実さ
が静かに宿っています。
これらは、語られなければ光が当たりません。
語られなければ評価されず、語られなければ存在すら、社会的に不可視になってしまう。この構造そのものが課題であり、変えるべき対象であると強く実感しています。
② 子どもは大人の背中を見て未来を決める
子どもは、純粋な憧れを通じて未来を選びます。
しかし今の日本では、地域の仕事がその「憧れの選択肢」にほとんど入っていません。理由は単純で、見えていないからです。見えなければ、憧れようがない。憧れられなければ、未来の担い手が育たない。
仕事の価値を語ることは、大人のためだけではなく、子どもたちの未来の選択肢を守ることでもあります。
③過去は「捨てる」のではなく、「編集して未来につなぐ」もの
生家の美濃焼工房と向き合った経験も、大きな学びになりました。廃業した工房には、土の匂い、技、人の営み、文化の断片が今も残っています。
その場所を思う度、過去とは足枷ではなく、未来へ渡すための素材なのだ、と感じるようになりました。
過去を編集し、価値として再定義すれば、未来に誇りを持って渡すことができる。これは企業にもまったく同じことが言えます。
地域企業の歴史を「未来に渡す資産」へと編集し直すことこそ、僕がこれから取り組むべき役割だと確信しました。
Q3. 2026年に向けて、どのような構想や挑戦を思い描いていますか?
2025年の経験が重なり、僕は生家の工房を起点に「100年先につなぐ陶芸スプーン」という象徴的なプロジェクトを構想するに至りました。
これは単なるものづくりではなく、文化継承、地域産業、食育、親子の時間、福祉を横断する、まさに僕にとっての「社会戦略プロジェクト」となります。
この構想には、3つのキーワードがあります。
「地域の価値を、子どもの憧れに」
「100年先へつなぐ文化」
「地域から社会を変える共同体」
陶芸スプーンが象徴的なのは、ただの道具ではなく、文化の器であり、親子の対話を生むツールであり、地域産業の未来の鍵となり得るからです。陶器という温かい素材は、食卓にやさしい時間を生み、子どもに「ものを大切に扱う感覚」を育て、同時に工芸文化を未来へ運ぶ役割を果たします。
僕が描く「100年先につなぐ陶芸スプーン」構想は、まだ形になっていませんが、次のような方向性を考えています。
・スプーンの試作と親子向けの体験プログラム
・子ども向け・介護向けモデルの検討
・地域の工房を結ぶネットワークづくり
・インダストリアルデザインの全国公募
・工房を巡る“親子体験民泊”の企画
・地域文化 × 福祉 × 観光を統合した連携モデル
こうした企画は、すべて「地域の価値を未来にどう手渡すか」という一点に集約されます。
また、2026年は、これまで行ってきた経営支援を「地域文化 × 長期戦略 × 社会価値 × 100年企業モデル」として体系化し、より多くの企業へ届けていく年にもしたいと考えています。特に、次世代を担う地域企業の経営者との共創を深めていきます。
2050年、僕の娘は27歳になります。その未来で、「地域の仕事」が子どもの憧れの職業として語られている社会を、本気で実現したい。
今はまだ光が当たっていない仕事や文化が、子どもから「それ、かっこいいね」「やってみたい」と言われる未来。それが僕の描く世界です。
2025年は、自分の原点を深く見つめた一年でした。
2026年は、そこから一歩踏み出す年にします。
地域の価値を、子どもの憧れに。
すべての仕事に誇りを取り戻す。
この想いに共感してくださる方がいれば、ぜひ力を貸してください。
未来は、ひとりではつくれない。でも、仲間がいれば必ずつくれる。
そんな確信をもって、2026年へ向かいます。



