Q1. 2025年、あなたの専門領域で最も印象に残った出来事・変化・トピックは何ですか?
2025年といえば、万博。私にとって、関西・大阪万国博覧会(万博)は大きな影響を与えました。
1970年の大阪万博でGOGOダンスを踊ってテレビデビューをし、世界のおもてなしや未来を体験した私にとって感慨深い出来事でした。万博の計画を聞いた当初は、55年という歳月が何をもたらしたのかを実感する絶好の機会だと思っていました。しかしながら、仕事の内外でイノベーションのサポートや海外とのやりとりをする機会に恵まれ、万博というのはビジョンとテクノロジーのショーケースになるのだろうなと肌で感じました。未来旅行と世界旅行が一緒になってやってくるような感じでもありました。
4月の開幕から10月の閉幕までの間に地の利を生かして20回以上も会場に足を運び、たくさんの体験と交流をしました。特に私のフィールドの一つであるヘルスケアについて掘り下げた観察をしました。
ヘルスケアは、健康になること、病気を治すこと、と捉えることが多いものですが、実際には、プラネタリーヘルスもあれば、未来の暮らしのビジョンも含みます。
万博会場の「未来の都市ゾーン」においては、未来の暮らしとヘルスケアについて示し、また、いくつかのヘルスケア系パビリオンではテクノロジーそのものも見せていました。気づいたことは、人間らしい暮らしの中にヘルスケアが取り込まれる未来です。
海外のパビリオンでは、ヘルスケアのためにどのような取り組みをしているのかを展示しているところが多くありました。なんといってもこの万博のテーマは、「いのち輝く未来社会」です。テクノロジーとエコシステムを示しているところもあれば、遊びの価値を見せる、健康教育によってより良い未来を描くところもありました。
世界のどんな人も健康に関心を持っていますが、行動を続けることは大変です。環境にも気を配らなければなりません。各国の取り組みには、未来への想いにあふれていました。
Q2. その出来事・変化が起きた背景には、どのような要因があると思いますか?
万国博覧会自体は、本当に歴史が長いものです。学芸員の立場で見ると博物館の成り立ちと関係が深いものですが、見せ物的な行事から今では産業振興の面も備え、テーマを設定し、コンセプトも明確にされています。この巨大な行事に開催国だけでなく世界の多数の国が参集し、テーマに沿って活動をすることはとても大きな意味を持ちます。
今回、特に感じたのは、日本という国だからこそ叶えられた平和な交流の実現です。多様な文化も受け入れて展開されました。「いのち輝く未来社会」をテーマとし、未来社会の実験場というコンセプトですから面白くないはずがありません。
特にヘルスケアにまつわるあれこれが提示され、体験できたことはとても大きな意味を持っています。その切り口の多様性は、社会の多様性を見たように思いました。デジタルテクノロジーを用いた運営については、今一つうまくいっていないところもありましたが、シビックパワーを味方に、盛り上がったところは印象に残りました。最近の社会を感じる機会でした。
Q3. このトピックは今後どのように進化・展開していくと考えますか?
この巨大イベントは盛り上がって終わりでしょうか。そこに目を向けたいと思っています。
批判は多くありましたが、いくつかの点で、来場者の行動変容をもたらすことができた可能性があります。来場者IDを作成し、紐付けによって行動を可視化し、その人に合った示唆を人工知能が提供することはその一つでした。このことは、自分の健康状態を把握して、健康行動に向かう仕掛けに近いと思いませんか。ナッジが心地よさをもたらす体験をしました。
また、トイレのデザインや数も面白かったのですが、多くの人が積極的に手を洗う姿が非常に印象に残りました。感染症拡大リスクを説くよりも、心地よく楽しい手洗い施設があることが良い行動に向かわせていました。50年前にはなかった技術の登場はもちろん、当たり前の行動を促すこともとても大切だと思わせました。
その上で、世界の多様性を知り、文化と健康を知る機会がもたらされ、安心しながら交流ができることの体験は、今後の社会においてヘルスケアの意義の共有ができたように思います。
終幕と同時にアプリが消え、体験したレコードも消え、がっかりしました。ヘルスケアレコードはこんなことがあってはいけません。悪いお手本を見せてしまったようにも思います。
それでも、この体験によってヘルスケアレコードの価値、健康行動がもたらす安心が今後の私たちの暮らしに大きく影響すると思っています。それをじっくりと観察することに取り組みたいと思います。
未来都市を描いていた国との交流、翻訳アプリの活躍など、グローバルな健康にもプラスになると信じ、5年後のサウジアラビア王国リヤド万博の頃に何が描き出されるか楽しみにしています。
さあ、みなさま、次の時代へ歩いていきましょう。



